おはよう、いただきます。2
初めまして、こんにちは。
唯名柳と言います。
前回の続きを更新致しました。
少しでも多くの人が読んでくれたら良いなと思っています♩
2話なので良ければ1話から続けてお読みください。
自分以外の声がした。それは男性とも女性とも受け取れる柔らかくもあり芯のある耳触りの良い声質だった。
猫が?いやいや…!そんな訳はない。だって猫だもん。言葉を発する訳がない。
突然の事で思考が纏まらない。だが、この部屋で自分以外の声となると目の前にいるこの侵入者。つまり猫以外には居ないのだ。この部屋に住み着いた地縛霊とかで無い限り。どうしたものか…。
素直に声を上げて驚きたいのだが、驚くに至れるほど状況を理解出来ていない。
よし、とりあえず訳が分からないが驚いた事にしよう。そうした方が幾分かこの戸惑いも発散出来るはずだ。と自分に言い聞かせ、実行に移そうとする。
ここに至るまでの思考、約1.2秒。
人間の思考回路たる電子信号には脱帽だな。
そんな訳で、さあ、始めましょう。驚き劇場の始まり始まり。
「ね、ねね、猫がっ…喋ったぁ!!!???」
お腹に力を入れ可能な限りの大きな声が出た。
俺の声に驚いたのか、対面に座る猫はビクッと震えこちらに視線を送る。
「にゃんだよ、うるさいにゃあ、いつからにぇこは言葉を使わにゃいと錯覚していたなゃ…」
猫は大口を開けて欠伸をする。
うるさいと言われ不意に謝ってしまう俺。
何で猫に謝ってるのだろう…。自分が情けなくなったが、それよりも猫が話すと言う驚きが自分の感情を支配しているので湧き出そうになったその他の感情はすぐに霧散してしまう。
「そ、そんなこと言われても猫は人の言葉は使わないだろ…?」
「それが偏見にゃんだよにゃあ。人の前で言葉を使わにゃいだけで、猫も話くらいするにゃ」
「人間がそんなこと承知してるとお思いか!?」
「興味にゃいにゃあ、人間が猫を見てるのと同じ様に猫も人間を見てると思ってるのかにゃ?それは傲慢ってヤツだにゃ、猫は人をたちの悪い侵略者とか自己満足の権化くらいにしか思ってにゃいにゃ」
そこまで言うのかと思うほど目の前の猫は人間に対して恨み辛み妬み嫉みを並べ椅子に陣取った時からは予想も出来ないほど俺に冷ややかな視線を向けてくる。
この猫が単に人が嫌いなのか、猫と言う種族が元々普段の振る舞いとは裏腹にその思いを抱えているのかは定かでは無いが、1つだけ分かるのはこの猫は『人間』を忌み嫌い、信用の欠片も抱いていない。という事。
確かに人間は汚いと俺は思う。理性や知性がある分尚の事タチが悪い事も知っているし、そういう経験を俺自身も重ねてきた。でも、この猫を見てこのまま人を忌み嫌って猫の短い生涯を終えるのは寂しいと思った。勿論、これが猫の言う自己満足だと言う事も理解はしてる。それでも、一縷の綺麗さや優しさを秘めているのが『人間』と言う種だと思う。だからこそ俺は猫にこの言葉を投げ掛けようと思ったんだ。
「なあ、猫さん、腹減ってるんだろ?少しの間うちで一緒に暮らしてみないか?」
「……にゃぜ」
「野良だと何かと大変だろ?寝床とか飯とか」
「今は晴れてるけど、今日は雨が降る気がしたから手近にゃ家に忍び込もうと思っただけにゃ」
「うちなら飯食べ放題で寝放題の超快適だと思うけど?」
「必要にゃい」
「でも、雨降るってのに外は嫌だろ?」
「うるさい、どうでもいいだろ、雨でも気にしない、もう出てく」
「そう言うなって、な?人間の自己満足にもう少し付き合ってくれよ」
「恩着せがましいにゃ、そう言う所が嫌いにゃ」
平行線の問答を続けていると、キュルルル〜。と猫の腹が鳴る。
猫って腹の虫鳴るんだ…。
笑い出してしまう俺。可笑しくて涙が出てくる。
涙の浮かぶ目を指で擦りながら片目だけでも薄く開き猫の方をみる。
「………。」
声を発す事なく少し俯く猫の顔は俺の目には頬を赤く染め羞恥に耐えようとする幼子の様に見えた。
「…ねこまんま」
「何て?」
「ねこまんまにゃら食べてやらん事もにゃい」
「猫でも食べられるように少し味を薄くするな」
ニヤニヤする俺にシャアー!と威嚇をする猫だが最初ほどの威勢は無く、尻尾は少し項垂れている。俺は少し待ってろとだけ言ってキッチンの方へ向かった。
こうして人間不信(?)の猫とただの社会人(?)の共同生活の幕が上がった。
読んで頂きありがとうございます。
猫と人間の共同生活がこれから始まって行きます。
自分の欲望全開で少しでも親しんで頂ける作品をこれからも投稿していきたいと思っています。
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それでは、次話を少しの間お待ち下さい♩