2話 体
早くに目が覚めてしまった私は特に何かする用事もなく、朝ごはんを食べに1階へと降りた。
おじいちゃんにつられてか両親はもう起きて朝のルーティンを始めてるようだ。
2人はもう朝ごはんを済ませたようで、母が台所でお皿を洗ってる音が聞こえる
父は庭でラジオ体操をしているみたいだ。
我が家は健康一家……というよりもそうならざるをえずにこうなった。
「(悪いことではないんだけどねぇ……)」
っと思いながら冷蔵庫から私の朝ごはんを探す。
「……んー、もうバナナ味とイチゴ味しか残ってないのかぁ、ココアが好きだったのになぁ……」
っと取り出したのはペーストがチューブに入ってるものだ。
「あら。だってミコト、ココア味ばっかり食べてたじゃないの。あんなにココアばっかり買っておいたのに……」
手をエプロンで拭きながら母が苦笑する。
「むー、だってバナナは飽きるしイチゴはそんなにー……」
っと仕方なくバナナ味を取り出しながら言う。
「そのうちココア味飽きるわよー?」
言いつつ母はお皿を出してくれようとする。
「……それも困るけどぉ……。あ。いいよこのまま飲んじゃう。」
手でそれを制し、チューブをあけそのまま吸う。
飲むといえばいいのか食べるといえばいいのか。若干の舌触りを感じるそれは一応噛もうと思えば噛めるが噛んだところでっと言う感じだ。
「それはそれで乙女として如何なものかと……。」
母は言いつつ次の家事に行ってしまった。
私の主食は基本この「ペースト状」の何かだ。
いわゆる体にとってもいいものだけが入っており、数年前から私はずっとこれがご飯になっている。
タンパク質からビタミンから何から、これをとっておけばOKというものだ。
もちろんそれだけじゃなく、薬も入ってる。
私専用の薬だ。
私は昔から体が弱く、それはそれはもう本当に弱く、この歳まで生きているのが不思議だった程だ。
「ありがたいのは有難いけど、ちょっと飽きてきたかも。」
食べ終わったそのゴミを専用のゴミ袋に入れ、庭にいるであろう父の元へ行ってみる。
「お父さん、おはよ」
汗を拭う父は動いたせいか気持ちよさそうだ。
「お?早いんじゃないのか? おはよう」
「ちょっと目が覚めちゃって、たまにはいいかなって。ラジオ体操、私もしたかったかも」
父は嬉しそうだが少し表情を曇らせた。
「冗談だよ、怪我出来ないもんね、私」
そう言って家の中に戻った。
父はなにか言いたげだったが特に言葉が浮かばなかったらしい。
ちょっと申し訳ないことをしたかもしれない。
この家の家具の角などがカバーされてるのはおじいちゃんの為でもあるが、実際は怪我を絶対してはいけない私のためのものだ。
壊滅的に怪我の治りの遅い私は些細な擦り傷も命に関わる。
普通の生活させてくれてるだけでも有難いことだ。
「あー、ミコト。どうせなら今日の帰り前川さんとこで薬とかもらって帰っちゃいなさいよ、それこそココア味だらけを」
台所から母が声をかけてくる。
そろそろ準備をするかと伸びをしながら私は答える。
「そうだね、そうしようかな」
早いけど準備してたらすぐだろう
「(何か違う味開発されてないかなぁ)」
そんなことを思いながら私の朝が始まった。