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第47話 なんじゃ、この世界では今のを攻撃というのか?

「ミカエラ、ゆっくり寝てていいぞ?」


「大丈夫、見送りぐらいするわよ」


「すまんなこんな時なのに……」


「いいのよ、ラオじゃなきゃどうしようもないんでしょ?

 それに、そんなワクワクした顔で済まないって言われてもねぇ……」


「……すまん。ゆっくり体を休めるんじゃぞ。もう一人の体じゃないんだから」


「ええ、貴方もよラオ、必ず帰ってきてね。二人で待ってるわ」


 ミカエラは大きくなったお腹をかばいながらそっと目を閉じる。

 それに答えながら、優しくミカエラを抱きしめた。


「行ってくる」


「いってらっしゃい」


 扉を開けて外に出るとすでにガルアとキースが部隊を指揮している。


「待たせたな」


「すみませんラオ様、大変な時期に……」


「ラオ君僕たちだけでも何とかしてくるよ?」


「大丈夫じゃ、それに新種じゃろ?」


「ミカエラ奥様は私が見ておきますので」


「ああ、アンジー頼んだぞ」


「それでは行くぞ!」


 その場で大規模魔法を発動する。

 ここに集まった兵を包み込むように魔方陣が展開され皆を包み込んでいく。

 スッと落ちるような感覚が起きればすでに別の場所に転移している。

 これはワシとガルア、キースで発動する大規模転移魔法。

 マークしている場所なら500人くらい一度に転移できる。


「さて、何階層まで進んだんじゃ?」


「30階層です。そこの階段を守る新種のモンスターで被害が出たので撤退しました」


「おお、もうそんなに進んだのか……そこであの映像のモンスターに出会ったのか」


「うん、ちょっと被害を抑えきれなくて一旦引くことになったんだけど。

 ラオ君は大変な時だからアンジーさんと行くつもりだったんだけど……」


「いやいやいや、折角だしな、あいつは是非戦いたい」


「はっきりいいますねラオ様」


「まぁ、ラオ君は好きだよねバリバリの無手を使ってくる相手なんて珍しいから……」


「いや、なかなかあ奴は使い手じゃぞ、たぶん南方の鳳凰の流れを……」


「さ、まずは30階層まで行きますよラオ様」


 最近皆がワシの話を聞かない……


「新大陸の開発も進んでいますが、我々が今のところ一番進んでいますね」


「そうじゃの、王からはこの地での全権を与えられてめんどくさい限りじゃが、わしも少しは落ち着かんとな……」


「そうだよ、もうすぐお父さんになるんだから……ああ、僕も娘に会いたいよ」


「近衛も随分成長しましたが、まだまだお二人レベルは……

 せめて私くらいには匹敵してほしいんですがね?」


 背後についてくる兵たちから無理ですよ……とため息が聞こえる。

 キースはかなりスパルタで兵たちを鍛えてくれている。

 そのおかげでわしたちがいち早く新世界の探索を進められている。


「新大陸のダンジョンから得られるものは別格ですからね、これからはどれだけ多くのダンジョンを囲えるかが探索のカギになりますね」


「その分強敵も多いが、心が躍るというものだ」


「ほんとに嬉しそうだからなぁラオ君は……」


 雑談しながらではあるが、きちんとキースの鍛えた精鋭たちが敵を倒しながら誘導してくれている。

 なんというか、接待を受けているかの如くダンジョンの深部へと進んでいる。


「ここか……」


 30階層ラストの部屋、その前の扉をゆっくりと開いていく。

 正直、胸が期待ではち切れそうだ。

 巨大なホールは煌々と照らされており、その中央にはリングが用意されている。


「ヨッシャーーーー!! よっしゃよっしゃ!!」


 独特の鳴き声の生物がそのリングに立っている。

 顔は、虎。

 体は人間、鍛え抜かれた肉体に真っ赤なパンツ一丁、そしてブーツだ。


「いやー、暑苦しいのぉ!!」


「ヨッシャー!! ヨッシャヨッシャ!!」


 腕と胸でばっちんばっちんと音を立ててやる気は全開だ。


「リングに上がる人数が増えるほど強くなります。

 そこに気がついたときにはすでに重傷者が……」


「死者を出さなかったんじゃから十分じゃ、ではでは、ちょっと遊んでくるとするか」


 ひらりとリングに飛び上がる。


「さぁ、やろうか?」


 ワシも調子に乗って指でくいっくいと挑発する。


 カーン。


 どこからか戦いのゴングが鳴る。


「よっしゃよっしゃ!」


「こいやおらぁ!!」


「いやー、ラオ様輝いてますね~おおっとラリアットー! 決まったー!!」


「本当に好きだよねぇー、トップロープからー……跳んだ―――!!」


「「「「ラーオ! ラーオ!」」」」


「おおっと! 背後に回って、脳天から雪崩式のバックドロップだぁ!!

 なんとラオこれを華麗に回転して避けて逆に背後に回ったー!!

 腕を取ってなんと飛んだ前に回り込んでダブルアームスープレックスだー!!

 これには相手選手も完全に翻弄された―!」


「おおっとふらついた隙をついてトップロープからラオ選手が飛んだー! 

 これは高いぞー! そしてそのままドロップキーーーーック!! たまらず吹き飛んだ!」


「相手選手、立ち上がりはしましたが目に見えてダメージが大きい!!

 ラオ選手もかなり相手の攻撃を受けていますが、おおっとここで!?

 素早く相手の懐に潜り込んでボディに掌底がめり込んだー!

 たまらず体がくの字に折れるぅぅぅ!!」


「凄まじい踏み込みの力を全て肩に集めてのショルダーアタック、くの字に折れた体が弾けるように高々と舞い上がる! そしてラオ選手跳んだー!!

 こ、これは! 幻のスクリューパ〇ルドライバー!!

 二人分の体重に位置エネルギーがミックスパウンド!

 深々とリングに突き刺さる! そしてすぐさまフォール!

 1ッ!! 2ゥゥゥゥ!! 3ィィィィィィィ!!!!!!!!! 決めたー!!

 ラオ選手決めました3カウント!!」


「勝者!! ラオ!!」


 ドワアアアアァァァァァァァァーーーーーーー!!

 その時、会場は確実に一つになっていた。





「……はぁーーー……ほんと男って馬鹿ね」


 ワシの話を聞いてミカエラが壮大なため息をついた。


「そのまま調子に乗って皆が止めるのも聞かずにダンジョンに潜って……

 3か月……酷いパパですねー」


 ミカエラの腕の中でキャッキャと嬉しそうに赤子が笑っている。

 ワシとミカエラの子供、アルテラ。何ものにも代えられない大切な一人娘だ。

 結局ダンジョンを制覇して帰ったら、すでに生まれてから2か月が経過していた。


「で、今日の話は?」


「ええと……そのじゃな……」


「ダンジョン制覇で得た物から凄いのが出来たし、さらに先に新しいエリアを見つけたから、その性能を試すためにも出かけたいなー……でしょ?」


「ぬぐっ……キースじゃな……」


「いいわよねーアルテラー。パパは画面の向こうにいる人になるんだもんね~」


「そ、それは……」


「嘘よ嘘。いってらっしゃい。貴方から冒険を取り上げたら好きじゃなくなっちゃうわ。

 ずっと冒険していつまでも素敵な旦那様でいてね。

 それに、この子が育ったら、私も復活するからね~♪」


 まるで私もいく~とでも言っているようにニコニコと笑う天使がそこにいた。


「そうじゃな。わし、頑張る!」


「パパ頑張って~」




 新世界はまだまだ目の前に広がっている。

 ワシは前の世界ではつまらん狭い世界で人を殺して何かに至ったように勘違いするところだった。

 新たな世界に生まれ変わって、未知のことをたくさん知る喜びを知った。

 そして、まだまだこの世界はわしの知らないことで溢れている。

 妻との時間や、子供の成長を楽しみにする気持ちさえも知らなった。

 まだまだ、これからも冒険は続いていく。

 どんなに強い相手と出会っても、どんなに強大な攻撃を食らっても、儂はこう言って笑っていくと決めたんじゃ。


「なんじゃ、この世界では今のを攻撃というのか?」


 越えられない壁なんてない。そんなもの糞くらえじゃ!


「よし、行くぞガルア、キース、アンジー!」


 まだまだわしの冒険は終わらない。





色々と産みの苦しさを味わった作品でした。

それでも小説を書く楽しさを改めて教えてもらいました。

これからもいろんな作品を描いていきたいと思います。


もしよろしければ、他の作品もお楽しみください。


長い間お付き合いいただきありがとうございました。

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