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夜になってようやく仕事が終わりました。
既に暗くなっている待機室の明かりを点けてソファーに倒れ込みます。
この忙しさ。一時期、真央と二人だけで西側を担当していた時期を思い出していました。いや、あの頃の方がきつかったのですが、忙しい時にいつも思い出してしまいます。本当に嫌な時期でした。いえ、忘れましょう。
自称神様の撃破が報告されました。
どうやら南君は無事らしく、みんなは一安心していました。直接戦闘には参加しなかったみたいでこれなら作戦にも問題なく参加できるかな?と、本人に言ったら怒られそうなことを思っていました。作戦も南君がいることを前提に作っていますけど・・・。
色んな所から仕事をもらったみたいで明日には帰ってくると聞いています。
それから最後の調整をして本番の予定です。
あれから塔莎帝の被害は広がって、国のあちらこちらから葉が生えてきて隠せなくなりました。
連日、このニュースばかりで魔法省は対応に追われています。
近いうちに作戦の内容がリークされるでしょう。お金になるのでやる人はやります。
桂一郎さんが会見でも開くのでしょうか?それとも、別の政治家かもしれません。まぁ、僕達の知ったことではありません。明け暮れの仕事は塔莎帝を倒すことなのです。
なぜかまだ眠たくありません。疲れているはずなんですが・・・。
真珠の作ってくれた惣菜でも食べながら眠くなるまでゲームをやることにしました。
始めてから少しして扉が開きます。
誰だろう?と見てみるとまさかの舞木でした。
「あっ、お疲れ様です」
ペコペコ会釈しながら遠慮無く入ってきます。
「え?怖い。何で入ってくるの?」
そもそも明け暮れには関係者以外は立ち入り禁止です。本当だったら追い出しているのを黙ってあげているのに・・・。
「まぁまぁ、真也さん。久し振りにどうです?ゲームでも」
「えぇ・・・」
まぁ、ゲームはやることにしました。
真珠が指導している頃から真央と三人でイベントに行ったり、ネットゲームをしたりしています。オタク仲間です。
「柊はどうしたの?」
「寝ちゃいました。夜勤もあってクタクタですよ」
「あいつはもう少し体を鍛えた方がいいよ」
舞木は苦笑いしている。
「そう言えば、聞きましたよ。千疋さんのこと。無事だったみたいですね」
「うん。良かったよ。何ごともなくて・・・ねぇ、柊からどこら辺まで聞いている?」
舞木は首を傾げました。
「それくらいですよ。・・・あぁ、そういうことですか。安心してください。柊は話せないようなことは言いませんよ」
「そう。なら、いいや」
変な嘘は吐かないでしょう。たぶん。
それからお互い沈黙して、今やっているステージをクリアしました。
そこでまた話しかけます。
「ちょうど良かった。このゲームは柊が舞木とやりたいって言って買ってきて積んでいたから」
「そうなんですか?ちょっと古いですよね。でも、何でここに?」
「最初に僕とやったんだよ。うまくなって舞木を驚かせてやるって。まぁ、下手過ぎて今のステージもクリア出来なかったから諦めたんでしょ」
「柊らしいですね」
次のステージも簡単に終わる。本当に柊のあれは何だったんだろう?
「・・・まだ簡単ですね」
「でしょ?」
真珠が作ってくれた野菜チップスをポリポリ食べながら一区切りつくまで進めました。
「面白いですね。映像も綺麗です」
「うん。でも、まだまだ先は長そうだけどね」
果たしてこのゲームのエンディングを見る日は来るのかどうか。
「今日はここまでですね。もし機会があったらまたやりましょう」
「そうだね」と、返します。
・・・機会。これも何かの機会なのかもしれません。
僕はダメ元で聞いてみることにしました。意外とこれを聞くのは初めてかもしれないです。
「ねぇ、今さらだけどここにこない?柊も南君も喜ぶよ」
一瞬だけ驚いた顔をして小さく息を吐きました。
「珍しいですね。真也さんが誘うなんて・・・」
僕はソファーに寄りかかります。
「うん。僕ももっと楽したい」
「真也さんらしいです。でも、やりませんよ」
まぁ、そうでしょうね。あんなことがあったのですから・・・。
「なら、1つだけいいかな?」
「・・・聞くだけですよ?」
僕はそれにうなずきます。
「柊が舞木を明け暮れへ連れ込んだこと。本当はダメなんだよね。何かしらの処分を与えないといけない」
「見逃してくださいよ」
「だから、貸し1ってことで今後、一回だけ仕事を手伝って欲しいんだ」
舞木は何とも言えない複雑な表情をしていました。そして、うなだれます。
「相変わらず、ズルいですね。・・・一回だけですよ」
「うん。ありがとう」
「あっ、今、話題の・・・何でしたっけ?」
「塔莎帝?」
「そう。それです。それに巻き込まないでくださいね」
・・・バレました。この時期にこんなことを言うのですからそうなりますよね。
「考えておくよ。それにいつ、何を任せたとしても柊の補助とかだから」
疑いの目をしていました。目をそらすと、舞木は諦めて立ち上がります。
「もう寝ますね。一段落したら、また三人でゲームでもしましょう」
当たり前のように魔法で冷蔵庫を開けて、飲み物を引き寄せていました。慣れた様子です。
僕の知らない間に何度もここに侵入しているのでしょう。
「これ、もらっていきます。お休みなさい」
「・・・う、うん。お休み」
一礼して部屋から出ていきました。
良いか悪いかは別にして、そういう所は昔から変わってません。
あの頃から今日、ここまで色んなことが変わりました。南君も舞木もずっと続いているのです。困難を乗り越えて・・・。もしかしたら、まだ乗り越えられていないのかもしれません。
でも、昔と変わらない仕草とかを見ていると、何だか嬉しくなります。しっかりと生きていることが確かめられるようで・・・。
さてと、僕もそろそろ寝るとしましょう。
明日も忙しいですから・・・。
ここからはこの章の終わりまで流れが決まっているのでポンポン進むでしょう。でも、このお話を書き始めた当初もこんなに時間がかかるとは思いませんでした。第一章は全15話くらいだったはずなのに気付けば20話になっています。ケレーディアのお話も去年で終わると思っていたのに先月まで伸びてしまってしまいました。いつ終わるのでしょうか?少し不安です。




