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遠くの空が赤らんできました。
白い息を吐きながら、飛行場へと向かっています。
今日は世界機関が用意してくれた飛行機でケレーディアへと向かう予定です。
人生で初めての飛行機。これから死ぬかもしれない戦場へ向かうはずなのになぜか少しワクワクしていました。
紗倉見から出るのも初めてで色んな初体験が重なっているからでしょうか?
あれですよね。フィッシュオアビーフとか聞かれるんですよね。ドラマか何かで見たことがあります。
・・・冗談です。浮かれている暇はありません。これは旅行ではなく仕事なのです。
せっかくの海外。ちょっとくらい観光してもいいと思うんですけどね。
仕事の予定はびっしり詰まっています。自称神様との戦闘の前も後も・・・。
飛行場へ着きました。
この後は指定された部屋で魔法隊の方と合流・・・おや?
見覚えのある顔がいます。
この寒い中、缶コーヒーを飲みながら立っていました。
きっと私を待っていたのでしょう。
顔が緩んでしまわないように軽く叩いてから彼女に近づきました。
「おはよう。舞木」
チラッとこっちを見て空に視線を戻します。
「・・・うん。おはよ」
素っ気ない感じでしたが挨拶してくれました。
無視する日もあるのに今日は槍でも降るのでしょうか?
「ここで何してるの?」
「・・・散歩」
顔が引きつりました。
素直に見送りに来たと言えばいいものを・・・。
色々あったとはいえ、もっと普通に話せないのでしょうか?
このままではこんな感じの会話が続くことになります。
ここで話すのも嫌なので手を引いて、指定された部屋へ連れていくことにしました。
寒い冬の朝にこの人は何をしているのでしょうね。本当に不器用なんですから。
待っていた魔法隊の人達に事情を話すと「終わったら呼んで下さい」と言って部屋から出てくれました。
変な風に思われてないといいですが・・・。
搭乗の予定時刻までまだ時間があります。それまでなら大丈夫でしょう。
舞木は飛行機が見える窓から外を見ていました。
二人っきりなのに視線すら合わせようとしません。
仕方ないので私から話しかけました。
「明け暮れにスパイでもいたのかな。出国のことを知っている人は限られてるけど・・・」
どうせ、柊の仕業です。
舞木は黙っています。本当に何しに来たんでしょうね。
舞木に詰め寄ります。
「会いに来てくれたんでしょ?」
向かい合うように舞木の体を引きました。
ようやく、口を開きます。
「勝手に死なれるのも嫌だから・・・顔を見に来ただけ・・・」
なんだか私が死ぬ前提のような言い方に少しだけムッとしました。
でも、そう考えてしまうのも当然だとも思いました。
「そんなこと言わないで。私は強いの。知ってるでしょ?」
「うん。知ってる」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でした。
舞木は何を言おうか迷っているんだと思います。
私達は傷ついて支え合うことも出来ずに別れたのです。
ペアが解散した時からまともに話したことは少ないですし、話さなければならないことも何一つ話していません。話したいことはいっぱいあるのに・・・。
「・・・そう言えば、海帆さんは?」
このままではマズいと思ったのでしょうか?でも、数ある話題の中でそれとは・・・減点対象ですね。
「海帆は関係ないでしょ」
「置いてきたんだ。無理矢理にでも付いてくると思ってた」
まぁ、私もそうするだろうなと思ってましたけど・・・。
「昨日、油断させて眠られたの。きっとまだ夢の中じゃない?」
えぇ・・・。とドン引きしていました。
「帰ってきた時のこと考えてる?」
「・・・なんとかなるでしょう」
正直、無事に帰ってきたとしてもその後が怖いです。
・・・それにしても、あの舞木が会いに来てくれて、会話を続けてくれようとしてくれています。
こんな時でなかったらとても嬉しいのに・・・。
でも、こんな時だからこそなのかもしれません。
・・・もしかしたら、多少のお願いは聞いてくれるかもしれません。
「ねぇ、手を握ってくれない?」
手を差し出します。
「・・・嫌だ」
「何しに来たのよ。まったく」
無理矢理に指を絡めて、窓まで押します。
抵抗はされませんでした。
「久し振りね。こうやって手を握るのも・・・」
舞木は小さくため息。
「・・・そうだね」
この3年間は本当に長く長く感じました。
違う道を歩いていても同じ時間を生きている。
今はそれが幸せなのです。でも、欲を言えば、前みたいに・・・。
思い切って抱きついてみます。
また、抵抗はされませんでした。
舞木の心音が聞こえます。
それ以外の音が止まったかのように感じました。
まるでこの世界にいるのは私達だけかのように・・・。
その時間はとても長くて、とても短くて、・・・そんな矛盾した時間を過ごしました。
どのくらい経ったのでしょう?
ノックの音がして外から「時間です」と声が聞こえます。
特別な時間はここまでのようです。
「分かりました」
返事をして、舞木から離れました。
「・・・満足した?」
「全然してない」
舞木に顔を向けると、彼女は真っ直ぐ私の目を見ています。
そんな彼女を見るのはペアを組んでいた時以来でした。
「いってらっしゃい」
きっと私の顔は緩んでしまっているでしょう。
「いってきます」
お話を追加してやっぱり止めて、分割することにしました。
出来る限り一話ずつでまとまるようにしているつもりです。まとまってないと思いますが・・・。
もっと更新出来るように頑張りたいです。




