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クムパプユアネ_World:M  作者: 浮巣つぬ
明け暮れ
22/49

16

 私、逆井柊は待機室のソファーの上でグッタリとしていた。

 夜勤明けで寝不足なのだ。

 まかさ、一晩で2回も起こされるなんて・・・。

 普通なら午前中はお休みをもらえるらしいけど、今日は真也も小禄も外に出ていて、午前中は私と海帆、夜々で何とかしないといけない。

「大丈夫?」

 夜々は私の頬を指で突きながら聞いてきた。

「大丈夫に見えますか?」

「見えない」

「そういうことです」

 もう本当に動きたくない。2人が戻ってくるまで何もありませんように・・・。

「・・・そう言えば、海帆は?」

 寝たり起きたりを繰り返している間にいなくなっていた。

「何か提出する物があるとかでどっか行った」

「・・・そう」

 触れてないから何を考えているのか分からない。変なことをしていなければいいけど。

「何か飲む?」

「飲む。ココア」

 棚からマグカップがやって来てくる。

 夜々がインスタントの粉を入れて魔法でお湯を入れてくれた。

 私は起き上がって受け取り、夜々は横に座る。

「南君。大丈夫かな?」

 夜々は足をパタパタさせながら言う。

「ん?まぁ、うまくやるんじゃない?」

 別に信頼している訳じゃないけど、何ごともなく戻ってきそうな気がする。南君はそういう奴だ。

 ココアに口を付ける。

「すぐそういうこと言うんだから」

「今は海帆の方が心配」

 海帆はコソコソと何を企んでるんだか・・・。

 そんなことを言っていると海帆が戻ってきた。

「お帰り。何か飲む?」

「えーと、コーヒーをお願い」

 椅子を魔法でこっちに寄せて座る。

「どこ行ってたの?」

「秘密。そうそう、途中で会った魔法隊の人からこれを頼まれたんだけど・・・」

 何かの封筒だった。

 中には一枚の用紙が入っていてる。

 私達へ非公式の嘆願書だ。

 面倒くさいけど、目は通しておかないと後がさらに面倒くさいことになる。

 魔法少女スピカ。その子に声かけをして欲しいというものだった。

 数ヶ月前からたまに現れてヒャッハーな連中やアンノウンを成敗して消えていく謎の魔法使い。

 それだけなら正義の味方ってことでいいのだけど、彼女は魔法使用の許可を取っていない。

 魔法隊も声かけして魔法使いとして登録してもらおうとしているんだけど、逃げられて問題になっているらしい。

 ただこの活動自体は魔法隊の助けになっているため、黙認している人達もいるみたいな話を聞いたことがある。

 送り主はそんな現状が嫌なのだろう。

 たぶん、送り主は東島の魔法隊かな。あっちは色んな派閥があるから。

 魔法隊の仕事なんだけど、無駄に問題を大きくしたい輩がよく明け暮れへあの手この手で無茶なお願いをしてくるのだ。

 この忙しい時期に。空気を読んでほしい。

 受け取ってくれそうな海帆に渡したんだろう。

「この件は魔法隊の仕事。余計なことはしなくていいよ。真也も言ってたで・・・ん?」

 二人はキョトンとした様子で私を見ている。

「え?・・・何?」

「珍しくちゃんとした言ってると思って」

 夜々もうなずく。

「え?私を何だと思っているの?」

 ・・・こいつら失礼だな。




 魔法少女スピカさんは見た目は10歳くらいの子供で真珠のような綺麗な長い髪をしています。

 お洋服もフリフリで詳しくないですが、アニメの中から出てきたような可愛さです。

 ステッキと呼ばれる柄の長い杖を使って戦うなどは分かっていますが、どこの誰だかは全く分かっていません。

 それが問題なのです。見ず知らずの魔法使いが攻撃魔法を使うのは問題で治安を守るような活動をする場合は登録をして活動申請しなければなりません。それをやっていないのです。


 それはそうと、今日はよく行く喫茶店パールの定休日。

 真也さんと小禄が戻ってきたので入れ替わりで私達は少し離れた場所にある飲食店で食事をすることになりました。

 柊と夜々には先に行ってもらって、私は用事を済ませてからお店へ向かっています。

 西地区の町外れにあるお店で柊の家の近くらしいです。

 中央から離れて木々が目立ち始めた町を進んでいると、何やら大きな音が聞こえました。何かが起こっているみたいです。

 そちらの方へほうきを走らせます。

 そこではヒャッハーな人達と魔法隊の人達が戦っていました。

 でも、連絡が入っていないと言うことは魔法隊の仕事なのでしょう。

「おや。水浦さんではありませんか」

 近くの民家の屋根からその戦闘を眺めている人がいました。

 鉄線(てっせん)さん。

 茶色っぽい髪を長く伸ばしている男性です。

「こんにちは。見ていていいんですか?」

 何人か怪我人も出ているようですけど・・・。

「ええ。後輩達の訓練も兼ねてますから。手は出さないでくださいね」

「はぁ」

 それでいいのでしょうか?

 ちょっとずつヒャッハーな人達が優勢になっていきます。

 何かこれを見ているのはもどかしいです。私なら一瞬で・・・。

「そこまでです」

 妙に通る幼い声。

「真っ暗な闇を照らす。みんなの希望の真珠星。魔法少女スピカ、参上」

 噂の魔法少女でした。

 それとほぼ同時に謎の集団が走ってきました。

「頑張れー、スピカちゃん」

「今日も可愛いよ」

 この状況でよく分からない応援を始めます。

 頭がおかしくなりそう。

 彼らはスピカさんのファンらしく、幼女センサーによって駆けつけて応援を始める迷惑集団です。

「なんだ?テメーら?」

「お前らやっちまうぞ」

 ヒャッハーな人達が奇声を上げながらスピカさんに襲いかかります。しかし・・・。

「スピカ・サンダー」

 ステッキから電気が放たれて、簡単にヒャッハーな方々は全滅してしまいました。

 ・・・さっきまでの魔法隊の戦闘は何だったのでしょう。

「いやー、すごいですねー」

鉄線さんは拍手しています。

 目の前で違法行為が行われているのに動く気はないみたいです。

 ため息を吐いてから「ちょっと行ってきますね」と伝えてスピカさんの元へ下ります。

 ダメなことはダメです。声かけくらいしてもいいでしょう。

 鉄線さんの止めるような声がした気もしましたが、無視しました。

 ヒャッハーな人達を倒して大きく深呼吸するスピカさんに声をかけます。

「こんにちは」

 スピカさんは私の顔を見て、一瞬だけ驚いたような表情をしてすぐに笑顔になりました。

「こんにちは」

 やっぱり可愛らしい女の子の声でした。

 こんなに強い少女がこの国のどこにいるのでしょう?噂くらいは耳に入りそうな気がしますが・・・。

「スピカさんですね。初めまして。明け暮れに所属している魔法使い、水浦海帆と言います」

 証を出して見せます。

「何かご用ですか?」

 かなり警戒している様子。逃げられないように注意しないと・・・。

「はい。スピカさんは魔法の使用登録をされてませんよね?」

 スピカさんは視線をそらして黙ってしまいます。

「この国では登録は必須です。魔法省で申請をお願いします」

 言い訳を考えているのでしょう。魔法隊なら逃げれば済むかもしれませんが、私は逃がしません。

「これ以上、スピカちゃんをいじめるな」

 ファンの一人が声を上げ、そうだそうだ。と、私とスピカさんの間に入ります。

 どうしてこの人達は妙に必死なのでしょうか?

 ため息が出ます。

「明け暮れの仕事を邪魔するのであれば、あなた達も拘束することになります。下がってください」

 杖を向けると、ファン達もなぜか杖を出して戦う気です。

 なぜでしょうか?全く理解が出来ません。

「止めてください」

 スピカさんは前に出ます。

「たしかに今はしていません。でも、準備が終わったら必ずします。それまでの活動も控えます。なので、今回だけは見逃してくれませんか?」

 何を言っても返答は決まっています。

「ダメです。決まりなので」

 それに前例を作ってしまうのもよくありません。

「そうですか。なら、仕方ありません」

 ステッキを掲げました。

「スピカ・フラッシュ」

 強い光の目くらましです。

 その隙に逃げるつもりでしょう。

 でも、その程度のことは普通に考えられることです。

 目を閉じていても空間把握の魔法を使えば正確に位置を知ることが出来ます。

 スピカさんを重力魔法を使って地面に落としました。怪我をしない程度に押さえつけます。

 魔法は強力ですが、使い方は素人のようですね。ここまで逃がし続けた魔法隊は一体何をしていたんでしょう?

 念のため、魔法の糸で拘束します。

 少し眠らせて魔法省へ運びましょう。

「な、何をしているー」

「やっちまえー」

「スピカちゃんを守るんだ」

 さっきまでのヒャッハーな人達と同じようなことを言っています。

 そして、杖を持っているのに魔法を使わずになぜか突進してきました。本当に訳が分かりません。

 気絶させる程度にしておきましょう。

 杖を向けます。

 その時です。

「スピカ・リセット」

 その一言で重力魔法は解除され、魔法の糸も無くなりました。普通はそんなこと出来ないはず・・・。

 ファンの人達も驚いて止まっています。

「みんな、ありがとう。スピカ・スモーク」

 辺り一帯にピンク色の煙が立ち込めます。

「待ちなさい」

 風魔法で煙を払うと既に遠くまで飛び去っていました。

 すぐに追いかけようとするとファンの人達が間に入って妨害されます。

「止めるんだー」

 それぞれが魔法を使ってきました。

 指を二回鳴らします。その音をトリガーにして風の見えない壁を作って攻撃を防ぎます。そして、電気を発生させる魔法のお札を使い、ファンを一掃しました。

 スピカさんの方を見ると、もう追いつけなさそうな距離でした。

 でも、諦める訳にはいきません。

 杖を向けます。少し危ないですが打ち落とせばいいのです。

「海帆」

 その時、私を呼ぶ声がしました。柊です。

「柊。どうしてここに?」

「海帆が魔法を使ったのを感じたんだよ」

 夜々も来ていたみたいで「水よ」と唱えて水の針をスピカさんに向けます。しかし、それらはすぐに柊に消されてしまいました。

 柊をにらむ夜々。

「柊。何のつもり?」

「たしかにそれも大事だけど、今はそこら辺に転がっている奴らを何とかしないと」

 地面には何人もの人が転がっていて異様な光景になっていました。

「見逃せって言うの?」

 柊は鉄線さんの方を見る。

「そっちに任せるよ。魔法隊の・・・」

「鉄線です」

「そう。鉄線さん」

「ええ、いいですよ」

 そう言って手を叩く鉄線さん。

「飛べる者は彼女を追いなさい。他は倒れている人の対応をしてください」

 ボロボロの魔法隊の人達は返事をしますが、元気はもうなさそうです。

 数名の魔法使いが飛び始めますが、もう追いつけないでしょう。

「大事な時期なんだから無理するなよ」

「・・・ごめん」

 結果としてスピカさんを逃がして仕事を増やしてしまいました。南君さんがいたら怒られていますね。


 夜々が浮かせて気絶した人をトラックへ積んでいきます。

 事態は思ったよりも早く収拾しました。

「後はいいかな?魔法隊さん」

 柊はまだ屋根の上にいる鉄線さんに言いました。

「大丈夫ですよ。ですが、名前を呼んでください。鉄線です」

「へいへい。任せたよ」

 そして、肩を組んできました。

「もう席は取ってあるから早く行こう。もうお腹ペコペコだよ」

「うん。ごめんなさい」

 こんなに失敗したのは久し振りです。焦りすぎていたのでしょうか?本当に私は・・・。

「海帆は間違ってなかったよ。次、頑張ろう」

 夜々はいつも励ましてくれます。それがいつもより温かく感じました。

「ありがとう」

 二人の手を握ります。どうしてそんなことをしたのかは分かりません。でも、少し強く握ってしまいました。


 私は現場から去っていく三人の様子を眺めている。いや、正確には一人を睨んでいる。

 逆井柊。

 本当に厄介な奴だ。

 あの女の力のせいで私達の正体に気付かれ、弱味を握られてしまった。

 本当に憎たらしい。あいつさえいなければ、今頃は・・・。




 食事を終えて三人で明け暮れへ戻っている時に連絡が入りました。

 スピカさんは取り逃がして、ファンの人達には厳重注意。ヒャッハーな人達はギフトを使用していたので専用の施設に送られたみたいです。

「いやー、たまには足を伸ばしてみるもんだね。美味しかった」

「そうだね。たまにはこういうのもいいかも」

 二人は楽しそうに会話しています。

「海帆は?」と、夜々。

「うん。美味しかった。それにだいぶ落ち着いた。二人ともありがとう」

 夜々は安心したように笑っていて、柊はこっちを見ずに歩いています。

 柊は恥ずかしいのでしょう。

「そうだ。二人とも」

 話をそらすように口を開きました。

「いいこと思いついたんだけど、協力してくれない」




 今日の仕事を終えたクモに近い形をした魔術機巧がガラス戸をコツコツ叩く。

 窓を開けてあげると、入ってきて魔力を補給する装置の上で眠ったみたいに停止する。

 これを通じて姉貴の戦闘を監視して撤退などの指示を出している。

 今日は本当に危なかった。まさか、海帆が出てくるなんて・・・。

 裏口の鐘が鳴る。

 姉貴も帰ってきたみたいだ。

 様子を見に行くと床に寝転がっている。まだ魔法少女の姿だった。

「お帰り」

「ただいま・・・生きた心地がしなかった。海帆ってあんなに強いの?」

 変身が解けていつもの姉貴に戻る。

「当たり前でしょ。明け暮れの仕事を杖一本で2年も怪我無くやってるんだ。俺でも勝てないよ」

「そうなんだ・・・ここに戻ってこれたのは奇跡かもね」

 ゆっくりと起き上がって背伸びをする。

 今回の活動は突然のことだった。いつもはやる数日前とかに言ってくれる。

 姉貴はこの前の真也とのやり取りで何かしら思うことがあったのかな。

 きっと少しでもみんなの負担を減らしたいとか思ってたんだと思う。姉貴はそういう人だ。

「姉貴。しばらく大人しくしない?俺も忙しくなるから何かあったらフォロー出来なくなる」

「・・・そう。分かった」

 声はとても小さかった。

 落ち込んでたりしてないといいけど・・・。でも、それはいらない心配だった。

 姉貴は顔を叩いて大きく息を吐く。

「私の分まで頑張りなね」

 いつも通りの姉貴だった。

「うん。任せて」

「・・・それにしても、いつも現れるあの人達って何者なんだろうね?」

「まぁ、ほっといていいんじゃない?応援してくれてるだけだと思うから」

 厳重注意の件は黙っておこう。姉貴がショックを受けるといけないから・・・。

 魔法少女スピカは最初、自己満足小説の学園のもので考えていた登場人物です。クラスのみんなに秘密で活躍する真珠という少女のお話でした。ギュッと詰め込む時に魔法少女という設定は絶対に残したいな。と思って今の形になりました。この後、魔法少女スピカはどうなっちゃうのか最後まで決まっています。たまに登場すると思うのでよろしくお願いします。

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