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お嬢様が別人に(ルア視点)

お嬢様が目をお覚ましになったようだ。

アメリア・イスファハルド公爵令嬢……私にとっては複雑な気持ちにならざるを得ない人だ。

イスファハルド公爵は昔孤児だった私を拾ってくれた。

あの時は良かった………お嬢様は相変わらずいじわるだったが、家族の仲は良好だったように思う。

でも……お嬢様の双子のお兄様であるミカエル様が宰相代理に選ばれた時からこの家族がおかしくなった。


ミカエル様はこの国の王子であるテオルド様ととても仲が良く成績もトップクラスであったため次期宰相確定だと取り巻きから言われていたようだ。

しかし現実に第1王子はラインハルト様。

テオルド様がミカエル様を推薦してもラインハルト様にも人脈があるようでその意見は通らない……そう誰もが信じて疑わなかった。


しかし自尊心が強いミカエル様は取り巻きの言うことに乗っかって傲慢になってしまわれた。

奥様と旦那様はミカエル様をアメリア様よりも跡継ぎとして大切に思っていたからその自尊心を損なわせないために王様に『息子を宰相代理に…』と直談判しに行ったそうだ。

その時何を言われたかは知らないが、帰ってきて来た御二方は酷くやつれていた。


結果はミカエル様は宰相代理になった。

それからというもの奥様や旦那様はアメリア様を無視してミカエル様ばかりを可愛がるようになった。

アメリア様は成績は中の下、美貌のみで今までやってきたような人間だから見切りをつけられてしまったのだろうか………そう思うと可哀想だった。

そして数日後にアメリア様はテオルド様との婚約が決まった。


そこから本当に最悪だった。

ミカエル様は権力を振りかざし家で好き勝手やっているし、アメリア様は更に性格が歪んでしまってイライラすれば女中に当て付けるわで…たくさんの人が辞めていった。

私も何回もいびられたしやめようとも思った。

だけど、時々見せるお嬢様のやるせない顔が気になって辞めることができなかった。



しかし転機が起きた。

耐えかねた庭師がお嬢様を階段の上から突き落としたのだ。

それはかなり重い罪となることだが、他の使用人がその事を黙っていたので事故ということに収まった。



お嬢様は数日意識を失い眠っていたが、次に目を覚まし、私を呼ぶお嬢様の声は今までの劈くような悲鳴ではなかった。



入ってみるとお嬢様は目を白黒させて私を見ている。

何か粗相をしてしまったのだろうか?

また怒られるのか?

恐る恐る中に入る。



『 アメリア様』と言うと、彼女は忽ち叫び出した。

なんと彼女は所々覚えているがほぼ全てを忘れてしまっていたようだ。

私は丁度いいと思い、あたかも仲のいい振りをした。

全て忘れているならば、ここからやり直せばいいんだ。

幸い、目を覚ました彼女はすごく優しそうになっていた。

私の名前を言うと『可愛い名前』だと褒めてくれた。

有り得ないことすぎて私はこの人はアメリア様の偽物なんじゃないかと思った。




それからというもの私はアメリア様の経過を見ていた。

もうかつてのように戻る予兆が見えないので、本当に変わったんだなと思い少しだけ安心した。

彼女は知らないだろう……自分が今までやってきた非道の数々を。


すると一週間経って彼女は驚くべきことを言った。




『 ごめんなさい。』

貴方が謝るなんて思わなかった。



『 ありがとう。』

事実を言えば怒られると思ったのに…。



『自分が悪い人だってことには気づいていた。』

気づいていて反省していたのか……。





『 一緒にいてくれて嬉しい。』




なんだかその顔を見るとずっと私が彼女に対して持っていた蟠りがどんどん解けていくような気がして思わず手を握った。

人生はやり直せる…そう思わせてくれた。

あんなに酷いことをされたのに……私は甘いのかもしれない、けど彼女がこの死んだ家の希望として見えたのは過言ではない。

そのくらい今のアメリア・イスファハルドは綺麗だから。







今日はアメリア様が何ヶ月ぶりかに学園に行くと言った。

私的には記憶がないのは不便だろうと学園について行きたいくらいだけれど、それは流石にできないからせめて一生懸命送り出してあげよう。

私が手を振るとアメリア様は小窓から顔を出しずっと手を振り返してくれた。







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