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第006話 練習で魅せます!

ブクマ、評価などありがとうございます。書く喜びをひしひしと実感しております。

 それからの二年間は充実していたせいか、あっという間に過ぎていった。

 勉強も優秀な成績をキープして、両親との約束も果たしながら私は野球に熱中している。

 身長もすくすく伸び、子供なりに体力もついてきて、それに伴って前世からの技術も徐々に開花した。


 そんな私をコーチ陣が放って置くはずもなく、夏前になるとマイナー部門のチームの練習に合流するよう言われたのだ。

 そして夏になり、本日土曜日は翌日に対外試合を控えての練習日である。当然コーチ陣も選手達も普段以上に熱が入る。


 私はショートのポジションについてまだあどけない声で「ばっちこーい!」と野球界独特の声を張り上げている。今はコーチの一人がピッチャーを務めるシートバッティング形式の練習で、サブ組から攻撃のため、守備についている。そう、現時点で私はジュニア担当コーチの推薦によりレギュラー組なのだ。この調子なら由香さんとの約束が叶えられそうだよ。


 投じられたボールをバッターが打つ。一人目は一二塁間やや後方の高いフライ。セカンドの由香さんが下がって捕球する間に、私は二塁ベースカバーに素早く入る。


 二人目はレフト前ヒット。中継に走った私にレフトからボールが返ってくる。


 三人目が三遊間にゴロを打った瞬間、私は全力で走り出す。二塁経由のダブルプレーは無理と最初から判断し、慣れれば最もバウンドを合わせやすいショートバウンドで捕球して、思いっきり右脚を踏ん張って一塁へ送球。速く低い送球はワンバウンドしてファーストに届き、難なく捕球されて打者走者はアウト。


「紗友ナイスキャッチ! 送球も良かったぞ」


 打撃と守備の両方をしっかり観察しているコーチに言われた。今の守備は、送球時の右脚の踏ん張りが効いて、身体が三塁方向に流れることなくファーストにしっかりストライク送球できた良いプレイだったと我ながら思う。身体が流れると送球も逸れやすいからね。


 五人目がファーストゴロに倒れ、六人目が打席に入る。一球空振って、二球目を打つとショート正面のゴロ。


 私はそのまま真っ直ぐ捕りにはいかず、やや三塁方向に膨らんでから一塁方向に切れ込むように捕球し、その勢いのままファーストへノーバウンド送球。当然一塁はアウトだ。


「ナイスショート!」


 ピッチャー役のコーチが声を掛けてくれる。


 ショートは正面のゴロには、真っ直ぐ走らず三塁側から回り込む意識で捕ったほうが捕球後に送球をしやすいんだよ。ある程度高いレベルなら別だけど、誰だって斜めに正確な送球をするのは難しいからね。

 私に求められるのは確実性だから、そこを徹底するよ。


 後はベースカバーにこそ入ったけれど、守備機会はなかった。

 そして今度はこちらが攻撃である。


 コーチからレギュラー組に打順が言い渡され、私は七番だった。由香さんは二番みたい。私はマイナー部門では最年少だし、七番でもまだ期待されている方だろう。


 四番を打つのは由香さんと同い年でエースの山西貴大(やまにしたかひろ)くん。でもエースと言っても、リトルリーグは球数制限が厳しい為、他にもピッチャーの練習をしている子は数人いる。私もその中の一人だ。


 攻撃が始まると、やはりレギュラー組はよく打つ。一、二番の連打の後三番は惜しくもサードライナーでアウトになったが、四番の貴大くんの打球はレフトの頭上を高く超えて、二点タイムリースリーベース。やっぱり体格は打球の飛距離に影響するなあ。プロでは大柄じゃない選手だって結構ホームランを打つし、体格が全てではないのは身に沁みて知っているけど、それはプロレベルの肉体と技術があっての話だね。


 次打者が貴大くんのバットを回収してきたので受け取ると、やはりトップバランスと言われる、先端に重心があって遠心力を利用して飛距離を稼ぐタイプのバットだった。しかしこれは筋力を必要とするしバットコントロールが難しい。


 私の使っているバットはミドルバランスと言われる、中心部分に重心があってスイングしやすく、飛距離と扱いやすさのバランスが考慮されたバットだ。グリップ側に重心がありスイングの際に軽く感じられるカウンターバランスと言うバットもあるが、私は反復した素振り練習の効果と技術でミドルバランスをしっかり振り切れるので使っていない。


 やっぱり低くて強いライナーを打とう、と改めて考えていると五番がヒットで出塁したので準備を始める。

 六番もヒットで続いて、ランナー一、二塁と私にチャンスメイクをしてくれた形になった。


 打席に立ち、ゆったりとしたスタンスで構える。インパクトまでは力を抜く意識が大事だ。一球目、アウトロー。ストライクだが、打っても良くてシングルヒットなので、練習でアピールしたい私は見逃す。二球目、真ん中やや外寄りの球をコンパクトにバットを出して、インパクトからフォロースルーを大きくしたスイングで捉えた。


 打球はショートの頭上をライナーで超えて行き、左中間を転がる。その間に私は二塁へ到達、二人のランナーはホームインしていた。やったね、二点タイムリーツーベースだよ。


 次の打者のセカンドゴロで私はしっかり三塁へ進塁し、九番のセンター前ヒットで生還した。


 レギュラー組は二巡目もやるということで、そのままツーアウトランナー一塁で一番打者に回った。一番打者は残念ながらレフトフライに倒れたが、シートバッティングなのでノーアウトランナー無しで二番の由香さんを先頭にして続行される。


 由香さんは初球をライト前に運んであっさり出塁した。皆も打撃好調で、私の二打席目はワンアウトランナー二塁で迎えることとなった。


 一打席目は長打で二人のランナーを返す為に初球を見送ったから、二打席目は初球から打っていく積極性を見せよう。二塁ランナーを返せば三打点目だしね。


 そして運命の初球はインローの難しいボールだった。だけど私は左肘を上手く捌いてレフト線へ打球を放つ。これは二塁行けるね。打った瞬間にそう判断すると、全力疾走のまま外へ膨らんで、ベースを踏みながら内へ切れ込んで最短距離を走って二塁へスライディング。レフトから送球は来たけど余裕でセーフだった。


 コーチへ届け、この野球センス!


 だって明日の試合にレギュラーで出場して、由香さんと二遊間を組みたいんだもん。


お読み頂きありがとうございます。

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