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クムパプユアネ_World:M  作者: 浮巣つぬ
明け暮れ
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1 逆井柊 


 紗倉見(さくらみ)


 世界地図でいうと東の端っこにある国だ。

 東西2つの島で構成された国で、私はそこで暮らしている。

 私の名前は逆井(さかさい)(ひらぎ)。柊と書いてひらぎと読む。間違えないでね。

 私はこの紗倉見と呼ばれる国で公認魔導師として働いている。国家公認の魔導師。格好いい肩書きでしょう?まぁ、私は魔法を使えないんだけれど・・・。


 そんな国家公認の魔導師である私は今、緊急車両の中にいた。

 カタカタと揺られている。また、車内はまだ寒く、小さくなって震えていた。どうして、こんなことになったのだろう?

 数分前まで年越しそばを食べながら麻雀をしていたはずなのに・・・。朝までお菓子を食べながら力尽きるまで麻雀する予定だったのに・・・。

 緊急車両は町から出て、森の方へ。


「具合悪そうだが大丈夫か?」


 野太い声で心配するのは運転手の牧田。

 深夜にトレードマークのサングラスをかけ、車をかっ飛ばすイカれた大男だ。


「めっちゃ悪いんで帰っていいですか?」


「ダメだ」


 即答だった。なぜ聞いたんだろう?それなら、心配しないで欲しかった。

 ため息が出る。

 私と牧田のやり取りを聞いて、隣に座っている少女が笑う。

 彼女は水浦(みずうら)海帆(みほ)

 水色髪の魔法使い。私より背が高くて、ちょっとだけ本当にちょっとだけ育ちがいい。

 海帆は何でも出来る。家事が出来て、仕事が出来て、麻雀が打てる。完璧な魔法使いだ。


「これは国民にお正月をゆっくり過ごしてもらうための極秘作戦だよ。私達がなんとかしないとね」


 海帆はそんなことを言っている。さっき麻雀で負ける寸前だったのはどこの誰でしょうね。

 私と海帆は途中抜けしてきたのだ。

 緊急事態だから仕方なかった。私は勝っていたのに・・・。


「ちょろまかせてよかったね」


 少し嫌味を言いたくなった。

 海帆はフフフとあざとく笑う。

 私は精一杯の威嚇をした。

 町からかなり遠くまで移動した。通報があった場所まではもうすぐだ。

 でも、ここら辺は悪路で車がガタガタ揺れる。さらに気分が悪くなりそう。


「まだ?」


「見えたぞ」


 牧田の声とほぼ同時に空に閃光が走った。

 海帆は緊急車両の天井の昇降口を開け、夜でも見えるらしい望遠魔法で姿を確認する。


「アンノウンで間違いありませんね。情報通りです」


『アンノウン』


 それは人類を滅ぼす正体不明の生命体という設定の化け物。

 半年くらい前に神様を自称する謎集団が解き放ったと言われている。

 どれも独特のデザインで奇妙な姿形(すがたかたち)をしているのが特徴だ。

 今回のアンノウンも気持ち悪い姿をしている。

 ムカデの体にライオンの顔、そして人の腕のような足がたくさんついている。ほんとにキモい。

 動きにくそうな体を器用に動かして進んでるようだ。

 あれを倒すのが今回の極秘任務となっている。


「では、行ってきます」


 車にある昇降口から外へ出て、パッと魔法で手元にほうきを出す。


「気をつけて」


 声をかけると海帆はニコッと笑い、指を三本立てて二回振る。別れのサイン。この場合は行ってきます。って感じだろう。

 そして、ほうきに乗った海帆は車から飛び降り、縦に二回転して上昇していった。

 私はサッと昇降口を閉める。


「・・・もう少し見送ってやったらどうだ?」と牧田。


「だって寒いんだもん」


 私は寒がりなのだ。


ーーー


 ・・・寒い。

 私が下ろされたのは開けた草原だった。月の光と澄んだ空気でそれなりに遠くも見える。もちろん、アンノウンの姿も・・・。

 爆発が起こた。海帆の仕業だろう。アンノウンは進路を変えた。

 海帆の位置はほうきの先にあるランタンの光で分かる。作戦通り、こちらへ誘導していた。

 アンノウンは滅茶苦茶に光線を撃っている。何の魔法かは知らないが、当たったら骨も残らなそうだ。

 海帆はそれを避けながらこちらへ向かってくる。アンノウンも追いかける。

 海帆は煙を出す札を使ってアンノウンの視界をさえぎると、杖を使って私の目の前まで地面を凍りづけにする。

 猛スピードで煙を突っ切るアンノウン。

 氷で腕のような足を踏み外し、バランスを崩した巨体がこちらに滑ってくる。

 海帆は上空へ離脱。

 アンノウンは苦し紛れに光線を私に放つ。

 私は腕を前に伸ばす。


終世界(ついせかい)


 光線は私に触れる前に消えていく。

 これが私の体質。この世に存在するほとんどの魔法は私の周囲では存在できない。

 アンノウンは目の前で止まる。偶然なのか計算してやったのかちょうど私の範囲内だ。


「惜しかったね」


 指を鳴らす。すると、アンノウンは頭から光となって消えていく。

 極秘作戦はこれで終わり。・・・疲れた。さっさと帰りたい。


「お疲れ様」


 すぐに海帆が迎えに来てくれた。鞄からブランケットを出して、私にかけてくれる。


「ありがとう」


「どういたしまして」


 アンノウンの消滅する光が空へと上っていく。その輝きはとても綺麗で私達はそれを眺めてた。


ーーー


 緊急車両が到着すると私は素早く乗り込む。

 暖房が効いてて暖かい。さっきとは大違い。ぬくぬくだ。


「連絡は終わっている。どうする?明け暮れに戻るか?」


 明け暮れとは紗倉見の公認魔導師で構成された集団で主に治安維持のお仕事をしている。

 魔法省の一部でさっきまでそこで麻雀をしていた。

 でも、麻雀って気分ではないな。


「面子は足りてそうだし、今日は帰る。海帆は?」


「私は戻ります。南君さんが待っているので」


「了解だ」


 牧田は白い歯をキランと輝かせ、緊急車両を走らせる。暗いのになぜ歯は光ったのだろう?

 ・・・まあ、いいか。

 海帆さんは清書する前から存在はしていましたが名前は決まってませんでした。

 海の帆でみほ。キラキラネームになりますかね?個人的には好きな名前ですけど・・・。

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