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クムパプユアネ_World:M  作者: 浮巣つぬ
明け暮れ
21/49

15

 ここはケレーディアの首都であるアーユスからだいぶ離れた森の中。

 木から木へと飛び移りながら目的地へと向かっていた。

 ここまで離れると雪雲はなくなって、いつもの暑いケレーディアになる。飛び移っているだけなのに汗がにじむ。

 目的地である家には何にも目印のない。

 何となく高い木に登って探したりする。

 煙が見えたら助かるんだけど今回は見つからない。この時期はどこもかしこも緑が茂っていて、さらに見つかりにくくなっている。本当にダルい。

 しばらくしてからやっと見つけた。

 この国の大魔導師が住んでいる家だ。森にうまく溶け込んでいる。だから、見つけにくい。

 ケレーディアの守護獣に認められたその偉大な魔導師は庭で日向ぼっこをしていた。

「よう。久し振り」

 私の声に気が付いてゆっくりと顔を向けられる。

「おお、カプレか。久しいな」

 白髪の老人で髪の毛が少し後退している。

「そうだね。お酒を飲みに来た」

「そうか」

 のっそりと腰を上げて玄関へ歩き出す。

「やれやれ。ケレーディアの一大事に呑気な奴じゃな」

「大魔導師様も一緒でしょ」

 家に入ると浮遊魔法で既に準備が始まっていた。テーブルにグラスが置かれたり、棚からお酒やおつまみがやってくる。

 それをを杖を振らずにやっている。もちろん、呪文を唱えることもない。きっとすごいことなのだろうけど、慣れてしまった。それにお酒を飲みたいだけの私はそんなに興味ない。

 最初に注がれたのはビールだ。それもいい感じに冷えている。魔法で冷やしてくれたのかな。

 暑いのもあってゴクゴク飲む。とても美味い。

「やれやれ。ペースが早過ぎないか?」

 とか言いつつ、空になったグラスに注いでくれる。

「そんなことするからドンドン飲んじゃうんだよ」

「若い証拠じゃな。ワシ一人じゃとなかなか減らないからのぅ」

 ハッハハと笑う。

 大魔導師様は丸まった握り飯を食べながら飲んでいた。

 私はまだ2杯目なのに少しポワポワしてくる。

 ちょっと調子に乗り過ぎたかな?

 明日のこともあるから程々で止めておこう。

「今回はどこを旅しておったのじゃ?」

「ん?パーダマーヤ」

 メアリーが女王様になったウディンコンティア。その北にある国だ。東側は砂漠地帯で西側にはジャングルが広がっている。

「また危ない国に行きおって。あそこは今は緊張状態だったじゃろ」

「砂漠地帯はそうだね。何も無かったからさっさとジャングルの方へ行ったよ」

 ヘンテコな遺跡や自然の生み出した絶景を見て回っていた。

「やれやれ。あまりエイルに心配をかけさせるな」

「へいへい」

 グラスが空になった。次は何を飲もうか?

 ・・・そういえば、大魔導師様はあのこと知ってるのかな?

「ねぇ、アーユスで雪降ってんの知ってる?」

「知っておる。ルミナがやったようじゃな」

 なんだ知っているのか。

「話は聞いていたけど、ルミナの奴ヤベーな」

「そうじゃな。たまにルミナのような人間では考えられない規模の魔法を使う者が現れるんじゃよ。神を自称するあの者らもその力が欲しいのかもしれないな」

 エイルの奴はあのイカれた変人をどうやってペアにしたんだろう。

 あいつらはペアになってから長いらしい。私がここに所属した時にはもうなっていた。

 ルミナのことを聞こうとすると、きっとからかわれるから絶対にしないけど・・・。

 その時、玄関のベルが鳴った。

 こんなとこに誰が来るんだ?

 大魔導師様も「珍しいのぅ」と言いながら立ち上がる。

 何となく嫌な予感がした。

 大魔導師様が扉を開けるとすぐにそいつと目が合った。


「・・・見つけた。裏切り者」

 リーレイだった。たしか今は世界機関の魔導師なんだっけ?

「おお、君か。ここがよく分かったなぁ」

 感心している大魔導師様。

 そんな大魔導師様を薄汚いじじいを見るような目で見ている。

「どちら様ですか?」

 気がついていないみたいだ。大魔導師様はずっと代役を立てているから面識がないのかな?

「ワシは・・・」

 大魔導師様が言いかけると「ちょっと待ってください」と止める。

 すごく悩んだ顔で大魔導師様を見ている。

「そんなにじっくりと見つめられると照れるのぅ。ホッホホ」

 何言ってんだ?このじじい。

「もしかして、ケレーディア代表の・・・」

「ああ、そうじゃ。よく分かったな」

 口をパクパクさせて動揺している。何で?

「まぁ、落ち着け。どうじゃ?一杯」

 グラスを渡そうとする。

 一緒に飲もうとしているのか?

 嫌だ。と視線を背中に送る。気付かないと思うけど。

「い、いえ、戒律でお酒は飲めないんです」

 そんなことを言っていい子ぶっている。

 私はクンクン臭いをかぐ。鼻がよく利くのだ。

「タバコの臭いがするけど、それも戒律で禁止じゃなかった?」

 あおる様に言ってやった。

 それを聞いて顔が引きつっている。

 ・・・リーレイも息抜きが出来るようになったんだな。

「分かりました。一杯です。一杯だけです。それが終わったらあなたを捕まえます。シンホァン」

 指で指される。あまり好きじゃないんだけど・・・。

 でも、私は何も知らなかった。リーレイが驚くほどお酒に弱かったことに・・・。


「シンホァン。何でいなくなちゃったんですかーーー」

 リーレイは泣いていた。

 まだ1杯目なのにこんなになるか?普通。

 タバコは吸ってたけど、お酒は飲んだことないとかあり得るのか?

 いや、あり得そうな気がしてきた。酔ったら隠せないし・・・。

 候補生が酔ったなんてバレたら四天王に大目玉を食らうだろう。

 私にすがりつきながら泣いているので涙やら鼻水やらで服が大変なことになっていると思う。どうなっているのか怖くて見ていない。

「シンホァン。私、何か悪いことしましたか?」

 無視しながら飲む。楽しいハズだった時間が台無しだ。

「まぁまぁ、落ち着け。ほれ、もう一杯」

「うぅ・・・ありがとうございます」

 大魔導師様。この状況を楽しんでない?

 注がれたお酒を一気に飲み干し、グラスを強めにテーブルに置く。

「そもそも世界機関も世界機関だよ。若手の私にこんな仕事ばっかり押しつけて、成功すれば世界機関の手柄で失敗すれば私の責任とか言われるの。本当にやってられないよ」

 今度は怒り始めた。

 私は何となくおつまみの乾燥肉を食べた。

「いざ、派遣されたら外国の魔導師は出てけとか誇りがどうたらこうたら言って妨害してくるんだよ。それでいて、神様が侵攻してきたら何も出来てないの。町は壊されて、国民も派遣された魔導師もたくさん死んで最後は支援が足りなかったって言われるんだ。もう・・・本当に・・・嫌になちゃうよ」

 そして、シンホァンと弱々しく名前を呼ばれる。

 リーレイの方を見た。服はまぁ・・・すごいことになっていた。

「仙人界に戻ってきてよ。私も頭を下げるから・・・。謝ればみんなも長老様もきっと許してくれると思うから・・・だから・・・また・・・一緒・・・に・・・」

 バタッと倒れる。寝てしまったみたいだ。

「面白い子じゃな」

 冷たい目で大魔導師様を見た。

「本気で言ってる?」

 うなずく大魔導師様。

 きっと老眼だな。

 こいつをどうするか。大魔導師様に任せる訳にもいかないしな。

 ・・・連れて帰るしかないのかな。

「さて、どうするかのぅ」

 魔法で椅子に座らせて、布をかけてあげている。

「もう少し飲んでから帰ろっかな。高いヤツないの?」

「お主は高い酒を水のように飲むじゃろ?自分で買え」

 ちょっと前に高い酒を片っ端から空にしたことを根に持たれているのかもしれない。

 国を代表する魔導師なんだからその程度のことは気にしないで欲しい。

 代わりに色んなお酒が出てきた。どれも開いている。

「取りあえず、お主が中途半端に開けていったやつを飲め」

 ・・・何か美味しくなかったのもあるんだけどなぁ。まぁ、タダ酒だから仕方ないか。



・・・・・



 あれから激しい逃走劇が繰り広げられました。というか、なぜ追われていたのかも分かりません。

 エイルさんと合流して助けてもらうまで続きました。明日は戦争なのに何をしているのでしょう・・・。いえ、今さらですね。こっちに来てから緊張感のないことばかりでした。

 あれやこれやしている間に辺りは暗くなってきて今になります。

 私、千疋南君はエイルさんと二人でテントにて雑談をしていました。

 今日の晩ご飯はエイルさんが美味しいお店に連れて行ってくれるそうです。

 周辺の町は避難などでお店が開いていないので少し離れた所にあるお店になりました。味はかなりのものだそうです。

 ここまで色々とありましたが楽しかったような気がします。不安なんて忘れてしまうくらいに。戦争の前にこんな気持ちはおかしいとは思いますけど。

 そろそろお店に行こうとしていた時、外が何やら騒がしくなります。

「何かあったんですかね?」

「行ってみましょう」

 外では世界機関の制服を着た魔導師、数名が女性を囲んでいました。

 初めて見る方です。

 猩々緋(しょうじょうひ)の色をした髪で背は高め、格好いい系の女性です。舞木みたいな感じの方でした。

「カプレ?」

 エイルさんは知っているようです。

「よう、エイル。助けてくれよ」

 カプレさんは困った様子です。そして、背中にはリーレイさんがいました。寝ています。

「何したの?あなたまで問題を起こさないでよ」

 エイルさんはため息を吐いて、頭を抱えています。

「私は何もしてないって。酔い潰れたこいつを届けにきただけだよ」

 背中のリーレイさんを見せてアピールする。

「お前、リーレイ様に何をした?」

 カプレさんを囲う彼らは何やら構えています。

「だから、何もしてないってば」

「むにゃむにゃ・・・エヘヘ・・・シンファン・・・ここではダメですって・・・むにゃむにゃ・・・」

 リーレイさんはなんか言ってます。良い夢を見ているんでしょう。

「何をしている?」

 そこにヨウエイさんが現れました。

 ヨウエイさんはカプレさんとリーレイさんに気が付くと、頭を下げます。

「お久しぶりですね。シンファン様」

「ああ、ヨウエイか。図体は大きくなったな?今はどこら辺?」

「候補生になりました。リーレイさんの指導のお陰です」

 何か身内の話が始まりました。

「へー、頑張ってんじゃん。ん?と言うことはリーレイが今の四天王?」

「はい」

 ヨウエイさんにリーレイさんを渡しています。

「私がいない間もみんな頑張ってるんだな」

 そんなことを言いながらリーレイさんの頭をなでていました。

「ヨウエイさん。そいつは裏切り者ですよ。捕らえるか殺すかしないと・・・」

「止めておけ。我々では返り討ちになるだけだ」

 リーレイさんをお姫様抱っこしながらテントへ歩き出しました。

「しかし・・・」

「今は明日のことだけを考えろ」

 魔導師達は悔しそうな顔をして、ヨウエイさんの後に続いていきます。

 カプレさんはその後ろ姿に手をフリフリしていました。

「何してるんじゃい」

 ポカッと杖で頭を叩かれています。

「痛いな」

 頭をなでながらこちらを見ました。

「また飲みに行ったんでしょう?」

「・・・バレたか」

 怒られている様子ですが反省はしていないみたいです。

 エイルさんは今朝のルミナさんのように襟をつかみ、引きずってどこかへ連れていくつもりのようです。

「どこへ連れてってくれるの?」

 引きずられながらも余裕の表情です。

「お父様とお母様の所よ。二人ともかなり怒ってたからね。ケレーディアから勝手にいなくなって、今日は大魔導師様に迷惑かけたみたいじゃない」

 余裕の表情が一瞬で青ざめます。

「それはちょっと違う。大魔導師様は飲み友だから迷惑かけた訳ではないよ。だから・・・嘘でしょう?」

 ケレーディア先生のご両親はどれだけ怖いのでしょう。

「そこの人、助けてくれない」

 バタバタ抵抗しています。意味はなさそうです。

「すみません。よく分かりません」

 巻き込まないで欲しいです。ここの公認魔導師は人を巻き込むのが好きなんですかね?

「そんな・・・」

「千疋さん。レストランで待ち合わせにしましょう。ちょっとこの馬鹿を送ってくるから」

「はい。分かりました」

 酔っ払いがいて、怒られる大人がいて、ハチャメチャな女の子がいる。

 この国はとても平和なのですね。うんうん。いいことです。

 ・・・なんだか面倒臭くなったのではないですよ。



・・・・・



 声が聞こえる。

「・・・レイ・・・マ。・・・リーレ・・・」

 私の名前だ。

 意識がハッキリしていくにつれて頭痛と倦怠感が強くなっていく。

 何がどうなったんだっけ?たしか・・・シンファンを追ってて・・・。

 ぼやけた視界。光が複数に見えて少しずつ焦点が定まる。

「リーレイ様」

 リスンバルの門下生達が私を心配そうに覗き込んでいた。

「イッテテテ・・・」

 上体を起こす。

 二日酔いってこんなにヤバいの?こんなことになるなら吸っている方がマシだな。

「リーレイ様が起きました」

 門下生の一人が叫ぶとヨウエイが部屋に入ってくる。

「リーレイ様。起きましたか」

「ごめん。今はどういう状況?」

 ヨウエイから状況を教えてもらった。

 計画通りにやるべきことは終わったらしい。

 私が寝ている間に・・・ここに来てからダメダメだな。

 でも、まだ後一つ。あれが到着していない。

 そんなことを考えているとちょうど端末が鳴った。

「はい。こちら、リーレイ」

 それはあれが到着した連絡だった。

 時刻は夜の0時過ぎ。予告の日だ。

 こんなにギリギリまで禁術を寄越さないとは・・・。

 ・・・本当に嫌になるな。




 ダモクレスの剣。

 その魔法の歴史は古く、最初に使われたのは新暦が始まって10年しないくらいだと言われています。

 都市1つを灰にするその魔法は数百年というかなり長い期間、戦争やテロで使われてきました。

 その結果、禁術に指定されました。

 禁術というのは世界機関が定めた世界に多大な影響を与える通常魔法のことです。

 旧暦の神話や伝説、お伽話などから名付けられています。最近は傾向が変わってきていて、魔法の発明者が名付けるようになりました。

 この通常魔法は後に出てきた魔法によって使用することはほぼなくなったのです。

 しかし、再び注目されることになります。

 3年前、世界機関が100枚のダモクレスの剣を兵器として所持することが決まったのです。

 そして、それは世界中を震え上がらせることになりました。


 飛行機を降りた瞬間、冷気が体を震わせる。

 聞いてはいたけど、本当に雪だなんて・・・ルミナは本当に何をしているの?

「うわっ、寒いッスね」

 私とペアを組んでいるアリッサも同じ反応をする。

 私達は例の物が入っているアタッシュケースを運ぶ仕事を任されているのだ。

 アタッシュケースはとても軽い。まぁ、当たり前か。たった1枚の紙なんだから。

 世界機関の職員とエイル、問題児のルミナが出迎えてくれていた。

世界機関(パドマ)三十人議会ウディンコンティア代表アンナ・リーラーです。ただ今、到着しました」

 ケレーディアのお話を書いていてリーレイさんで一話、区切れるなと思って5つに分けたのはいいですが、別にリーレイさんを掘り下げる必要無かったのでは?と書き終えてから思いました。予定ではここが終わったらしばらく出てこないと思いますし・・・。

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