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ゲームの世界の世界にやって来て早三日。その三日目も、もう少しで終わろうとしている。
ここでの生活は退屈でつまらない。
いつも同じような景色。気温も一定で、常に明るい。
・・・何だか嫌だ。このままだとおかしくなってしまいそう。
この世界は本来は10キロとかの範囲で使うみたいで、最終地点から半径100キロくらいになるまではこの景色が続く。
初日は巻き込まれそうになって必至に逃げていた世界の収縮。
私達は最終日まではそれを気にすることはなくなった。
舞木が繋ぎ門を使って安全な場所まで移動しているのだ。
最終地点へ向かった渡鳥が座標となる式紙を落としていて、それを繋いだ。こんなことは舞木でないと簡単には出来ないだろう。
危険な状況だったのがしばらくは安全になったことで緊張の糸が切れたのも退屈の原因かもしれない。
ため息が漏れる。
「チェス、飽きた?」
海帆が駒を動かす。
「いや、何か精神的に疲れてきた」
少し考えてから私も駒を動かす。
「そうだね。もっと戦うかと思ってたから変な感じ」
私は海帆と見張りをしていた。
かれこれ三時間もこうしている。暇なのでチェスをしているのだ。
残りの大人達は共同テントの中。そこで今後のことについて話している。だいぶ揉めているみたい。舞木と南君が・・・。
舞木が初日に飛ばした渡鳥は無事に目的地まで到着した。
最終地点へ向かった渡鳥は式紙に分かれて、結界を張ったりして場所取りをしている。
塔莎帝の本体の方へ向かった渡鳥は適切な距離を保ちながら塔莎帝の観察を続けている。
今日まで二回、塔莎帝の本体は崩壊に巻き込まれそうになったが、座標と思われる他の塊へ瞬時にワープして回避していた。それ以外に動きはない。
二人が揉めているのは塔莎帝の本体を攻撃するかどうかだ。
舞木は攻撃をするべきだと考えていて、南君はそうするべきではないと考えている。
今は十分に距離があって、相手の情報は何もない。
舞木は式紙で攻撃して、どういう挙動をするのか観察をしたいらしい。
今回のこの作戦は塔莎帝を倒せる数少ないチャンスかもしれない。
嫌々、この作戦に参加したけれど、元々は魔法隊で責任感はある。しっかりとやり遂げるためにも情報を集めたいみたいだ。
南君は変に攻撃したりして未知の魔法で取り返しのつかない事態になるのを避けたいみたいだ。
第二段階まで作戦が完了すれば最低限の仕事は完了する。それから、様子を見ながら戦って無理そうなら世界を破壊する。
被害を最小限にするために考えたのだろう。国のことも私達の命のことも考えている。もし、今の段階で私がこの世界を壊さなければならない事態になったら、被害を受けた国や世界機関から何をされるか分からない。
どちらの考え方も理解できる。
でも、こんな時まで喧嘩するのは止めてほしい。
チェスは私が負けた。最近、調子が良かったのに負けが込んできた。
ここでのスッキリしない生活もあって、ストレスが溜まってきた気がする。
海帆は端末を見て時間を確認した。
「あっ、夕食を準備する時間だね」
「・・・もうそんな時間か」
「こっちだと分かんないよね」
「本当だよ」
海帆は魔法で調理器具と食材を出した。
「何か手伝いますか?」
「ゆっくりしてて、すぐに作れるから」
そう言って、魔法でそれらを操り始めた。
実はこの世界でどのように過ごすのか決められている。
健康生活プログラム(結界用)というマニュアルがあり、基本的にそれ通りに生活をしなければならない。
個人の世界に引きずり込むタイプの結界は術者の数だけ固有の世界がある。ルールも時間も異なるのだ。
物好きがいて、そんな世界でどうやったら健康的に過ごせるかを研究した魔導師がいるらしい。その研究を元にして作られたのがそのマニュアルだ。元の世界基準で時間が決められていて、私達はそれに従うしかない。真央は真人間プログラムと呼んでいた。
・・・規則正しい生活は苦手だ。
特に朝早くに起きなきゃいけないのが辛い。
でも、私よりも真央の方がキツそうで、日に日に弱っていく。まぁ、あいつは自業自得だと思う。
やることのない私はスープを作る海帆の様子をボーッと眺めていた。
何だか明け暮れでの待機時間とそんなに変わらない。
何となく他の人はどうしてるか思い出してみた。
海帆は舞木に空飛ぶ絨毯の使い方を教わっていて、時間があれば練習している。
舞木と南君も喧嘩しながらも、どうするかをずっと考えている。
引きこもりは重要な話し合いの時以外は引きこもっている。
あれ?普段と変わらないのは私と引きこもりだけ?
考えるのを止めた。
それとほぼ同時に大人三人組がテントから出てくる。
三人とも疲れていた。
特に舞木と南君はボロボロだ。一体、何があったんだろう?
海帆も三人を見て、困った顔をしていたが、「もう少しで出来上がります」といつも通りに話しかけていた。
「・・・うん。ありがとう」と南君。
そんな三人に私はペコペコしながら近寄って聞いた。
「ど、どうなりました?」
三人の疲れ切った視線が向く。
南君が答えてくれた。
「明日、お昼頃に塔莎帝を攻撃します」
そう言ってから、南君はため息を吐いて、横目で舞木を見る。
舞木は顔をそらす。
・・・南君が折れたのかな?
「スープができましたよ」
出てきたのは美味しそうな海帆特性のスープとキャラメルラ社製の乾パンだった。
キャラメルラ社は世界的に有名なお菓子メーカーでどの商品も美味しい。乾パン以外は・・・。
この乾パンは栄養満点でこれを食べているだけで必要な栄養素が全て摂取できるらしい。やろうと思えば、一生これだけでも生きていけると言われている。そんなおかしな奴はいないと思うが・・・。
今回もそうだが、何かあったら基本的にこれが支給される。
味がない。パサパサしている。本当に嫌だ。
とても安価なのもあり、魔法隊では無料支給されるらしい。
入りたての人や金欠の人、節約したい人はこればかり食べていると聞いた。これをどうやって美味しく食べるか日夜、研究されている。
一度、真珠が作ってくれた乾パンピザは美味しかった。真也のお気に入りの1つらしい。
「海帆さん。俺はテントで食べるから」と真央。
流石、引きこもり。ここでもブレない。
「分かりました」
受け取る物をもらってから自分のテントに消えていった。
南君が魔法でテーブルと四人分の椅子を出して、そこで食べる。話し合ったことを私達に伝えたいらしい。
席に座って、海帆が作ったスープと乾パンを食べる。
海帆の手料理は何でも美味い。いくらでも食べられそうだ。
舞木と南君は長い間の話し合いで疲れていたのか静かに味わっていた。
「ねぇ、何で二人ともボロボロなの?」
二人ともチラッとこちらを見る。
「お互いに色んな資料とか過去の事例とかを挙げて説得しようとしたけど無理だったの」と南君。
・・・この世界に資料とか持ってきてたの?
「だから、最後は正々堂々と取っ組み合いで決めることにしたんだよ」
え?魔法使いが最終的にやることが取っ組み合いなの?馬鹿なのか?
海帆は苦笑い。
「舞木が勝ったってこと?」
「いいえ。引き分けよ。最後は真央に判定してもらったの。私は負けてない」
いい年した大人の取っ組み合いを見せられてたのか・・・真央が可哀想に思えてきた。さっさとテントに引きこもりたくもなる。
「それで攻撃はどうやるの?」
南君が最初に答えた。
「知らないわよ。ボボボーンとかバババーンってやるんじゃない」
子供みたいな表現をするなよ。
舞木を見る。
「うん。だいたいそんな感じ」
何も分からないんだけど・・・。
大人二人はため息を吐いた。
「疲れた。私達は何をしてたんだろう」
「えぇ、早く寝たい。お風呂に入りたい」
・・・え?こんなんで大丈夫なのか?
突然、色んなことを考え始めて、最初から手直ししていくことにしました。3000から5000字くらいに分割していく予定です。理由としては長すぎると後々の修正やそのエピソードを探すのが大変だからです。後、長すぎると自分自身も読みにくいと思いますし・・・。2年以上も書き続けていて初期と書き方とかルールも変わっていると思うのでその見直しも兼ねています。




