表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クムパプユアネ_World:M  作者: 浮巣つぬ
明け暮れ
34/49

28

 明け暮れへ戻る間、夜々さんとは会話がありませんでした。

 少し驚かせてしまったでしょうか?

 このままではいけないと思うのでこちらから声をかけることにしました。

「夜々さん」

「は、はい。何でしょうか・・・」

 ・・・普段、そんなしゃべり方しないじゃないですか。

「いつも通りでお願いします。そんなに怒ってませんから」

「う、うん。・・・小禄、さっきは勝手なこと言ってごめんなさい」

 私はしっかりと謝られるのは苦手です。仕事でミスをした時の謝罪とか親しくなってからの軽い謝罪とかは特に何も思わないのですが・・・なぜでしょうか?

「この作戦が終わったら、パールでグラタンをおごってください。それでこの件は終わりです」

「うん」

 ちょうど、明け暮れのある魔法省の屋上に到着しました。

 そこから中に入って、階段で待機室へ行きます。

 念のために神様を待機室に残していて、何かあったらお願いする予定でした。

「ただいま戻りました」

 待機室の扉を開けると、神様・・・と二人の魔導師がいます。

「葉月ちゃんは可愛いね。私は人間でも神様でも気にせずに結婚できるよ。だから、結婚しない?」

 ・・・ちょっとイラッとしました。

 一人は風車先輩です。

 ソファーに座り、私の神様を後ろから抱きかかえています。

 神様は疲れ切った顔で「止めてくれ」と弱々しく言っていました。そして、私を見つけると「助けてくれー」とお願いされます。

「お疲れ様です」

 私が言うと夜々も続けて言いました。そして、私の後ろに隠れます。

 もう一人の魔導師は軽く会釈して、風車先輩はこちらを見ました。

「小禄ちゃんに夜々ちゃん。お帰りなさい。早かったね」

 私が帰ってきたのにまだ神様を放しません。

「葉月さんを放してもらっていいですか?」

「え?・・・うーん。小禄ちゃんもやってあげるよ。三人で結婚するのもありだよね」

 ・・・先輩でなければ、殴っているでしょう。

「ふざけないでください」

 無理矢理、引き離しました。

「小禄ーーー」

 抱きついてきました。

「今は離れてください」

 押して離れさせました。

 もう一人の魔導師の方が口を開きます。

「まったく・・・馬鹿な弟子でごめんなさいね」

 彼女の名前は頴娃(えい)壺川(こせん)さん。明け暮れの特別顧問をしているお婆さんです。

「いいえ、慣れてますから」

「慣れてるんだったら、けっこ・・・」

 杖を向けました。

「嘘だよ」と、ヘラヘラ笑いながら両手を挙げます。

 ・・・この人は本当に公認魔導師だったのでしょうか?普段の感じからどんな風に仕事をしていたのか想像がつきません。

「さてと、二人ともお疲れ様」

 椅子に座っていた壺川さんが立ち上がって、杖をつきながらこちらへ歩いてきます。

「でも、馬鹿弟子が言ってたけど、早すぎね。少しくらいサボっても良かったのよ。まだ何の事件も起こってないのに・・・」

 なぜか残念そうでした。

 首を傾げてしまいます。

 まるで何か事件でも起こってほしかったみたいな言い方です。

「何も起こってないならいいことじゃないの?」

 私の顔を見てくる夜々。

「そうね。確かにそう。でも、私は今回の作戦を聞いて病院を抜け出してきたの」

 体調が優れないとだけ聞いていましたが、入院していたのは初耳です。

「最近の悪人は腰抜けで嫌になるわね。昔はこんな非常事態には張り切って暴れていたのに・・・」

 もしかして、事件があったら戦うつもりだったとか・・・いえ、まさかですよね。

 ため息を吐いてから風車先輩を呼びました。

「仕方ありません。行きましょう」

 その言葉に嫌そうな顔をする風車先輩。

「どこにですか?」

「もちろん、アンノウンを倒しに」

 ウフフと笑っていました。




 この世界に来てから3時間。

 私と柊はアウトドア用のテーブルと椅子を出してお茶をしていた。

 柊はお散歩しながら、塔莎帝を破壊することになっていたけど、疲れてすぐに帰ってきたのだ。

 担当の範囲は私が式紙を使って倒しておいた。

 二人でテントに備えてあるシャワーを浴びて、今はこうしている。

 それにしても、塔莎帝はよく出来ていると思った。

 この世界の中なら終世界で触れれば、連鎖的に破壊が伝って倒せるはずだ。

 きっと呪いや侵食する系の魔法の対策だろう。一定間隔でつなぎ目があって、そこで消失は止まってしまう。筒の1つ1つが別々のアンノウンで、それを連結したのが塔莎帝のトンネルなのだ。

 声がした。

「ちょっと、どうしてくつろいでいるの」

 千疋さんと海帆さんが帰ってきたようだ。

 他国と比べて小さめの国とはいえ、海まで含めるとかなりの面積がある紗倉見。広範囲にあるトンネルを3時間で破壊し終えたのか。

 度々、衝撃波みたいな風を感じたり、大きな音が響いていた。きっと禁術でも使ってさっさと終わらせたのだろう。

「二人の分もあるからいいでしょ」

 私の言葉に唇を尖らしたがうなずく。

「では、支度してきますね」と海帆さん。

 シャワーで汗を流してから来るのだろう。

 二人はテントへ入った。


 海帆さんが先に入ったみたいですぐに私達とお茶を始めた。・・・もう一人が出てこない。

 早30分、どんだけ時間をかけるの?

 確かにテントから出てこない引きこもりもいるし、私達も呑気にお茶をしている。一応、この世界での作戦のリーダーである南君がそんなんでいいのかな?と思う。昔から長かったけれど、ここでもか・・・。

 そんな私に気が付いて、海帆さんは「遅いですね」と苦笑いしていた。

「本当に遅い。何を考えてるんだろうね。丁寧にお風呂に入る時間じゃないっての」

 ・・・その時、離れた場所に設置しておいた式紙の反応が消えた。

「どうした?」と柊。

「崩壊が迫ってきてる。海帆さん、南君を呼んできて。出発する」

「わ、分かりました」そう言って急いでテントへ。

 私は魔導書から式紙をたくさん出して空飛ぶ絨毯の形にまとめる。それを変身魔法でしっかりとした絨毯に変えた。

「まだ見えないけど・・・」

 柊は遠くを眺めていた。

 確かにまだ見えない。

「どんなにこの世界が広くても最大10日間でゲームが終わるらしいからね。最初の方は崩壊のペースが速いんでしょう。すぐに見えて巻き込まれるよ」

 また1つ、式紙の反応が消えた。かなり早い。

 後は真央か。

 テントの出入り口に設置されてるボタンを押す。玄関のベルのような中にいる人に来客を伝える物だ。・・・しかし、反応はなかった。

 緊急だし、仕方がない。

 杖を出して、一振り。テントを魔導書に戻す。テント内で緊急事態が起こった時に使う魔法。悪用されないように、そんな魔法はないことになっている。なぜ、私がこの魔法を知っているのかは秘密だ。

「フゲッ」

 ベッドでゲームをしていたみたいだ。イヤホンをしながら・・・。

「もう、何だよ」

 いきなり明るい空間に出て、まぶしいらしく手を目で覆っている。・・・変なことしてなくて良かった。

「急いで、崩壊が迫ってきてる」

「えぇ?」

 マップを見る。そして、私を見る。

「マジじゃん」

「ゲームをやってるからだよ」

「このゲーム、本当に時間泥棒だな」

 そう言って、ゲーム機を消した。

 南君達も出てくる。

「話は本当なの?」

 ちょうど、その時にパキパキとひびが入るような音が聞こえた。

 私達が視認できる範囲にまで崩壊が迫っている。

「早く乗って」

 五人で乗るには広すぎるくらいの大きさに作っておいた。

 残りのテントも魔法で本に戻して、手元に引き寄せる。

 みんな、急いで乗り込む。

 あっという間にすぐ側まで崩壊がやって来た。

「飛ばすよ」

 結界魔法を展開して一気に加速する。

 とにかく、崩壊から逃げ切らないと・・・。

 どうせ、あるのはトンネルくらい。どんなに飛ばしても構わないだろう。



・・・・・



 また一体、アンノウンを倒しました。

 もう10体は倒していると思います。かなりの数です。

 夜々の魔法にミスがあった訳ではありません。地中深くにこれだけのアンノウンが潜んでいたのです。何かの拍子にこれらが一斉に現れていたらと考えると恐ろしいですね。

 空は薄らと暗くなってきました。

 飛行隊からはまだまだアンノウンの情報が送られてきます。・・・今日中に終わるのでしょうか?

 次の現場は近くて三体のアンノウンが現れたようです。

 ほうきをそちらへ走らせました。

 到着する直前、なぜかアンノウンの消える光が上っています。

 ここら辺は僕の担当で他の先輩方はいないはずです。・・・なぜでしょう?

  現場に到着しました。

 そこにいたのはこの前、問題を起こした風車さんです。

 いつも結婚結婚とうるさい風車さんがドン引きしたように上っていく光を眺めています。

「お疲れ様です」

「お、お疲れ」

 何か疲れている様子でした。

 基本的に自由気ままに生きている風車さんがこうなっている時はだいたい彼女の師匠がいる時です。二人の師匠がいて、戦闘が大好きなのは・・・。

 光の中から金棒を担いで出てきたのは背の低い老婆でした。壺川さんです。

 挨拶をして近寄ります。

「あら、遅かったわね」

 そう言って「ウフフ」と笑ています。

 元明け暮れの先輩には協力を頼みましたが、お年寄りには頼んでいません。むしろ、来るな。と伝えておきました。それでも、これです。

「体調は大丈夫なんですか?」

 壺川さんは今年で82歳。心臓の病気もあるとか聞いています。たしか入院していたような・・・。抜け出してきたなんてことはないですよね。

「あらあら、心配はいらないわ。それに、こんな機会でもないと戦わせてもらえなくてね」

 そう言って、ブンブン金棒を振ります。

 こんな機会でも戦わせるつもりはありませんでしたよ。

「ほら、見て。今回のために新しく作ってみたんです。格好いいでしょう?」

 自慢げに金棒を見せつけてきます。

「・・・そ、そうですね」

 僕は風車さんを冷たい目で見ます。

「言いたいことは分かる。でも、この前の問題を起こした件でアンノウンの所まで連れていけって脅されて・・・まぁ、私は化け物の相手は苦手だから良かったけれど・・・」

 これで老体に何かあったらどうするともりだったのでしょう?

妙典(みょうてん)さんは?」

「妙典ちゃんのことは今はいいじゃない」と、壺川さん。

 ・・・黙って抜け出したんですね。今頃、すごく怒っていることでしょう。

「真也。私、どうなちゃうんだろうね」

 珍しく怖がっています。

 たまには、少しくらいは怖い目にあった方がいいでしょう。

「さて、夕月さん。あなたは少し休みなさい」

 何でいきなりそんなことを言うのでしょうか?

「いや、無理ですって。他の先輩方も協力してくれてる訳ですし、僕が休む訳には・・・」

 不満そうな顔をされます。

「では、僕はそれで・・・」

 ほうきを出して浮かび上がると、何かを思いついたようで嬉しそうにこちらを見ます。

「じゃあ、ここからは早い者勝ちってことでいいわね」

 また勝手に変なことを・・・。

 その時です。近くで二ヶ所、アンノウンの出現報告が入りました。

「じゃあ、北の方へ行くので南の方をお願いしますね」

 面倒になって距離を置くために提案しました。

「ええ、そうしましょう。紅華(べにか)、早くほうきを出しなさい」

 とても嬉しそうです。良かった良かった。

「・・・はい」

 風車先輩の出したほうきにヒョイッと飛び乗りました。

「じゃあね。お互い頑張りましょう」

 そう言ってから飛んでいきます。

 ・・・ため息が出ました。



・・・・・



 端末の時計を見る。

 午後の九時過ぎ。元の世界はずっと前に真っ暗になっているだろう。

 もちろん、この世界の中は青空のままだ。

 世界の崩壊は最初の頃よりは遅くなって、この絨毯も恐ろしい速さで進んでいるため、かなり余裕が出来た。

 絨毯の操縦は主に私がしていて、暇な四人はトランプやカード麻雀をしながら過ごしていた。

 長時間の移動だし、何かしらしていた方がいいだろうとは思う。

「その一局が終わったら、そこで休憩しよう」

 千疋さんが時間を確認する。

「そうね。早く終わらせましょうか」


 その言葉を聞いてから1時間くらいが経ってようやく終わった。

 この人達、そんなに真剣にカード麻雀やってたの?長引きすぎて、途中でイラッとした。

 降り立った場所はマップによると10キロ以内にトンネルのない比較的安全な場所だ。

 それぞれのテントを出してチーム夕火とチーム朝水の2チームで交代交代、見張りをすることになった。

 引きこもりは相変わらず引きこもるらしい。

 チーム朝水は柊の一人チームらしい。今回はなぜが私も所属していることになっていた。

 最初の見張りはチーム夕火で三時間おきに交代する。

 私達、チーム朝水は先に寝ることになる。

 起きた時には作戦二日目になっているだろう。

 この後は準備をして寝てしまった。

 そんな感じでこの世界での一日目が終わったのだった。



・・・・・



 今は深夜0時のちょっと前。

 私は神様と将棋をしながら過ごしていました。

 ここまで出動するような事件が起こっていません。いいことです。

 待機室の扉が開いてヨロヨロと真也さんが帰ってきました。

「終わったー」

 そのままソファーに倒れ込みました。

「遅かったな」と、神様。

「お疲れ様です」

「マジで疲れた」

 顔だけ上げて、待機室を見渡しています。

「あれ?夜々は?」

「眠たそうだったので寝かせてあげましたよ」

 真珠さんと一緒に暮らしているのです。きっと明け暮れで一番、規則正しい生活をしているでしょう。

「うん。それでいいよ。小禄さんも早めに休んでね」

「はい、真也さんは大丈夫ですか?夜勤、少しくらいなら代われますよ」

 見るからに限界そうですが・・・。

「徹底的に倒したから少しの間は出てこないと思うし、深く寝ない程度に仮眠しておくから大丈夫。それよりも、朝に交代した後は何も考えずにぐっすり寝たいから、その時はよろしくね」

 その気持ちはよく分かります。

「了解しました。あっ、そう言えば、壺川さんと風車さんが来ていましたよ。入れ替わりでどこかへ行ってしまいましたけど・・・」

 一応、伝えておきましょう。

 神様は人形のようにずっと愛でられてたことを思い出したのか、ビクッと震えました。

「・・・あぁ、僕も会ったよ。壺川さんがアンノウン倒してた」

「やっぱりですか」

 苦笑いしてしまいます。

「妙典さんが怒ってたぽいし、風車先輩はどう転んでも助からないかもしれない」

「冗談に聞こえないのが怖いですね」

 時計を見ます。

 新しい日を迎えていました。

「では、休みますね。葉月さん、寝ますよ」

「そうじゃな。真也よ、神もいるんじゃ。安心せい」

 自信満々に言っています。私は不安です。

「えぇ、うまくいくように祈っておきます」

 その言葉に満足そうな神様でした。

 私は軽く会釈して部屋を出ました。


 二人が去ってから、ふぅと息を吐き、少し明かりを暗くして何となく端末を見ます。

 明け暮れのメンバーと魔法隊の役職を持っている人達だけの特別なグループチャットにメッセージが来ていました。

 風車先輩からで、師匠に殺されるから誰か匿って。という内容です。

 僕はニッコリ笑顔の顔文字を送信して、それから軽く目を閉じました。

 終わりが見えてきました。今年中に終わるかもしれませんね。第一章が・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ