5日目
あの日から何日目の朝だろうか。
私は会議室に向かう途中、さとさくさんの部屋のドアが開いていたので、中を覗いた。
「いっ…」
覗いた先に目に入ったものは…
さとさくさんが血だらけで倒れている姿だった。
部屋に血が飛び散っている。
私は立ち上がってみんなに報告しようと思ったが、腰が抜けてしまい、立てない。
ふと見ると、廊下の奥にヨザクラさんの姿が見えた。
「ヨザクラさ…」
声が出ない。手をブンブン振り、こちらに気付くと駆け寄ってきてくれた。
ヨザクラ「どうした…っ⁉︎」
ヨザクラさんはその光景を見ると、苦虫を噛み潰したように顔を歪めた。
ヨザクラ「…会議室に行こう。決着をつけるんだ。」
そう言うと、ヨザクラさんは私の手を取り、会議室へと向かった。
会議室に居たのは、ペプシ、イリーさん、ヨザクラさん、私、そして…
アイランド「俺復活〜」
アイランドさんが居た。
「アイランドさん!?なんで居るの!?どこ行ってたの!?」
私は驚きと不気味さと嬉しさが混ざりあってよくわからなくなっている。
アイランド「まぁまぁまぁ落ち着けって。ちゃーんと1から説明してやるから」
まず、夜にのあ猫とアイランドさんはアイランドさんの部屋でゲームをしていた。
その時、賭けをしたそうだ。
この試合で勝ったら、負けた側は言うことをなんでも聞く権利が与えられる。
その結果、アイランドさんが負けて、のあ猫がアイランドさんに命令出来るようになった。
その時のあ猫が命令した事は単純で
(目を瞑って)
と言う命令だった。
アイランドさんは素直に言うことを聞き、まんまと喰われてしまったということ。
だがその時丸呑みだったので、のあ猫が死んだ後腹から出てきたと言う。
アイランド「…まぁ、ざっくり言うとこんな感じかな」
「赤ずきんかよ…」
一通り話を聞き終わると
イリー「ほんじゃあ、【これから、話し合いを始める。】」
と、開始宣言をした。
ペプシメン「そういや俺1つ気になった事があって、なんでイリーさんはヨザクラさんの部屋の前に居たの?前聞いてもはぐらかされるから、個人的に怪しいと思ってるんだけど。」
イリー「カミングアウト、俺は狩人だ。ヨザクラさんに占われたらしく、護って欲しいとお願いされた。だから、その日の晩はヨザクラさんの部屋の前を見張っていた。これでいい?」
と、淡々と理由を述べるイリーさんに、ペプシは渋々頷いた。
ペプシメン「そういやオサシミ、お前はなんなん?」
「え?」
なんなん?って…人間か人狼かってこと?
「私は…」
ヨザクラ「ペプシさん、もう辞めなよ。」
冷たく響くヨザクラさんの声。
感情がこもっていないロボットのようだった。
ペプシメン「辞めなって、何が?今は話し合いの時間ですけど?」
ペプシは冷たく言い返す。
ヨザクラ「やっと…やっとこの地獄も終わる。」
と言うと、ヨザクラさんは銃を抜き、ペプシに向ける。
「…っ!ヨザクラさんっ!」
ヨザクラ「…言わなくても分かるだろ?占い結果。ペプシさんは、人狼だってこと。」
そう聞いた途端、私は膝から崩れ落ちた。
イリーさんは、ペプシ達に背を向けている。
アイランドさんは腕を組み、壁にもたれている。
ペプシメン「…っあーあ、バレちったか。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
異変に気づいたのは、1週間前。
夜中に目が覚めた時、背中と頭に違和感があった。
あくびをしてトイレへ向かう途中、鏡があったので
何となくチラッと見ると、俺の顔は真っ黒い毛に覆われていた。顔だけじゃない、手や足、ましてや鋭い牙に尻尾や耳まで生えていた。
俺は、驚きや不気味さなどが混ざりあって、鏡の中の自分を指さして口をパクパクさせることしかできなかった。
鏡を見てどうしようかと悩んでいると、足音が聞こえてきた。
(こんな姿見られたら不味い!)
そう思い、俺は咄嗟に物陰に隠れた。
やって来たのは、ファルコンだった。
俺は、ファルコン…人間の姿を見て
喰いたいと思ってしまった。
だが直ぐに我に返り、精神を落ち着かせる。
ファルコンがトイレを出た後、俺は急いでログアさんの部屋に行った。
ログアさんは、いつも通りパソコンの前で青い鳥をいじっていた。
ログアさんは俺の顔を見て
ログア「…お前どうしたその顔とか耳。コスプレか?」
と、怖がるどころかからかってきやがった。
「違ぇよ!とりあえず、話を聞いてくれよ…」
俺は今まで起こったことを話すと、ログアさんは眉間に皺を寄せ、考え込んだ。
暫くして、ログアさんが口を開いた。
ログア「…生きたいか?」
俺は予想外の質問で反応出来なかった。
ログア「ペプシ…何かの拍子で人狼になったっぽいな…まさか本当に居るなんて…」
人狼…?、人狼って、平気で人間を食う…?
俺は、そんな奴になってしまったのか?
ログア「皆にこのことを知られたら、お前、殺されるぞ。」
心臓がドクンと跳ねた。
ログア「…どうする?生きたいなら、手を貸す。皆を殺したく無いんだったら、…俺は何も言わない。」
「俺は…………」
俺は自分でもびっくりするぐらい情けない声で
「死にたくない……」
と呟いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ペプシメン「楽しかったよ。ヨザクラさん達と過ごした日々。でも、俺も抑えるのはもう限界なんだ。人狼として生まれてきた以上。本能なんだよ。」
ペプシは悲しげに言う。
ペプシメン「気づいた時にはもう遅い、また俺、やっちまったって。だけど、俺はもう感情を捨てたんだ。悲しいとか、辛いとか。何も感じない。だから平気で躊躇無く殺せるんだ。」
ヨザクラさんは黙ったままだ。
私はペプシを見つめる。
ペプシメン「俺はただ生きたかったから皆を殺した。自己中だろ?…ほら、早く殺せよ。憎いんだろ?平穏な日々を取り戻したいだろ?」
私は、ペプシに近づいた。
手に銃を持ち、ペプシの心臓に当てる。
心臓の鼓動が伝わってくる。
ペプシメン「…何や。」
「ペプシ。何か言い残したい事はある?」
優しく問いかける。
ペプシメン「………来世は、普通の人間になりたいなぁ」
そう言うと、へにゃりと笑った。
作り笑いなのだろう。声が震えていたから。
私は「そうだね」と答え、優しくペプシの心臓に向けて
銃を撃った。
ペプシは、ゆっくりと私の方向へ倒れてきた。
✎︎5日目__死亡者:さとさく__受刑者:ペプシメン______