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第四話 学校

 あのギフトの件から数週間ほどたったある日、わしの静かで穏やかな日常に変化が訪れる。


 ドンドンドンドンドン!


 けたたましいノックの音が小さな村に響く。ノックと言えば聞こえはいいが、実際には叩く戸が壊れても構わないという勢いで乱暴にこぶしを叩きつけていると言ったほうが正しい。家の外にはそれなりに鍛えられ武装した男たちが7人。大した使い手でもないが、両親に何かあっては困る。警戒は怠らない。なぜ自分の寝室にいながらそんなことがわかるかというと、まぁ隠しもせずドタドタと歩いてくれば否が応でもその気配を読み取ってしまった。母親が眠い目をこすりながら対応している。高圧的で嫌な話し方をする男が、まぁわしのことについて話している。


「仕方がないのぉ……」


 寝たふりを決め込んでもあまり事態が転がらない気がするのでわしは寝所から身を起こして玄関に向かう。


「誰か来たのおかあさん?」


 せいぜい子供らしく振舞ってやる。


「あら、ラオ起きちゃった? なんかね、王立学校の使いの方が……ちょっととうさんを起こしてきてくれる?」


「はーい」


 後ろに並ぶ男たちがひそひそと話しているが丸聞こえだ、間抜けそうな子供で悪かったな。とてもすごそうに見えないなとか言ってるお前の目は節穴なのは間違いないぞ……


「お待たせしました」


 この状況でいびきをかいて寝ている父親を叩き起こして顔を洗わせて連れていく。まだ彼の脳味噌は半分ぐらい眠っていそうだ。


「そなたが父親か、それでは改めて、汝の子であるラオは、我がアネモア王国王立学校が預かり、ギフトの内容を調べ、有益と判断された場合、特別に王立軍への入隊もありえる。よって、来月中には王都オーベランの王立学校への入学手続きに来るように! これが国王陛下の通知書となる」


「う、うちの子が、あの王立学校に!?」


「そうだ、このような田舎から王立学校へ入学、これは特例と言ってもいい」


「あ、あなた!?」


「ら、来月ですね……」


「国王陛下の印の入った通知書だ。その意味よく考えてな、それでは失礼する」


 男たちは自分たちの伝えたいことだけを告げてどかどかと帰っていく。少し離れた場所にある馬車に乗ると口々にうちの村の悪口を言っている。馬に蹴られて死んでしまうがいい。


「あなた、ラオはまだ5歳よ!?」


「こ、断れるわけがないだろう。国王様の、命令だぞ」


 通知書とは名ばかり、これは事実上の命令なんだ。


「で、でもラオが……」


「ラオ、王立学校の話は村長から聞いたことがあるよな?」


 いつになく真面目な表情でベルドはわしに語り掛けてくる。


「この国、アネモア王国王都にある学校でこの国のエリートが通う学校、ですよね?」


「そう、一般的には大金持ちやそれこそ将来を約束されたギフト持ちが通う学校だ。普通の子供はすさまじく厳しい試験を潜り抜けないと入学できない。そこに、国王様直々に入学を許可してくれるそうだ。これは、凄いことなんだ」


「ああ、ラオ。まだこんなにも幼いのに……うちを離れて王都で一人暮らしなんて……」


「王の命令である以上断ることはできませんよね?個人的にも学校には興味があります。父様、母様、僕その学校へ行きます!」


 断れるはずもない。もしも万が一従わなければよくて国外追放、悪ければ死罪まであり得る。それに、離れてもここがわしの家じゃ。二人は新しく生まれる弟と妹と共に幸せに暮らしてほしい。


「ああ、ラオ……なんていい子なのかしら……きっとあのギフトも素晴らしいものに違いないわ!王立軍へ入ってどんどん偉くなるんだわ!」


 シーラは涙を流しながら抱きしめてくれる。ありがとう、母としてのぬくもりは決して忘れません。


「ラオ、お前はどこに行っても俺の大事な息子だ。どんな結果でもいい、無事に帰ってきておくれよ」


 そんな二人をベルドが抱きしめる。父の愛も、忘れることはないだろう。


 ……しかし、不安要素はある。最近この父親わしの狩りに依存しすぎている。これでわしがいなくなって貧しい生活に戻ったら弟妹が可愛そうだ。


「そうだ、父様、母様少し待ってください。僕が旅立つ前に渡したいものがあります」


 わしは部屋に戻り引き出しに貯めていたあるものを持っていく。


「こ、これは……まさか……精霊石?」


「はい、森の中とか川にあったものを集めておいたのです。


 これは嘘だ、実際は人工的に作ったものだ。精霊石というのは魔力の結晶が石になったものだ。普通は魔力濃度の濃い秘境などで手に入れるか、強力な魔物の体内で生成されたものを手に入れるしかないのじゃが、ちょっと練習がてら魔力を凝集できるだけ凝集してみたら物体化したので暇な時に鍛錬代わりに作ったものだ。一度固体化した魔力は元の魔力に戻すのに魔道具と呼ばれる装置が必要になる。本当は緊急時に砕いて魔力回復に―とか考えていたのじゃがそういうわけにもいかなかった。


「お父さん初めて見たよ……きれいなものだなぁ……しかも、いろんな色があるってことは……」


「なんだか運がいいみたいでいろんな属性の石が……」


 わしが作り出したもののサイズなら一個で銀貨5枚は固い。結構作ったからこれで家が貧困に悩むことは無いだろう。


「村の皆さんにも分けてあげてくださいね、凄くお世話になりましたから」


「ああ、ああ、ほんとにラオは優しい子だ……」


 こうして抱きしめられていると、少し寂しくなるのぉ。


 それでも学校には興味がある王立学校と言えばこの国の最高学府、この世界をさらに知るためにもしっかりと学ばねばな!


近いうちに

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