デパ地下ビジホ飲みデッキが優勝を狙えるダークホースだった件
ビジネスホテルに宿泊する人間の頭の中には、永遠の課題が鎮座している。それは「今日どこで飲むかな…」である。
ほとんど開かない窓から見えるのは、見慣れた居酒屋チェーン店の数々。安くて美味しいんだけど最近職場のやつと行ったな、などという思いが去来し、意気揚々と知らない店に突撃する…勇気もなく。そもそも一人で飲みに行くのもなと考え直して、コンビニでいつものつまみといつもの酒を買い、まぁいいかと大浴場に入って飲んで寝る。
このような経験をした読者の方は、きっと一人や二人ではないだろう。決してこれが悪いという訳ではないのだが、何かこうルーチンワークのような、「ようし飲むぞ!」というよりは「とりあえず飲むか…」という後ろ向きな気持ちがあるのは否めない。やはり義務感から開かれる酒宴は、どこか味気ないものなのである。
そこで、だ。ビジネスホテルというものを改めて考えて欲しい。ビジネスと仰々しい名前を掲げるだけあって、やはり大きな駅の近くが多い。
となると、駅前にはあるのだ。デパートが、否デパ地下が。
おおよそ家庭を持たない独身の人間にとって、デパ地下というのは職場の土産を買いに寄るかどうかが良いとこの場所である。言い過ぎじゃねぇかなと思われるかもしれないが、現にこの間行った時に独身男性と思しき存在は私ぐらいであった。
だがそんな冷たい視線を差し引いても、デパ地下は凄かった。和洋中ありとあらゆるツマミが軒を連ね、取り揃えてる酒の種類はまさに百貨店の名に相応しい商品の数々が並んでいる。ついでに朝食バイキング代をケチった私には嬉しい焼き立てのパンの香りが鼻腔をくすぐる。食べればマウントが取れそうな珍しいデザートも置いてある。
ようしじゃあ食うぞ買うぞ…と言う前に、私は気付く。もうそんなに胃袋がデカくないという事実に。
だからこそ、デパ地下である。立ち並ぶ色とりどりの惣菜をよく見ると、そのほとんどが計り売りなのだから。
食べたい物を食べたい量だけ、そしてお酒は普段よりもちょっと豪華。ホテルのレンジで温めて、飲んで寝て朝風呂入って。そんな少しだけ羽を休める時間で、今日も少しだけ優勝に向かって前進したい。