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第0章5 【大自然の国】

 潮風が頬を優しく撫でる大海の青空。その下で金色の髪を美しく靡かせる少女は誰でしょう?そう、私ゼラです!(これ、ちょっと言ってみたかったんですよね~)


 さて、昨日は私が眠気に負けてしまい、一切あの街を観光出来ませんでしたが、本日は違います。これから訪れるステイネスという街をバッチリ視察してやります!と、思ったのですが......


ラウス「あちゃー、こりゃダメだな」


 と、まだ港の様子も薄らとしか見えない距離からラウスがそう言います。


「ダメって何がですか?」


モルガン「嬢ちゃん、見えるか?あの黒い煙」


 黒い煙?


 確かに......薄らとは空に立ち昇っていく煙っぽいのが見えますが......


ラウス「あの街はな、昔からああやって度々内乱みたいなのが起きてるんだ。んで、朝っぱらからあんなに煙が上がってるとなると......」


モルガン「今日は一段と危険。そういう事だ」


「なるほど」


 事情ありといったところですね。しかし、そうなればどうするべきなのでしょうか?


ラウス「仕方ないな。ラルレア王国にでも行くか?」


モルガン「あそこか。確かに、当てがあっても良さそうだな」


「ラルレア王国?」


 また聞いたことのない国の名前......まあ、当たり前なんですけど。


モルガン「自然王と呼ばれるナトレ国王が建国した、まあ名前から分かるだろうが、緑溢れる小さな国だ」


「ほう」


 自然の国ですか。面白そうですね。


ラウス「航路変更だな。シャウトに伝えてくる」


モルガン「おう」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 それから1時間ほど波に揺られ、私達の船は無事に......辿り着けたら良かったのですが、ここで問題事が1つ発生。


「テメェら、シージュアルの賊共だなぁ?命惜しけりゃ船捨ててどっか行きな」


 これが本当の海賊というやつですか......。早く自然王国に行きたいというのに、厄介なものに絡まれたものです。


(一応聞いとくんですけど、彼らは?)


ラウス(本物の海賊だ。俺らトレジャーハンターと違って、あいつらは俺らみたいな船を襲って金を得る。まあ、下衆共って覚えとけ)


 なるほど、下衆ですか。まあ、そこら辺はどうでも良くて、問題は彼らをどうするかですよね。


 この船は、シージュアルにある他のものと比べて一回りくらい小さい船です。まあ、私達4人が乗る分には普通に広い方なのですが、海賊達が一斉に乗り込んでくると、かなり狭く感じます。


 うーん、戦うしかないのでしょうけど、あまり派手にやりすぎるとこの船が沈んでしまいます。どうにかして穏便に済みませんかねぇ。


ラウス「しゃあねぇ。おい、ゼラ。船を捨てるぞ」


「......?え?捨てるんですか!?」


モルガン「こうなった以上、捨てるしかあるまい。だからこの辺りには近づきたくなかったんだがな」


シャウト「すまんな」


「おうおうおう!往生際が良くて助かるぜ!」


ラウス「んじゃ、ゼラ目閉じてろよ!」


 私の小さな体では何をすることも出来ずーー怪力設定なんて、この頃は一切自覚してませんーー、そのままラウスに抱えられて海に落ちました。そして、後に続くようにしてモルガンとシャウトも飛び込んできました。3人が私の体を守りながら泳いでくれたおかげで、溺れるとかそういう事はなく、近くの小島にまで無事にたどり着けました。


《ドーーーーン!》


 と、島にたどり着くと同時に、私達の船が爆発し、大海原の上を火の海へと変えるのが見えました。


ラウス「タダで渡すわけねぇだろ。テメェら賊は海の上でもずくになってろってんだ」


「ど、どういう事ですか?」


ラウス「いやな、俺も後からシャウトに聞かされたことなんだがーー」


シャウト「マスターからの仕事だ。最近、ここいらの海で悪さをしている海賊がいると。で、そいつらを焼くなり煮るなりして痛い目に遭わせてほしいとのことだった」


モルガン「船の中に大量の火薬があるから、何事かと思っておったが、マスターの言い出すことはいつも派手なことばかりだ。ハッハッハっ!」


 うーん?何が何だかよく分かりませんね。お仕事ってことで良いのでしょうか?


ラウス「ああやって悪い奴らが燃えてる姿を見るってのは、いつ見ても清々しいもんだぜ。まあ、俺らの船を犠牲にしてるんだが」


「それはいいのですが、これからどうするんですか?聞いたところ、かなり計画的だったと思いますけど」


シャウト「迎えの船が来る手はずになってる。狼煙を上げていれば気付いてくれるらしい」


モルガン「というわけで、俺はこれから燃やすためのものを集めてくる」


 モルガンは1人、小さな島の中心へと行きました。といっても、こんなに小さな島なのですから、数分と経たずに帰ってくるでしょうね。にしても、世の中悪い人たちはたくさんいるものなんですね。そんな人たちを、自分たちの船を犠牲にしてまで殺しちゃうのはどうかと思いますけど。


シャウト「一応お前らに詳しいことを伝えておくが、あの国に接近しようとしたのは」


ラウス「奴らを挑発するためだろ。んで、航路を上手いこと調整してあいつらが来るのを待つ。で、見事挑発に乗った奴らが船に乗り込んだらマスターの指示通りに爆発させる。ったく、船だってそんな安くねぇんだぞ」


「そうまでして彼らを殺す価値ってあったんですかね?」


シャウト「奴らが今までに襲ったところの被害額は、ざっと見積もって金貨8000枚程度にはなる。まあ、これは金で換算しただけだが、実際は人殺しも多数だからもっとあるだろうな」


「わ~お」


 この世界での金貨がどれだけの価値かは分かりませんが、相当被害が多いということでいいのでしょう。それならば、彼らを爆殺しても仕方ないのでしょうね。口で言って聞くような奴らでは無さそうでしたし。


モルガン「持ってきたぞ~」


ラウス「んじゃ、早速火を付けて船を呼びますか」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 その後、火を起こすのには苦戦をしましたが、無事に狼煙を上げることができ、ものの数分でやって来た大きな船に私達は乗り込みました。船内には結構な数の人がおり、彼ら全員が整えられた服装をしていることから、結構なお偉いさんの船なのかな?と私は思いました。


 私のその考えは間違っていなかったらしく、彼らは自然王国から直々に派遣されて来た兵士たちってことで、ここに来てあのマスターの周到さを思い知りました。


(全てはマスターの手のひらの上、というわけですか)


 広い船内で濡れた服を着替え、シャワーというものを浴びてから私は開かれた船首に出ました。


「わぁ~あれが自然王国~」


 船首から見える緑溢れる大地。ここからでも見えるほど......見えるほど?


 いえ、見えてくるのはほぼ森です。私が住んでいたあの島よりも自然が凄いです。そんなところに国なんてあるんですかね?


「うーん?あんな所に国を建てようなんて考えた国王様......どんな人なんですかね」


「ハハハ。あなた様もそう思いますか」


 ......?誰ですか?私の独り言に反応をしてきたのは。


「おっと失敬。私、この船の船長をしております。『ガメラ』と申します」


 私に話しかけてきたのは、白髪の生え始めた初老の男性でした。普段から潮風に当たっているせいでしょうか?目の下が若干赤くなっています。


ガメラ「我らが国王は自然を愛する御方。昔昔、あの地には自然というものなどないに等しかったのですぞ」


「へー」


 興味ないですね。私は今を知れたらそれで十分です。行くことの出来ない過去の世界など興味の欠片もありません。


ガメラ「あの自然は見ていて大変癒されるものとなっております。お客人も、我らが王と謁見される前に、1度、あの大自然を堪能してください」


「謁見?」


 え?国王に会うってことですか?私たちが。そんな話一切聞いてませんけどね。ラウス達なら何か知ってるでしょうか?


 私はラウスたちに話を聞こうと船内を歩き回りますが、この船は思った以上に複雑で、あちらこちらで船員の姿を見ることはあっても、ラウス達を見つけることができません。なんでですかね?彼らはどこに行ってしまったのでしょうか?


 あっち行ってこっち行ってを繰り返してるうちに、私は1つの大きな部屋にたどり着きました。大きな機械音がします。多分、エンジン室というやつですかね?知りませんけど。


「うーん?これでは私が迷子になってしまいましたかね?ラウス達を探していた筈なのに、気づけばよく分からない部屋。大人しく、遠目から自然王国を眺めて待っているべきだったでしょうか?」


 そう口では言うものの、生まれて初めて見る機械というものに私は興味津々で、適当にブツブツと言いながら部屋の中を探索していました。もちろん、触れば壊れるかもしれないということを知っているので、気になっても見ているだけに留めておきます。後で聞けばいい話ですし。


「......?今、人の気配を感じたような......」


 適当に見て回ってただけですが、今確かに視界の隅に人の姿が映ったような気がします。


 グルっと部屋を一周して、私は何かにつまづいて転んでしまいました。


「きゃぁっ!」


 危ない危ない。もう少し角度が悪ければ、鉄の棒に頭をぶつけてしまうところでした。


「......誰......ですか?」


 今、私がつまづいたのは人の足でした。それで、その足の上を見ると、10歳くらいの男の子がいました。


「う、うわぁぁぁぁぁぁ!!!」


 私が気づくのと同時に、男の子は叫び声を上げながら部屋を飛び出していきました。


「何だったのでしょう?」


 よく分かりませんけど、船の速度が落ち始めてることから、もうそろそろ接岸の頃だろうと思い、私は複雑な船内を上へ上へと上がってなんとか元の場所へと戻ることが出来ました。すると、もう既に、探していたばの3人が集まっていました。


 やっぱり、待ってるのが正解だったんですね。


ラウス「どこ行ってたんだ?」


「うーん?探索してました」


シャウト「あんまり動き回るなよ。俺達の船とは勝手が違うんだ」


「分かっています」


 私は、さっきの男の子のことを話そうかとも悩みましたが、それより先に自然王国の鮮明な姿が見えてきて、その景色に見惚れているうちに、すっかりと忘れてしまいました。


「「 ようこそ!自然王国ラルレアへ! 」」


 こうして、私の冒険譚第2章が幕を開けたのです。

人物紹介

モルガン

性別:男 所属ギルド:トレジャーハンターギルド本部

好きな物:船、宝 嫌いな物:金、借金

誕生日:9月9日 身長:181cm 30歳

見た目特徴: 黒髪短髪で横にちょっと広い愛され系キャラ。要するにクラスに一人はいるぼっちゃりタイプの人。


 ラウス達と共に旅をする明るい青年。ツケを作るのが得意で、いつもいつも借金に悩まされている。

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