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第十三話 便利な世の中

「ぐふっ……」


 怒りに任せてボコボコにしないだけで、ボコボコにはするんじゃがな。


「ガルア先輩、いい加減そのコマンド戦闘やめんか? 全く通用しないことはもう嫌って程わかったじゃろ?」


「そ、そんなこと言われても……どうやって……」


「日常生活と同じように自分の体を動かせばいいだけじゃろ」


「戦い方なんて知らないよー……」


「覚えればいいだけじゃろ、わしを見てわかったじゃろ? 戦い方を覚えればこういう動きが出来るんじゃ。あの貴族どもに、わしみたいに動いて負けると思うか?」


「……ラオ君」


「なんじゃい?」


「痛くないって言ったよね……」


「あー、うん、言ったな……た、戦いたかたを覚えれば、痛い思いもせずに勝てるってことじゃよ!」


「……ふぅ……確かに、手も足も出ない。君みたいな子供に、力も体も僕の方が強くても、それでも全くラオ君の動きについていけない。そんな動き、僕にもできるの?」


「この程度ならすぐじゃ、そもそも、本気じゃないぞわしは?」


「え?」


「本気なら……ちょっと盾を構えて見るのじゃ」


「い、痛いのは嫌だよ?」


「大丈夫。これも別に本気というわけじゃないのだが……」


 身体強化に、技、生前に数限りない鍛錬の集大成、無手による抜き手にて大盾を貫く。


「こんな魂も籠っておらぬ盾なぞ障害にもならん」


 わしの手がいともたやすく突き抜けた盾を、ガルアは見開いた眼で見つめて驚きのあまり思考が停止していた。


「鍛錬次第ではこんなことも可能じゃ」


「き、君のギフトとかスキルじゃないんだよね?」


「わしはあんなコマンドなぞ使わん……」


 少し思い立ってもう一度コマンドを呼び出してみて、スキルを心の中で選んでみる。


「げっ!?」


 ずらーーーーーーーーーーーーーーーーっと大量のスキルが羅列されている。生前に修めた技やこの世界にきて自主練で作り上げた魔法などもずらりと並んでいるような感じだった。

 見なかったことにしよう。


「どうかしたのラオ君?」


「い、いや。な、なんにせよ、まずはこのコマンドで戦う方法を忘れてもらうところから始めよう。

 今日はそれが知れただけで十分じゃ、さ、先輩、もう遅いし帰って寝ましょう。明日から、特訓の日々ですよ?」


「そ、そんなー……」


 コマンド式自動戦闘、戦うことが出来ない人間でもある程度の戦闘が可能で優れたギフトやスキルを持っていればそれだけで強力な戦士になれる。

 わしも他者に体を操られる感覚に、無意識に全力で抵抗してしまった性であのような稚拙な戦闘になってしまったが、本気で身を任せていたらあの場でガルアを殺しておったかもしれん。そう意味でもあれはダメじゃな、戦闘訓練が出来ん。だから余計にコマンド依存の戦闘になるんじゃな……

 しかし、コマンド方式が存在することがわかったおかげでいくつかの謎が解けた。

 森で狩りをしているときも不思議だった。捕らえることがたいして難しくないような動物がまるで幻の素材のような扱いを受けていたり、家事を少しやっただけで天才扱いされていた、その理由は……


「狩猟や様々な行動がすべてコマンドオート出来るんだろう……」


 試しに荒れた周囲を掃除するように強く念じると清掃コマンドが出てきた。


「実行」


 コマンドを選択すると、戦闘の時とは異なってきらきらとしたものが周囲を包み込んで一瞬でまるで何も起きていなかったのようにきれいさっぱり元通り、いや、床は輝き壁面に至るまでチリ一つなく美しく磨き上げられている。


「戦闘以外ではスキルさえあればコマンドのほうが遥かに効率がいい、というわけじゃな……こんなもんがあったら人間は依存するのも仕方ない……あのお方は、甘やかしすぎじゃな……」


 ふと母親のことを思い出す。彼女の食事は美味しかったし、部屋の隅々まで清掃が行き渡っていた。つまり彼女はそういう家庭的なスキルを持っていたんだな。よく考えれば調理の光景を見たことがない。そんな状態で子供が食事や家事をすれば当然素晴らしいスキルを持っている天才だと思ってもしかたのないことじゃな……


「いろいろわかった。先輩とであることも天が定めた人とのつながりなんじゃろうなぁ……感謝」


 とりあえず、今日のところは部屋へと帰ることにする。外に出るとすっかり夜も更けてあの監視するような気配だけが妙に強く感じる。


「さっさと帰るに限るな」


 多少なりとも運動をしたせいで少し服や髪が埃っぽい。


「まさか体も清掃できたりして……」


 試したら出来そうなので実行する。光が体を包み込み……


「こ、これは……き、気持ちがええのぉ~~~」


 まるで温泉でにでも入っているかのような温かさが身を包み込む。一瞬とはいえ体の疲れまできれいに掃除してくれる錯覚さえ覚えてしまう。


「おお、べ、便利すぎる……わしもダメになってしまいそうじゃ……」


 水も洗剤もなにも用いずに一瞬で服も体もピカピカになった。わしのギフト、たぶん、万能なんじゃろうなぁ。


 天を知り、地を知り、人を知り得れば万物の理を知ることとなる。

 理さえ得ればすべてのことが万事上手く行く。


 こりゃ、この世界においてはとんでもないギフトを手に入れたものじゃ……


 

ストック切れです。

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