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それから冬の子は、その場所にとどまりました。
葉が落ちないように気をつけて、冷たい北風も起こさないようにしました。
雪雲が近づくと、追いはらいました。
ここよりもっと南のまちの人たちは、いつまでたっても冬の子が来ないので、なにかおかしいと思っていました。
「冬の子や~い! いつになったらくるんだい?」
南のまちの人たちは冬の子に叫びました。
しかし返事はありませんでした。
冬の子は、男の子の家の木の葉を、なんとか残そうとがんばりましたが、葉はだんだんと少なくなっていきました。
約束の誕生日には、あと二枚しか残っていませんでした。
「お誕生日、おめでとう!」
男の子の部屋の中からは、明るい笑い声が聞こえました。
男の子のお母さんが、お父さんが、兄弟たちが、プレゼントをあげたり、ケーキにろうそくをたてたりしていました。
みんながとても楽しそうで、そして、うれしそうでした。
男の子もこれまでで一番の笑顔を見せていました。
冬の子も男の子の様子を見て、とてもうれしそうでした。
お誕生日のパーティーの間にも、葉が一枚、風にさらわれていきました。