17
朝、起きてからずっとベッドの上で天井を見上げていました。
特に意味はありません。ただ無駄に時間を消費しているのです。
アラームが鳴ります。
時間まで後、2時間くらい。起き上がって身体を清めることにしました。
いつも以上に念入りに身体を洗ってからゆっくりとお湯に浸かります。
死ぬための準備ではありません。
大きな作戦や大変な仕事の時に悪い流れや不運などを洗い流して挑もう。という真珠さんの願掛けです。
私と舞木が真珠さんの指導を受けていた時はよく一緒にお風呂に入って身体を洗ってくれました。
私達が公認魔導師の一歩手前まで活躍できたのは間違いなく真珠さんがいたからでしょう。
魔導師となって真珠さんから離れてからは転げ落ちるばかり。今にして思えば、真珠さんは私達を色んなことから守ってくれていたのかもしれません。
浴室の天井を見上げながら心を落ち着けています。
何度か死んだことがあるのにまだ死ぬのが怖いです。いいえ、死んだからこそ怖いのかもしれません。
大きく深呼吸を繰り返します。吐く時も吸う時も震えていました。
「さてと、行こっかな」
独り言を言ってお風呂から上がりました。
準備を終えて、出発しようとしていた時でした。
端末へチャットが届きます。送ってきたのは柊。珍しいこともあるものです。
『せーぜーがんばれ』という一文と明け暮れのみんなで集まった写真が送られてきました。
こういうことはやってはいけない暗黙のルールがあるのに・・・。
珍しいことに桂一郎さんまでいます。会議の後とかでしょうか?
顔がほころんでいる気がします。
私は柊のこういう気づかいは好きではありません。というか嫌いです。
人の心をのぞき見て、その人に必要な言葉や行動をしてくれます。それはもう気持ち悪いくらいに。
一度でも助けられたら、それが支えになるのでしょう。悪く言えば、甘えてしまうのです。
でも、明け暮れという物騒な集団がなんやかんやでうまくいっているのは十代組を気にかけている柊のおかげなのは間違いありません。何か嫌ですが・・・。
私は一度も柊に心を覗かせたことはありません。
それでも、こうやって口では絶対に言わない欲しい物をくれるのです。本当にズルい女だと思います。
『せーぜーがんばる』と送っておきました。
眠い。寒い。辛い。
神様擬きのことなんてどうでもいいから寝ていたい。私は今、そんなことを思っています。
弟子のペルに起こされて、最前線にあるテントへ運ばれていました。
「こんな時までだらしないんですから」などと小言を言われながら後ろでポカポカの毛布に包まっています。
雪が降る中、優秀な弟子は結界を張って冷たい風が当たらないようにほうきを進めてくれていました。
その結界をノックする音。
「おはよう。メアリー」
そして、聞き馴染みのある声が聞こえます。
そちらを見ると藤紫色髪の女性がいました。
アンナ・リーラー。私の姉です。
ほうきで並走しています。
「おはようございます」
会釈するペル。
「おはよう。ペル、中に入れてくれる」
「は、はい」
私が何かを言う前に入れてしまいました。
とても冷たい目で私を見ています。
「これはどういうことか説明してくれる?」
明らかに怒っていました。
何も言わずに出ていったのがいけなかったのでしょうか?それとも、勝手にドンパチに参加したのがいけなかったのでしょうか?
でも、仮に正解があってそれを答えたとしても怒られることは確定していると思います。
「その様子なら知っているんでしょう?わざわざ聞かなくてもいいじゃない」
しばらくの沈黙の後、アンナはため息を吐きます。
「そうね。それに、こんなことになってしまったからにはやりきるしかないね」
怒られませんでした。この温暖なケレーディアで雪が降るくらい珍しいことです。・・・まぁ今、降っているのですが。
「もう少しだけシェリーのことを考えてあげなさい。復讐したい気持ちも分かるけど、一緒にいてあげるべきだった」
「・・・分かってる」
それしか言えませんでした。
今回の敵は仲間を傷つけられた相手であり、目的のためにいずれは倒さなければならない相手です。
きっとちょうど良かったのです。自分の不甲斐なさと大切な人を傷つけられた怒りを誤魔化すのには・・・。
「これを渡しておく」
手渡されたのは取り上げられていた正六面体の魔術機巧でした。
ウディンコンティアを乗っ取る時に使った道具です。
「私に渡しちゃっていいのかしら?」
「ええ、今回は特別にね。後は固有魔法。世界への影響は最小限に抑えること。いいね」
「分かってるわ」
そんなこんなをしている間にテントに到着します。
中ではエイルと卵色の髪で丸眼鏡をかけている女性、アリッサが座って話していまいました。
私達に気がつくと、笑顔で大きく手を振りました。
「おはようッス」
「やっぱり来ていたのね」
「アンナが心配だったみたいで素っ飛んで来たんッスよ」
アンナはムッとして「余計なこと言わないの」と怒っていました。
「でも、よくここに来られたわね。飛行機もそんなに飛んでないでしょう?」
「あれよ。あれ」と、アンナは指を指します。
テントの端っこに正四面体の結界があり、その中を謎のキューブが浮かんでいます。どこから引っ張り出してきたのか分からない特殊な結界でした。
「ダモクレスの剣の輸送と封印のお仕事。ほら、封印してあるでしょ?」
「これが・・・」
一撃で数万もの人の命を奪ってきた魔法がこのキューブの中に入っているのです。
禍々しいとか恐ろしいとか少しは思いました。しかし、それよりも気になることがあります。
「・・・その・・・何ていうか・・・雑な結界ね」
珍しい結界ですし、使ったのも初めてだと思います。私も初めての結界をここまでうまく作れるかは分かりません。仕方ないとも思いますが危ない兵器を封印している訳ですから練習して完成度を上げてもいいのではないかと思います。
それを聞いたアンナは目を見開いてから私を睨みます。
「はぁ?」
怒り始めました。ここまで積もっていた分もまとめて・・・。
数時間後に戦争が始まります。
テレビで見たような悲惨な光景がここ、ケレーディアで起ころうとしているのです。
私が原因なのでしょうか?
私の見える範囲ではみんな「気にするな」と言ってはくれますが、本心はどうなのでしょう?
その内にケレーディアも狙われることになるとは思っていましたが、私の名前を出されるとやっぱり責任を感じてしまいます。
ポーラである昔の私は死んで、今の私はルミナ。そう言い聞かせて、逃げてきたのも事実です。
まだ何も始まっていないのにモヤモヤしてしまいます。
自然とため息が出ました。
・・・私らしくない。いいえ、その私らしさも心機一転で作り出したものです。本来の私はどんなだったのか忘れてしまいました。
私は魔法樹の枝の上で戦場の方を見ながら座っています。
相手の要求通りに・・・。
ここに来るまでたくさんの人が死ぬでしょう。そんな様子を見せつけて、また私を絶望させようと考えているかもしれません。
エイルは最前線へ行ってしまいました。いつもは離れていても大丈夫なのにこんな時に限って寂しさを感じます。
その時でした。
「お疲れ」と、カプレの声がします。
「来てくれたんですね。嬉しいです」
「仕事だよ」
冷たく言われました。
「そこは、君が心配なんだ。とか言ってくれてもいいじゃないですか」
「えっ・・・やだ」
本気で嫌がっている顔です。長い付き合いなのですから励ましの言葉の1つや2つくれてもいいのに・・・。
頬を膨らませて怒っているアピールをしてから私の横を叩いて座りように合図します。
「仕方ないな」
横には座ってくれました。少し距離は空いていましたが・・・。
「今日は逃げないんですね」
「逃げた訳ではないけどね。面倒くさかっただけ」
本当に失礼な奴です。
「それにしてもとんでもないことになってんな」
「そうですね」と返します。
「お前はこれでいいのか?」
そんな難しいことは言わないで欲しいです。私だって何でこんなことになっているのか分かりませんし・・・。
カプレの方を見ます。
カプレは昨日みたいに町を見ていました。
横顔はなかなかのイケメンです。女性ですが・・・。
頬をつつきます。
「・・・何だよ」
「いえ、ちゃんとここにいることを確かめたかっただけです」
首を傾げています。
「私はここに来る前、ずっとまどろみの中にいました。夢か現か分からないそんな場所です」
カプレに寄りかかります。
「私には確かにポーラとしての記憶があります。でも、それは誰かの人生を見ていて、それを記憶と言っているだけのような気がするんです。私の記憶なのに私の記憶ではないような違和感があるんです。私は一体、何者なのでしょうね」
カプレからの返事はありません。そして、なぜか震えています。変な人です。
「ご、ごめん。ちょっと離れて」
押されて反対にコテンッと倒れます。
顔が赤くなっていてオドオドしていました。こんな姿を見るのは初めてです。何ごとなのでしょうか?
「変なことを言うな。それに変なことをするな」
・・・え?私、そんなに変なことしました?
私、千疋南君は昨日のテントへ向かって羽衣をまとって飛んでいます。
寒いです。ただただ寒い。昨日よりも風があって吹雪くかもしれません。本当にエイルさんは何でこんなことを・・・。
途中、第二防衛線の上を通過します。
自称神様が用意した魔方陣を中心に大きな円を描くように配置された浮いている魔術機巧。これを使って結界を張り、外側に被害が出ないようにするらしいです。計算上は私が発動した魔法に耐えると資料に書いてありました。
私に一体、どのくらいの広さを破壊させるつもりなのでしょうか?
他にも多くの魔法使いや設備があります。私達のいるテントとは大違いです。
もう少しでテントに到着する頃、煙が上っているのが見えました。
・・・何かあったのでしょうか?
さらに近付くと、エイルさんや世界機関の魔導師達が外で火に当たっていました。
どういう状況なのでしょう?何だか嫌な予感がします。
私に気がついたエイルさんは手を振ってくれて私はその焚き火の近くへ下りました。
「どうしたんですか?みんなで外に出て」
みなさん、苦笑いをしています。
「それは・・・」
「この魔方陣の難易度が分からない訳?」
怒っているような声がテントから聞こえます。でも、初めて聞く声です。
「感想を言っただけじゃない。難しいことも分かっているわ。でも、もう少しやりようがあったとも思うの」
クレマチスさんの声はわかりました。今日もですか。
「あー・・・おはようございます」
取りあえず、挨拶をしました。
みんなも会釈してくれます。
本当にあの人は問題しか起こしませんね。
「そうだ。彼女を紹介しておくね」
そう言ってケレーディア先生は一緒に火に当たっていた卵色の女性を紹介してくれました。
「彼女はアリッサ。友人よ」
「よろしくッスね」
「せ、千疋南君です。こちらこそよろしくお願いします」
明るい声でした。褐色の女性。丸眼鏡をしてキャップを逆向きにかぶっています。
「ああ、あなたが水樹の言っていた方ですね」
また水樹ですか。何か言いふらしていないといいですが・・・。
「水樹は元気ですか?」
「はい。色んな仕事をやっていて忙しそうですが、楽しそうでもありますよ」
「そうですか。良かったです」
最後の別れ際にはあまりいい表情をしてなくて心配でしたが、良かったです。話を聞けば聞くほど連絡を取りにくくなりますけど・・・。
「すみません。アンナ・・・ええっと、中で喧嘩している人なんッスけど、アンナとメアリーのせいで外になってしまって・・・」
この人も苦労人なのでしょう。
「いいえ。大丈夫ですよ」
本音を言えば中で温まりたいですが、ここもそれなりに温かいので。
聞き耳を立てていると、ダモクレスの剣の封印や私生活のことでもめているようでした。
そう言えば、ガーネットさんでしたっけ?彼女はいません。中でしょうか。それとも・・・。
焚き火の側に昨日、魔法樹で見た毛布で包まれた何かがいました。もしかして、これがガーネットさん?
「気になります?」と、アリッサさん。
「ええっと、ガーネットさんですか?」
「はい。いつも寝る時は包まってるッスよ」
私達の声が聞こえたのか毛布の包まりがビクッと動いて顔だけが出てきました。
「終わりました?」
欠伸をしています。
私と目が合って挨拶を交わします。
「まだまだッスよ」
「いい加減にして欲しいです。打ち合わせもあるのに・・・終わったら起こしてください」
また毛布の包まりになりました。
「そうね。いつまでもこのままなのもあれだし、止めてこようかな」
ケレーディア先生が腰を上げます。
そして、なぜか私を見て「付いてきて」と言われました。何ででしょう?
「嫌です」
「お願い。いてくれるだけでいいから」
また拒否しようとしましたが、その前に腕をつかまれて引かれます。
変なことに巻き込まれてしまいました。・・・何かさっきまで心を落ち着けていたのが馬鹿みたいです。
「いってらっしゃい」
アリッサさんが手を振っています。
友達である彼女を連れて行けばいいのでは?と、ちょっとだけ思いました。
テントの中には昨日まではなかった正四面体の結界とその前で言い争っているクレマチスさんさんと藤紫色髪の女性がいました。この女性がアンナさんなのでしょう。
「あなた達いい加減にしなさい」
低くて冷たい声でした。・・・付いてこなければ良かったです。
二人は私達の方を見ました。
私はケレーディア先生の後ろにいて先生の顔は見えませんが、二人の表情が固まっていきます。
「メアリー。あなたは散々、人に迷惑をかけているの自覚してる?今回の件だけでどれだけの人が作戦の調整とかしてくれていると思っているの?知らないでしょ?」
「・・・ええ・・・いえ、そうですね。・・・ごめんなさい」
下を向いてしまいました。
大人しいと可愛い女の子です。
「アンナ。世界機関として来ているんでしょう?少し馬鹿にされたくらいでカッとならないで。怒りたい気持ちも分かるけど、全部終わった後でもいいでしょ」
「で、でも、言っておかないとまた自分勝手するし・・・」
「怒るのと叱るのは違うでしょ。区別しなさい」
「・・・はい」
アンナさんも下を向いてしまいます。
「まずは仲直りの握手」
二人とも嫌そうに顔を上げます。
「早くして」
その言葉ですぐに握手しました。
「今はこれで終わり。後は全部片づいてから好きなだけやりなさい。いいね」
二人とも「はい」と不貞腐れたように返事をしました。
そして、アンナさんと目が合ってしまいます。
「そちらの方は?」
「千疋南君です」
丁寧にお辞儀をします。
「そう。千疋さんね。私はアンナ・リーラー。よろしくね」
「はい」
クレマチスさんはリーラーさんに何かを耳打ちします。
驚いた表情をして改めて私を見ました。
「あなた・・・えー・・・水樹の妹の・・・」
もうそれはいいです。
それから、しばらくしてリーレイさんと一緒にペアのヨウエイさん。そして、ミオさんが到着しました。
「おはようございます。ミオソティスです。今日はよろしくお願いします」
テントに入るなり大きな声で挨拶しました。
それぞれ返事をします。
「みなさん。おはようございます。早速で申し訳ありませんが作戦を変更することになりました」
リーレイさんが突然、そんなことを言い出しました。急にそんなことをしていいのでしょうか?
「アンナ・リーラーさん。ダモクレスの剣の管理を任された世界機関所属の魔導師です」
「よろしくお願いしますね」
さっきまで喧嘩していたとは思えないくらいしっかりしているように見えます。
「クレマチスさんの戦闘が失敗した場合、次に彼女にダモクレスの剣を使用してもらいます」
・・・ということは?
「千疋さんは私達と一緒に第二防衛線まで来てもらいます。ダモクレスの剣でも仕留めきれなかった場合、状況を見て魔法を使ってもらいます」
「わ、分かりました」
なんと言えばいいのでしょう?少し死から遠のいただけなのですが心がスッと軽くなった感じがします。もちろん、私の出番まで回ってきたら変わりませんけど。
「それとクレマチスさんとガーネットさん」
「何かしら」
「はい」
「資料は読んでくれましたか?」
ガーネットさんはうなずいて、クレマチスさんは「ええ」と短く返事をしました。
偉いです。ちゃんと読むタイプ。明け暮れのどこかの寝坊助にも見習って欲しいですね。クレマチスさんの変な所は見習わなくていいですけど・・・。
「もし、不測の事態が起こった場合、マニュアルにある花火を打ち上げてください。その瞬間、こちらの作戦を開始します」
結局、手を貸すことにしたようです。
「分かりました。メアリーさんもそれでいいですよね?」
ガーネットさんはクレマチスさんが変な返事をする前に言います。それにクレマチスさんは渋々、承諾しました。
花火を打ち上げたと同時に第二防衛線から遠距離の魔法で牽制して、その間にリーラーさんがダモクレスの剣を発動すると説明されました。その間にクレマチスさんのペアが第二防衛線まで逃げることになるみたいです。
ケレーディア先生がニコニコしながらリーレイさんを見ていました。それに気付いて一瞬だけ不快そうな顔をしましたがすぐに戻ります。
「では、みなさん。よろしくお願いします。頑張りましょう」
リーレイさんの言葉に元気よく返事をしたのはミオさんだけでした。
予告は正しかったようで時間の五分前に神様擬きの用意した魔方陣が動き出しました。
ついに戦争が始まるのです。
「では、作戦通りよろしくお願いします」
ここに残る4人に最後の言葉を伝えてからリーレイさんは車に乗り込みました。
これから第二防衛線まで下がります。昨日の高級そうな車で・・・。他の職員達も乗り込んで広かった後ろ側はギュウギュウです。
「何だか楽しいですね」
無邪気に笑うミオさん。
私はハハハと乾いた笑いをして「そうですね」と返します。
「さぁ、時間がないので行きますよ」
運転手はなぜかリーレイさん。
もう嫌な予感しかしませんでした。
リーレイさんはアホみたいに急発進させました。
それはそれは荒い運転で酔ってしまいそう・・・。これから戦争なのにその前に潰れそうです。
それでも、ミオさんは楽しそうでした。
残ったのは私とペルとアンナ、それに非戦闘員のアリッサでした。
アンナは封印からダモクレスの剣を取り出して、アリッサは空を飛べる絨毯の準備をしています。
私は緊張するペルの背中をさすってあげています。
「大丈夫。何度も練習したでしょ」
「はい」
世界の運命を左右するかもしれない戦いです。
私でも緊張します。ペルの緊張は想像も出来ません。
「ペル、時間よ。急いで」
アンナの声。それに返事をしてから私の方を見ます。
「私、頑張ります。なので絶対に帰りましょうね」
「そうね。帰って美味しい物でも食べに行きましょう」
「はい」
ペルは嬉しそうに笑ってから絨毯に乗りました。
「緊張する?」
アンナがそんな当然のことを言います。
「当たり前でしょう?」
少し睨みつけてやりました。
「大丈夫。私がいるから」
「それが一番不安なの」
喧嘩になると思ったのかアリッサが割って入ってきます。
「こんな時まで馬鹿やんないでください」
アンナの首根っこを掴んで後ろへ退かします。
そして、私を見て「頑張ッスよ」と一言だけ言いました。
「うん」
ゴーン・・・ゴーン・・・。
どこからか鐘の音が響いています。
始まりの合図でしょうか?
「離れましょう」
絨毯が飛んでいきます。
ペルは手を振っていました。私も同じようにしました。
魔方陣が激しく動いて衝撃波を出し、球状でまばゆい光の門が開かれます。
恐らく、なんらかの接続魔法でしょう。もし神の世界のような拠点があるならそこと繋がっているのです。
門からゆっくりとそれが現れます。
宙に浮く100mくらいの黄金に輝く舟。それが10隻ほど。あのどこかに神に力を与えられたカマーランという男がいるはずです。
そして、門から同時に群醜帝と呼ばれるアンノウンが無数に現れます。アンノウンによって殺された元人間達。あっという間に空を覆い尽くしました。
体が震えるのを感じます。これは雪のせいでしょうか?緊張でしょうか?
光の門が閉じる頃には雪が吹雪になっていました。
大きく深呼吸。そして、目の前に広がる神擬きの一団を見上げました。
通信の魔法でペルに合図を出します。
「ペル。始めましょう」
ここに来るまでかなりの時間が経った気がします。初めは十数話くらいで第一章が終わると思っていたのにまだケレーディアでのお話を書いています。
このケレーディアのことは何となくここに入れたかったのです。第0話を書いていた頃から決まってはいました。自己満足で書いていた頃から何度もこのシーンを思い浮かべてはいたのですが、やっぱり言葉にするのは難しくて何度も詰まって何とか言葉にしました。
こだわりと言えばいいのでしょうか?何となくこれはこう。っていうのがあります。もう1つの花の標と蝶世界に出てくるユメさんも名前を変えようとしましたが、ずっとユメで考えてきたので変えませんでした。そういうのがたまにあるので変な感じがするかもしれません。文章も下手さも含めて大目に見てください。




