さらばInternetExporer。IEの戦士たち
多くのWindowsユーザーに使われていたInternetExplorerは、2022年6月で終了となる見込みです。
ミカンの木がたくさん生えた森がある。まっしろな花が咲きほこっている。
小さなタヌキくんと、頭に王冠のようなものを乗せた白いおサルさんがいる。
二人の間にあるお皿には柏餅と笹だんご、それに粽がのっている。
湯呑から湯気がただよっている。
どちらも魔法の鏡を持って、別の世界の『小説サイト』を映し出していた。
「子狸くんが使っている鏡では、小説を読むときにGoogle Chromeを使っているよな」
「そうなの。んとね。この小説がある世界では、Google Chromeが一番流行っているかも。スマートフォンと連携しやすいみたいなの。白猿さんは?」
「おいらはInternetExplorer、略してIEを使ってるぞ」
「え? まだそれ使ってるの? あっちの世界では、以前はそのIEが一番使われてたこともあったみたいなの。でも、もうすぐ使えなくなるの」
「そうみたいだな。いつまでだっけ?」
子狸くんは自分の鏡を操作して、とあるWebサイトを白猿さんに見せた。
IEのサポート期限のことが書かれている。
「んとね。Windows11ではもう使えなくなっているの。Windows10の一部では5月に、最新のWindows10でも6月にサポート終了になるの。それ以降はIEを動かそうとすると、Edgeというブラウザが立ち上がるの」
「とうとう終わっちゃうのか。おいらはIEのバージョン1から使ってたから少し寂しいな」
「白猿さん。IEのバージョン1ってどんな感じなの?」
「これを見てみな。おいらが活躍する童話を書いた作者のWebサイトだ。サイトを作ったばかりの頃だって」
「へ……平成7年って僕はまだ生まれてないの」
「なろうの若手の読者も生まれてないかもな。ちなみにおいらは2千歳超え」
「この時代のWebサイトって、えらくシンプルなの」
「うんにゃ。当時でも、もっと凝ってるWebサイトも多かったぜ。この作者が最初に使ったブラウザがMosaicというもので、さっきの画面のようなシンプルな感じだった。この頃にはNetscapeというブラウザも出てきてて、デザイン性のすぐれたWebサイトも増えてたよ」
「デザイン性のすぐれたWebサイトをモザイクというブラウザで見るとどうなるの?」
「レイアウトも崩れてぐちゃぐちゃになるな。だからそういうWebサイトは『このサイトはネットスケープ専用です』と明記されてることも珍しくなかった」
「小説になろうでも推奨ブラウザがあるから、似たようなものかな」
「そうそう。で、あの作者はわざとシンプルにして、いろいろなブラウザに対応していると主張している。『新機能を覚えるのが面倒』ってのもあったと思うぜ」
「そうなんだ。それでIEだとどうなったの? さっきの画面はえらくシンプルだったけど」
「IE1はモザイクの開発者が作ったもので、機能もモザイクと同程度。ネットスケープ用のWebサイトはちゃんと見られなかった。IE3である程度見られるようになったな」
「だとすると、みんなネットスケープを使いそうなの」
「実際、IE3の時代まではネットスケープが主流だったぜ。状況が変わるのはWindows98とIE4の登場からだ。初めからWindowsにIE4が入っていたことと、ネットスケープに近い表示能力があったから、IEが主流になった」
「んとね。今ではネットスケープって名前をあまり聞かないの」
「ネットスケープの開発者が作ったFirefoxというブラウザもあるぜ。そいつは愛用している人も多い。だけど、スマホの影響もあってGoogleのChromeが強いな。今はIEよりクロームが流行っているな」
「んとね。IEはすでに小説になろうの推奨ブラウザから外されているの」
「あれ? さっき子狸くんの教えてくれたサイトの情報をみたんだけどよ。おいらは今年いっぱいはIEを使えそうだぞ」
「え? もしかして白猿さんってWindowsUpdateをやらないつもり? インターネットでWindowsを使う場合はぜったいやらないとダメなの」
「おいおいWindowsUpdateは毎月やってるぜ。さっきのIEのサポート期限をよく見なよ。おいらの鏡はWindows8.1だから、まだしばらくIEが使えるんだ」
「んとね。白猿さんは、先にOSをなんとかした方がいいと思うの」