小生の白衣の中は割と平気な格好ですぞ
花鳥風月は扉を開き中へと入っていく。
広間の奥には黒く影になった何かが動いていた。
それは彼女たちに近づきゆっくりと振り返る。
3人にはまだよく分からなかったが、一際視力が良い月はそれを直視してしまう。
「あ・・・あああああ!!」
月は突如叫び声をあげて手に持ったエアガンを落としその場に蹲る。
「え、なに?」
「どうしたの月!?」
いつも冷静沈着な筈の月が突然絶叫し始めたのだ。
そちらに一瞬目を向けるが敵から完全に目を話す事を躊躇った風も近づいてきたソレを目にしてしまう。
「あ・・・ああ・・・」
体がガタガタと震えてバットを握る手に力が入らない。
「一体どうしたって・・・あ、いやーーー!!」
月を介抱しようと近寄った花も様子のおかしくなった風が気になりそちらを見てしまった。
彼女は絶叫しながらその場にヘタリ込む。
彼女が座る床には水たまりが出来ていた。
この阿鼻叫喚の地獄絵図の中で鳥だけはソレを直視していなかった。
風がおかしくなった辺りで、視覚で見ることに問題があると気付いた彼女は眼鏡を外したからだ。
今の彼女には近くにいる3人の顔すらまともに見えないだろう。
(見ることで精神を狂わす効果を持っている敵ですかな・・・正直油断していたでありますな。
この状況では3人と逃げる事は無理でしょうな。
何か・・・何か状況を打破するもの・・・精神がざわついているなら心を落ち着かせれば良いのですかな?)
鳥はそこまで考えてふとランドセルの中のものに気付いた。
(ランドセルの中には必要なものが入っておりました。
ならば、婆殿がこの敵がいる事を知っていてこれを入れてくれたのではありませんかな?)
鳥はその事に気付くとランドセルから良い香りが漏れる小瓶を取り出した。
そして、それをその場に叩きつける!!
その瞬間に部屋には精神を落ち着けるような香りが充満した。
そして、様子のおかしかった3人元通りになっていく。
「あ・・・あれ?震えが止まった?」
「ああぁぁ・・・。この香りを嗅いだら落ち着いた。
これは鳥の小瓶?」
と2人は冷静さを取り戻すが
「あああああ!!」
花はまだ叫んでいた。
「え、花まだ治ってないの?」
風が花の方を向こうとするが・・・
「ああ、こっち向かないで!
あ・・・戦闘中なんだから敵の方を見てなさい!」
と叫んだ。
近くにいて事情を察している月は花の肩にポンと手を置くと
「大丈夫、花はミニスカなんだから濡れた下着を脱げば気にならない」
と慰めた。
普段なら真っ赤になりながら怒るところだが、先程のこともあり落ち込んでいた花の目には涙が浮かんでいた。
「はいはい、ストップでありますぞ。
敵は遠くにいて鈍足とはいえ近づいてきておりますからな。
今は体制を立て直しましょう。
風殿はそのまま敵が危険な範囲に近づいてきたり、何かしてこないか見ててくだされ」
「何か分からないけどりょーかい!」
そう風に声をかけると鳥は花の所に向かった。
「落ち込まないでくだされ、花殿。
さぁ、これを」
と言って白衣の中からハンカチと白い布を取り出した。
「こ・・・これは?なぜ、これがこんな場所に?」
「怖い所に行くということで小生も自信が無かったですからな。
一応持ってきておりましたが役に立って良かったであります」
花は鳥から受け取るもそそくさと着替え始めた。
「ありがとう、ほんっとーに恩にきるわ!」
「なんの、なんの。小生は戦闘ではお役に立てませんからな。
まだまだ予備はあるので安心していいですぞ」
と胸を張って答える鳥に
「いや、もう一回はごめんだわ」
と肩を落としながら着替えを終えたのであった。
タイトル通りに鳥の白衣の中は濡れても平気な格好です。
もちろん裸ではありません。




