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第三話 謎のギフト

言い訳はしない。


「温かい光が降り注ぐ大地に生きる民の神殿へようこそ」


 相変わらず長い名前の神殿だ。神殿とたいそうな名前を付けているが、実際には教会と言ったほうがしっくりくる。


「神父様、神の加護のおかげでうちの子も今日で5歳になりました。神の祝福と『神ギの贈フり物ト』見の儀式を受けに参りました」


 父親が緊張した面持ちで神官に話している。田舎暮らしでこんな立派なところで偉い人と話す機会も少ないから仕方がない、もう一つはなんと、お布施として銀貨3枚も納めていた。銀貨3枚!うちの一月の生活が賄える大金だ。驚いて母親を見ると、声には出さずに大丈夫と言われた。


 なるほど、父親も緊張するわけだ。この世界のお金はゼニー。神が作った硬貨によって管理されている。ああ、この世界は『神がいることを様々な現象ですべての人間が理解している』世界じゃ。話を戻すが、お金もその一つ。国家が発行するのではなく、神が用意している。小さい順から、石硬貨、銅硬貨、鉄硬貨、鋼硬貨、大理石硬貨、銀硬貨、金硬貨、白金硬貨、魔鋼硬貨となっている。それぞれ、1、10、100、1,000、10,000、100,000、1,000,000、10,000,000、100,000,000となっている。この硬貨の凄いところは、偽物は触れただけでわかる。神の奇跡なんじゃろう。まさに、硬貨の効果じゃ。





 つまり、銀貨3枚とは300,000ゼニー。大金じゃ。わしのためにそんな大金をかけてくれる親に心から感謝する。そんな清い心で感謝したわしの耳に父親がブツブツと呟いている言葉が入ってくる。


「大丈夫、うちのラオなら凄いギフトを持っている。きっとこの何倍も稼いでくれる。それにこの金だってラオの狩りのおかげだしな。よし、そう思ったら落ち着いてきたぞ!」


 台無しだよ父さん。


 後で知ったことじゃが、このギフト見は5歳の誕生日にやるのが最も正確にわかるために高額で、もっと大人になってからだと一部が隠れてしまうことがあるそうじゃ。ただ、それは教会側も知っているのでこの通り高額になっている。この世界での成人の15歳の時に見てもらうのは10,000ゼニーだそうだ。どの世界も世の中はゼニーっというわけじゃ。


「さぁ、神の子ラオよ。こちらへ」


 神父様に言われるがままに台座の前に立つ。台座の上には美しい少年が描かれている。ミラ様だ。その横に美しい水晶玉が乗せられている。


「神に祈りながらその珠に手を乗せなさい、さすれば神が汝のギフトを指し示してくださるでしょう!」


 言われたとおりに珠に手を乗せる。ほのかに温かく心地が良い。ミラ様へこの世界に送ってくださったこと、それに動物と触れ合う時間、そして家族を与えてくださったことへのお礼を心の中で繰り返す。さらに、願わくば母のおなかの中にいる弟か妹の幸せを……


 わしが祈りを捧げ始めると水晶玉は淡く光り輝き横に置かれた紙に文字を焼き付けていく。少し焦げ臭いにおいが鼻腔をくすぐるが、弟たちのため目を閉じて熱心に祈っておく。


「神のお告げが下りました……? ん?」


 ん?


「これは……なんだ?」


「どうされました神父様?」


「なにかうちの息子の結果に


「いや、なんというか……ギフトは……どうやらある、いや、むしろ凄いことで3つもある。ただ、その……見てもらえばいいわかる」


 獣の皮を鞣した紙に焼け焦げて現れた文字。そこにははっきりと書かれていた。


 天理


 地理


 人理


 なるほど、月影の心得じゃな。


「……なんなんだこの模様は?」


「さぁ?」


「え?」


 ……そうか! この文字は前の世界の文字、この世界の文字と全く異なる!わしも始め苦労したんじゃった。暗号だと思えばそこからはすぐじゃったが……前の世界では、天理てんのことわり地理ちのことわり人理ひとのことわりといえば月影の心得に当たる。簡単に言えば外部からの影響、自分自身の影響、そして人と人との影響を深く理解せよ、と言ったところだ。


 しかし、この世界の人間からすれば読めもしない図形が記されているようなものに見える。あえて説明しても、そこからがめんどくさいのですっとぼけておくのが得策。


「な、なんにせよ3個もギフトがあるなんて英雄にでもなるのかしらうちの子は!」


「そ、そうだよな、何かはわからないけどすごいことだめでたいめでたい!」


「そうですね、神はたくさんの祝福をラオに与えたことは間違いありません。おめでとうございます」


 この、謎のギフトを3つ与えられた子供がいる。という話題が広がるのには、時間がかからなかったのじゃ。


 そもそもギフトとは何かというと、この世界に生まれる人間に神が最初から与える特殊な能力の事だ。例えば火魔法の才、剣の才、鑑定者の才などいろいろと存在する。ギフトはない人も多い、むしろ一つでもあればその道を行けば一流の世界に足を踏み入れられることが約束されているようなものだ。誰にも彼にもあるものではない。二つ持ちにもなると各国から争奪戦が始まり、3個ともなると未来は英雄かと騒がれる。もちろん、二つあっても掃除の才と測量の才なんてこともあって、家政婦か地図師かどっちに進むか? みたいなことにもなる。これがうまくかみ合うと、英雄が生まれる。そういう意味ではわしのもつ3つのギフトとやらは月影になるために必要な能力何じゃろう。具体的にどんな能力かは、わしも知らん。


「おとうさんおかあさん、ありがとうございます」


「あら、いいのよラオ、でも困ったわね。これじゃあラオは何になればいいのか見当もつかないわ……」


 個人的にはそんなギフトなんてもので生き方を決められる世界ってのもどうかと思ってしまうのじゃがね。


「そのうちわかるだろ! よし、今日はせっかく町まで来たんだ美味しい物食べて帰ろう!」


 基本楽観的で深く考えない父親のこういうところは好きだ。こうして、わしの5歳の儀式は謎を残したまま終わりとなる。これが、今後いろいろと起こる事件の引き金になることは、この時だれも予想していなかった……


 わけじゃない。わしは嫌な予感がビンビンしていた。よくわからない図形が3個、つまりそれぞれが関わり合いがありそうなギフトを三つ持った人間がいる。そう考える人間がいてもおかしくない、めんどくさいことにならないといいなぁ、そう考えざる負えなかった……


 だいたい悪い予感程、外れてほしい予想ほど当たるように出来ているんじゃ…… 



ただ、書くのみ。

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