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「カンパーイ」
みんなの声が待機室に響く。
塔莎帝を倒してから1週間。ようやく一段落してみんなで集まることが出来た。
もちろん、舞木もいる。
来る気はなかったみたいだけど、無理矢理連れてきた。そっちの方が絶対にいい。
机の上にはご馳走が並んでいる。
今日は喫茶店パールの定休日。真珠を明け暮れの待機室に呼んで、料理を作ってもらったのだ。
20代組は美味しそうにお酒を飲んでいて、10代組の私達も何だか高そうな瓶に入った炭酸飲料や果物のジュースなどを飲んでいた。
「やっと終わりましたね」
小禄が大きく息を吐いた。
この一連の件で一番働いていたのは間違いなく小禄だろう。
討伐後も事後処理などの仕事を多くこなしていた。
「お疲れ様。頑張ったね」
真珠が小禄の前にグラタンを置く。
「ありがとうございます」
「最近、来なくて心配してたよ。また、時間がある時に顔を見せてね」
「はい」
笑顔で答える。
「わしはよく見せておったがな」と、葉月。
小禄にギロッと睨まれる。
「なるほど。家にいない時があるかと思っていましたが、そういうことでしたか」
「いや、それは・・・」
「今はいいです。楽しむ時間ですから、帰ってからにします」
そう言ってグラタンを美味しそうに食べ始めた。
「・・・はい」
ショボンとする葉月に海帆がお酒を注いでいる。
「今は楽しみましょう」
「すまんな」
「いえいえ」
そんな2人の間に南君が入り込んで肩を組む。
「なーにを落ち込んでいるんですか」
ビックリするくらいのハイテンション。相当、酔っている。始まる前から飲んでいてすっかり出来上がっていた。
この状態の南君は騒いで飲み続けてパタンと寝てしまう。それを海帆が回収するまでが一連の流れになっている。
何がムカつくって本人は全くそのことを覚えていないことだ。
ダル絡みを毎回されて鬱陶しい。
「もうパーッとやっちゃいましょう。パーッと」
「・・・そうじゃな。飲むぞ」
2人は仲良くグラスを空にして海帆に注いでもらっている。
夜々はいつもより豪華な食事に目を輝かせながら黙々と食べていた。
舞木は真也や真央と話している。アニメとかの話をしているのだろう。
・・・小禄を呼んで夜々と食べよう。
私も美味しいハンバーグを食べることに集中したいし・・・。
そうして、私達3人は黙々と食べ始める。
少し経ってから声がした。
「みんな、お疲れー」
扉を勢いよく開けて入ってきたのは楸だった。
「お疲れ様です」とみんな軽く会釈する。
私は「ども」とだけ言った。
「みんな頑張ったね。誇っていいぞ」
「はぁ・・・ところで、何しに来たんですか?」と、真也。
「失礼だろうが」
すぐに真珠が真也の頭を叩いた。
「可愛い後輩達が頑張ったんだよ。褒めてあげなくちゃね、上司として」
ほとんど何もしてくれないだろう。と、言おうとしたけど止めた。
楸はそれぞれにダル絡みをしてから「じゃあ、帰るから」と言う。時間にして10分くらい。
「え?本当に何しに来たの?」
私が言うと「何?寂しいの?」とからかわれる。
私は外方を向いた。
「本当はみんなとゆっくりお話ししたいけど、向こうにいないことがバレたらお偉いさんがうるさいんだよ」
扉の前に立つと真珠が楸に紙袋を渡す。
「どうぞ。食べてください」
「気が利くねぇ。真珠ちゃんもいつもありがとう」
「いえ、真也の馬鹿野郎がいつも迷惑かけてますから。これからも迷惑をかけると思いますがよろしくお願いします」
「誰が馬鹿だ」
すぐに反応する真也。見慣れた光景だ。
楸は満足そうにそれを見ていた。
「じゃあ、みんな楽しんでね」
最後にそう言って帰ってしまった。
何だったんだろう。・・・まぁ、いいか。ハンバーグの続きだ。この後には高級ステーキも待っている。
この上なく幸せな時間だ。
しかし、それを妨げる音が鳴った。
真也の端末の音。
「はい。夕月です」
嫌な予感。
私達の端末にもチャットか何かの連絡が来た。
「・・・アンノウンですか?」
・・・やっぱり。
頻度はかなり減ったけど、塔莎帝を退治してからも度々、出現する。
今日の夜勤は南君。私は冷たい目でお酒を飲んでいる南君を見た。
「ん?なーに?柊」
近づいてきて肩を組まれる。
・・・あの連絡が来てるんですが?
普段は心を見させないようにしているのに酔うとくっついてくる。
「えへへ、柊。今回は頑張ったねー。いい子いい子」
頭をなでられる。お酒臭いし嫌だ。
「柊も夜々も小禄も海帆もだーい好き」
・・・面倒くさい。
「えーと、僕が行くよ」
真也もお酒を飲んでいるけど・・・。
この状況で立候補した奴がいた。
「ここは私と柊に行かせてください」
手を挙げたのは海帆。なぜか私まで巻き込む気だ。
「嫌なんだけど、意味分かんないんだけど」
「私は南君さんのペア。だから、私がカバーしないと」
「・・・なら、一人で行けよ」
このやり取りをしている間も出来るだけハンバーグに食らいつく。
「私は公認魔導師じゃないから。柊と一緒に行けば大丈夫なはずだよ」
これ・・・決定じゃん。何とかしないと・・・。
「お、おろ・・・」
言いかけたが小禄に睨まれる。また私ですか?と言いたげだ。
「帰ってくるまで待ってるから行ってきたら」
優しく言ってくれる真珠。
まぁ、待っててくれるのなら・・・いいのか?
「では、南君さん。行ってきますね」
「ん?よく分かんないけど行ってらっしゃい」
ニコニコしながら手を振っている。お前のせいでこんなになってるんだぞ。
私は浮遊魔法で浮かされる。
「南君、覚えてろよ。呪ってやるからなーーー」
「呪いなんて使えないでしょ。さっさと行くよ」
待機室から出て扉が閉まる。
こうなった以上はさっさと終わらせるしかないだろう。
南君も許せないけど、もう1つ許せないことがある。
舞木がニヤニヤしながら手を振っていたことだ。ペアなら少しくらいフォローしてくれてもいいんじゃないのか?
・・・何かムカムカしてきた。
あいつ、帰ってきたら覚えてろよ。
第一章はこれで終わりとなります。
2年と半分くらいの時間がかかりました。
これからも書き続けていきます。




