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共感人間

作者: 海原進

 人の感情には、人一倍敏感であった。


 誰かが悲しんでいると、自分も悲しくなる。

 誰かが怒り狂っていると、自分までイライラしてくる。


 そして、一人になった時に、ふと、自分の感情が分からなくなった。

 常に、誰かの感情に共感し、同調していたから。

 喜びも、哀しみも、怒りも、楽しさも、自分ではない誰かの物だったから。


 すると途端に、空っぽの自分を認識した。

 自分らしさも、価値観も、目標も、何もない。

 人間味のない、真っ白な自分。


 拠り所が欲しい。

 自分が人間でなくなるのは怖い。

 だから、誰かに共感したい。

 誰かの価値観に同調したい。


 雲に隠れた月を探していると、家の前から、声が聞こえた。

 どうやら、中年の男が二人、言い争っているようだった。


「おい、落ち着け。死に急ぐな!」

「嫌だよ、もう。……リストラだぞ。俺という存在を否定されたんだぞ。生きてたまるか!」


 ……ああ、現代社会の小さな闇よ。

 何で、俺は努力をしていたのだ。

 俺の何が間違っていたんだ。


 理不尽な世界に耐えきれない。

 飛び降りたほうが、楽なんだ。

 それこそが幸せなんだ。


 空高く、放り投げられた俺の身体。

 最後にこの目で見たのは、目を丸くする、二人の男だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 『共感人間』を書いた作者さんに 共感してしまう猫で御座います。(勝手に) 人間の方が、ウサギより寂しがり??? ウサギさんの事はあまり知りませんがっ♪
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