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北のまちでは、秋が終わりはじめていました。
ついさいきん、紅葉したばかりだと思った木々からも、だんだんと葉が落ちています。
「秋の子さん、秋の子さん、仕事はどれくらい進んでいるんだい?」
冬の子が秋の子に会いに行ってたずねました。
「もうこの列島は、ほとんど秋にしてしまったよ。あとは南をのこしているだけさ」
秋の子は葉にせっせと赤い色を塗りながら答えました。
「本当かい? ならぼくは、そろそろ北のほうから仕事をはじめても大丈夫そうだね。せっかちな葉っぱはもう落ちはじめているみたいだけど」
「あ〜あ、ぼくががんばって赤くした葉っぱも、もう落とされてしまうのか。なんだか悲しいなぁ」
「じゃあ、僕は北に行ってくるよ。」
秋の子に見送られながら、冬の子は北に向かいました。