大きなカエルってだけで気持ち悪い
改めて体制を整えたところで敵を見る。
鳥も香り瓶のお陰で大丈夫だろうと判断して眼鏡をかけ直してソレを直視した。
ソレは灰色の大きな蛙のような生き物だった。
その肌は油ぎってギトギトしているように見える。
そして一番の異形さは顔の鼻にある部分に無数の触手がついているものであった。
冒涜的なその姿は見ているだけで心がざわついてきそうだが、今は部屋に充満する香りのお陰で平静さを保てている。
「うう・・・冷静になって見ても気持ち悪い」
「何なのあれ?あんな怪異聞いたことないんだけど」
「・・・鳥、アレってまさか?」
「多分そうだと思いますが空想の話なので自信がないですな。
いま調べますぞ」
風と花がその奇怪さに顔を歪める中で月と鳥はそれが何なのか見当がついているようだ。
鳥はスマホを化け物にかざしてデータを読み取る。
するとPCの画面に「ムーンビースト」と表示されていた。
「間違いないですな・・・あれはムーンビースト。
クトゥルフ神話に出てくる冒涜的な化け物。
見るだけで精神を狂わせる厄介な怪異ですな」
鳥の言葉に月が驚愕する。
「そんな・・・あれは神話と名乗っていても創作の話のはず。
その化け物が現実にいるはずが・・・」
悩む2人に吹っ切れるきっかけを与えたのは意外にも風であった。
「うーん、2人が何を悩んでるか分からないけどさ。
現実にいないっていうなら人魂もゾンビもスライムも現実にはいないんじゃないの?
そういういないものが存在して僕達に迷惑かけてるから怪異って言うんじゃないのかな?」
「あはは!単純な答えで風らしいけどその通りよ。
それに難しいことを考えてないで、もうそろそろ戦いに集中しましょう。
もうすぐ来るわよ!」
気がつけばムーンビーストはかなり近くまで寄って来ていた。
未だにノソノソと動くだけだが近づくことで不気味さは増している。
「まぁ、あいつ動きは遅いから冷静に戦えばあたし達なら楽勝でしょ!」
と花が後方にいる月たちに振り向いた時だった。
それはムーンビーストとの距離がまだ離れていて、動きも遅いという判断からだったが、その隙を見逃さなかった。
「花、敵から目を離しちゃダメ!」
「花殿、危ない!!」
何処からともなく手から槍を取り出したムーンビーストは花に向かって投擲した。




