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伝わるいろは   作者: 唯名柳
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おはよう、いただきます。

はじめまして。唯名柳ゆいなゆいと言います。

少しでも多くの人に読んで頂けると嬉しいです。


 カーテンの隙間から漏れる光の波。ベッドの横に佇む影の絨毯。天気の良い朝は毎日同じような景色になる俺の家。

雨の日は灰色と淡い水色。晴れた日は小麦色と透き通る白。

多分そんな感じ。

 日常の風景や匂いに薄っすらと色を感じるようになったのはいつからだろう。学生の頃は…何を考えて過ごしてたかすら覚えてない。

まだ起ききらない頭で思考する時が一番好きだ。ふわふわしてる頭の中が真ん中に向かって少しずつ研ぎ澄まされていく。

そして真ん中に小さな渦が出来ていく。流れが次第に速くなり荒々しくなっていく。少しの間激流が続くと突然流れがスンと消える。渦の中心だった場所から垂直に、少しだけ上がった場所に水滴が溜まっていく。ある程度の大きさまで集まった水滴は少しだけ揺れながらそこを離れて落ちていく。その水滴が雫としてポツン。ポツン。と頭の中を叩く。雫に叩かれ波紋になってそれが新しい波紋を作る。

 ――――おはよう。俺の頭と意識。


 心底面倒ではあるが俺は布団に別れを告げ台所に向かう。

カウンターキッチンのシンク横に置いてある時計が午前6時を指している。

 冷蔵庫からバターと卵2つとベーコンを取り出してコンロ下の収納からフライパンを選び取る。コンロに置いたフライパンに中火で火を付けバターをフライパンの中に一欠片。バターが馴染んだら卵を割り入れ黄身と白身をかき混ぜる。固まる前に塩と胡椒をいれて火を止め余熱で卵に火を通す。少しとろみが残る内に皿に移して卵は終わり。

 フライパンを軽く洗いもう一度コンロへ中火で火にかけ水気を飛ばしてベーコンを入れるベーコンが音を立て踊るようになったら裏返す。また音を立て始めたら焦げ目を確認して皿に移す。

 昨日の夜に作った味噌汁に火を通してお椀に入れて、炊飯器の冷やご飯を茶碗に移して電子レンジで40秒。

ご飯を待っているうちに洗面所で顔を洗いお湯を使って寝癖を直す。

 そうこうしてると台所から、チンと硬い機械音。ごはんが湯気を立てて俺の前に佇む。作った料理を食卓へ運び椅子に座る両手を合わせ、

「いただき―――――」

カリカリカリカリカリカリカリカリ

 壁の薄い集合住宅とは言えどこからか聞こえる引っ掻き音。

俺が住むのは4階建ての3階の角部屋。動物が入ってくるような隙間も無いしそもそも音のするのが何も無いはずの面。

………。

そっとしておこう。

気を取り直して。

「いただき―――――」

カリカリカリカリカリカリカリカリ

………。

気にしない気にしない。

ではでは、

「いた―――――」

カリカリカリカリカリカリカリカリ

「だき―――――」

カリカリカリカリカリカリカリカリ

「だああああああああああ!!!!!」

 休日の優雅なとは言えないまでも規則的な生活に落ち着いた朝食が取れるというのにご飯を食べようとすると聞こえる引っ掻き音。俺は仕方なく音のする方へ足を運ぶ。

 換気用の小窓が一つ。両開きの窓で外に押すように開くタイプだ。そして窓の片面には黒い影。2つの三角と細い棒がくねくねとしている。「にゃぁぉん」と撫でるような声。

成る程。これが本当の猫撫で声…。

やはりそっとしておこう。

俺は窓の向こうに手を振ると食卓に戻るために背を向ける。

窓から振り返った瞬間には猫の大熱唱が始まっていた。

引っ掻き音と鳴き声での熱唱。勘弁してくれ。

ご飯も冷めてしまう。諦めた俺は猫が駆け込んで来ないように片手を窓の前に開き、もう片方の手で窓を片面だけ開けた。

案の定猫は駆け込んで来ようとした。勿論全力で拒んだ。

頼むから帰ってくれ…。

猫は頭で俺の手を押しどけようする。

俺は手の平をひろげて猫の侵入を阻止しようとする。

 少しの間、人対猫の攻防が続く。不意に猫の力が弱まり諦めたのだと俺も力を弱めた。すると猫の瞳が怪しく光り手と窓の間をすり抜け家の中に駆け込んだ。

 してやられた…。

猫はそのまま食卓の方へ進んで行き俺は慌てて窓を閉めて追いかける。

侵入者は食卓の椅子の上に座り俺の方を見ている。その表情は笑っているように見えて、無性に腹が立つ。

そのまま猫は椅子の上で寝だした。

 猫を無理矢理移動させて食事に有り付こうかと思ったが素直に移動してくれるとも思えない…。

仕方なく場所を対面に移して食事を摂ることにした。

ふぅ…。それではそれでは。

「腹減ったにゃぁ…」

――――――――はいぃぃぃぃぃ???


続く。

読んで頂きありがとうございます。

こんな日常があったら良いなと思える世界を紡いでいけたらと思いますのでこれからもよろしくお願いします。

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