第001話 不調のエースは事故に散る
なろう的な要素を取り入れた作品も是非書きたい!
となりまして、二作同時進行で投稿させて頂こうと思います。
皆様よろしくお願いいたします。
三年前、日本での所属球団を見事日本一に導く活躍をした俺は、最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振の四冠に加えて、シーズン最高の先発投手へ授与される沢本賞の栄誉を賜り、最高のシーズンを終えてポスティングシステムによりメジャーリーグへと移籍した。
そして渡米一年目には最優秀新人選手賞を獲得し、二年目には先発ローテーションの一番手、つまりエースとして、チームのワールドシリーズ制覇に貢献した。だが、三年目の夏先に疲労から不調が続いて投球の質を保てなくなり、メカニックの見直しとリフレッシュという名目でマイナー落ちを経験することになった。
3Aには将来有望な若手や、メジャーとマイナーを行ったり来たりする中堅、更にはメジャーでもある程度活躍したことのある選手など、様々なプレイヤーがいる。そんな中でもメジャー契約で破格の年俸を得ている俺は、皆をディナーに連れて行くことも多い。ハンバーガーリーグと揶揄される質素な昼食という環境では、それは皆に感謝されるし、マイナー落ちしたメジャーリーガーのノブレス・オブリージュと化している。
今日も移動は長旅で、一般の飛行機に乗る。メジャーでは豪華なチャーター機だが、3Aでは一般の飛行機に乗るのだ。それでもまだマシな方で、2A以下だと広いアメリカをバスで移動することになるから文句は言えない。席に着いた俺はスマートフォンでお気に入りの音楽を聴いている。そして疲れて眠気が来れば、自らの大柄な体格にはやや小さいシートに身体を預け、仮眠するのだった。
それから意識が覚醒した後のことは、突然の展開であまりよく分からない。
けたたましい音や他の乗客の悲鳴に目を覚ますと、目の前には緊急時用の酸素マスクが下りてきていた。
飛行機は大きく揺れ、高度がどんどんと下がっているように感じられた。
パニックにならないよう、努めて平静にマスクを装着しながらも、俺はこの先の死を予感していた。
遅からずこの飛行機は墜落してしまうのだろう。ハドソン川の奇跡のようなケースでもない限り、飛行機の墜落とは悲惨なものだ。故郷の日本でも、有名な墜落事故では生存者は僅か四名だったと朧気に記憶している。
飛行機はどんどん揺れが激しくなり、窓から見える風景から察するに高度も更に速いスピードで落ちている。機内では非常事態のアナウンスや乗客の悲鳴、怒号が入り混じっている。
やがて凄まじい音と激しい衝撃が機内を襲い、俺の意識はそこで暗転した。
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