日本人はこの喋り方の方が馴染んでくれマース
花視点です。
その日あたしはダディが運営する教会の掃除をしていた。
そこに大きな音を立てて飛び込んでくる男が1人。
あたしの自慢のダディだった。
普段は明るく陽気なダディだがその時は非常に慌てていた。
あたしはこんなに慌てるダディを見たことがなかった。
「ダディ、一体どうしたの?」
あたしが尋ねるとダディは背中に何かを抱えていたらしく、その何かをゆっくりとベンチに降ろした。
その何かを見てあたしは驚いた。
それはクラスメイトの風だったからだ。
風はとても衰弱しており一目見て危険な状態だと分かった。
「風!?ダディ、一体何があったの?」
「なに?花は知り合いなのか?
いや、それよりも冷蔵庫から急いで水を取ってきてくれ。
緊急用の聖水と・・・恐らくそれだけでは足りないだろうから普通の飲料水もだ」
あたしはダディに言われて急いで居住区になっているところから聖水と飲料水を取り出した。
そしてダディと風の所に持っていく。
「はい、ダディ。聖水!」
私はダディに聖水を渡すとダディはそれを風の身体にかけていく。
聖水は飲ませた方が効くのだが、恐らそれすら出来ないほどに衰弱しているのだろう。
「花はその飲料水に祝福を」
ダディに言われたあたしは手に持った飲料水に祈り自分の力を注いでいく。
1分ほど注ぐと500mlのペットボトルに十分な力が貯まったのを感じた。
そのせいであたしの中の力は半分くらいになってしまったけど。
「はい、ダディ」
あたしはダディに聖水に変わった飲料水を渡した。
「よくやったな、花」
ダディはあたしの頭を撫でて褒めてくれると風の口にペットボトルを近づけて飲ませていく。
身体が足りないものを求めるように意識がないにも関わらず喉が動いて身体に吸収されていくのが分かる。
そこでようやく風の容体が安定した。
「全く・・・驚きだな。
これだけの霊力を蓄えた聖水を使っても全回復しないとは。
この子はどれだけの霊力を持っていることやら」
霊力とはあたしが祝福を与える時に使っている身体の中の力の事だ。
この力が強いとあたしのような事が出来るのだけど、この世ならざるものが見えるという欠点も生まれてしまう。
以前にあたしがぼんやりとしか見えなかった霊がハッキリ見えると言っていたから才能はあると思ってたんだけど、ダディの言う通り並みのレベルじゃないんだね。
だが、今はそんなことは問題ではない。
状況が落ち着いたせいで気付いてしまったことが一つあった。
「ダディ・・・普段のエセ外国人みたいな喋り方は作ったキャラクターだったんだね」
「オ〜これはここだけの秘密デースよ」




