表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/49

第010話 切り替えが大事なんだよ!

アクセス、ブクマ、評価などありがとうございます。励みになっております。

試合描写のテンポに悩み中です。

 意気込んで迎えた二回裏の攻撃で、変化が見られた。

 初回にあれだけ快音を響かせていた打線が、打ちあぐねているのだ。スイングに気負いからくる力みがある。


 一番は高く上がったセンターフライでアウト。二番の由香さんはフルカウントからフォアボールで出塁したものの、続く三番がライトへの浅いフライ。


 ツーアウト一塁で四番の貴大くんに打順が回る。ツーボールワンストライクのバッティングカウントから打ちに行くが、センターライナーに倒れてしまった。これは飛んだところが悪かったね。ちょっと左右にずれていたらツーベースだったかも。


「打撃の指示は次な! 頭切り替えて守っていこう」


 コーチもやはり思うところがあるようだが、守備を優先させたようだ。


 私もそれは大事だと思う。プロでも一流の選手ほど、ワンプレイごとの切り替えが上手い。エラーの直後に好守備を見せたり、次の打席で挽回したりと、長いシーズンで見れば枚挙に暇がない。それほど顕著な例でなくとも、一試合ごと、一打席ごとといった切り替えを当然のようにしている。


 私達が戦っているのは一発勝負のトーナメントだし、それに限りなく近いものが求められる。過酷かもしれないが、失敗を引きずっているようでは上に行けないのだ。

 ショートの守備位置にいち早くついた私は、積極的に声を出してチームを鼓舞していく。


「一球一球集中していこう! この回大事だよ!」


 三回表は七番打者からの下位打線だが、だからこそ万が一にもチャンスを作られてはいけない。しっかり三人で打ち取ることが肝要だ。


 最年少の私に真っ先に言われて、皆も続いて声を出してくれる。試合の最中に年齢がどうこう言う子はいないが、やはり最年少の私が率先して引っ張っていこうとすると、皆も意地を出してくれる。負けん気の強い仲間でありがたい。


 貴大くんは好投し、順当に下位打線を抑えた。三振一つ、フライアウト二つ。フライは二つとも球威で勝った、イージーフライだった。相手打線の主力を抑えきったボールなのだから、下位打線が力負けするのは道理だろう。


 そして、貴大くんが本当に凄いのはスピードよりもコントロールだな、と私は気付いた。フォームもリリースポイントも安定していて、ストレートなら確実にストライク先行のピッチングをしてくれる。際どいコースも狙っていける。本人も自信を持って投げてるんだろうな。


 走ってベンチに戻った私達ナインにコーチが指示を出す。


「初回に五点も取れたから、皆力んじゃったな。〇対〇だと思って練習通りきっちり打っていこう!」


「はい!」と全員揃った返答。


 横を見ると、先程無得点に終わった一番から四番の四人が悔しそうな表情をしていた。

 ふとこちらを見た貴大くんが、五番打者の方を向いて声高に言う。


「先頭出ようぜ! 紗友がまた打ってくれるぞ!」


 どうやら私はすっかり貴大くんの信頼を勝ち取ったようだ。嬉しいね。

 それをきっかけにベンチから五番に声援が飛ぶ。


「打てる打てる!」


「いつも通りに!」


 それを受けて打席に入った五番は、より気合の入った声でピッチャーに向かって叫ぶ。


「さあ来い!」


 ネクストバッターズサークルでしゃがんで見守る私。出塁してくれたら頑張ってホームに返しちゃうよ!


 前の打席のショートライナーも、内容は悪くなかった。貴大くんの後を打つバッターだし、昨日のシートバッティングでも、コーチの球をしっかり捉えてヒットと長打にしていた。他のチームなら四番を打つ可能性だってあるくらい良いバッターだ。


 初球、インコースに外れてきた球をあっさりと避ける。集中出来ている証だ。


「ナイスセン!」


 ベンチから皆が言い、私も叫ぶ。


「見えてる見えてる! 打てる球だけいこう!」


 片手でバットをくるりと一回転させながら、軸足を元の位置に戻しスッと構え直す。


 二球目、外角高めに来たボールをスイングすると、打球は良い角度で伸びていき右中間を破った。外野がクッションボールの処理にもたつくのを見たコーチャーの指示で、バッターランナーは一気に三塁へ。


「ナイバッチ!」


 皆が高揚して叫ぶ。


 また打点が稼げるよ、と私がウキウキしながら打席に向かおうとすると、相手ベンチから投手交代が告げられた。失点多いし球数も結構嵩んでるもんね。


 出てきた投手の投球練習を観察しながら、タイミングを取って素振りをする。

 途中、腕の振りが緩いな、と思ったら投じられたのはカーブだった。しかもおそらく良いコースに決まっている。ストレートは先発ピッチャーよりも遅いが、緩急を付けられるのか。


 でも私の目から見れば、カーブが来ることはリリースされる瞬間までに分かる。問題ないかな、と思い直しストレート待ちからカーブを打つスイングで素振りをしてみる。


 グリップを溜めて身体の開きを抑えて、軸足に体重を残し、身体全体で拾って迎えるイメージで振る。うん、大丈夫そう。私は元来感覚で打っていたタイプなので、理屈はシンプルに捉えているのだ。


 ただ、アウトロー一杯にカーブを決められると私のリーチではやや厳しい。前世の長い腕なら余裕で拾えちゃうんだけどな。


 幸いランナー三塁と、シングルヒットで充分な場面だ。


 前の打席で先発ピッチャーのストレートを完璧に捉えてみせたから、キャッチャーは私にカーブを多用してくるだろう。


 ならカーブ打ちのお手本になっちゃうよ!


お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ