表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖夜の約束  作者: 紅桔梗
7/11

(7)

 


「あのね、お兄さん。

 私本当は死にたくないの。

 死ぬのが怖いの。

 なんで私は死ぬの?

 なんで死ななきゃいけないの?

 なんで死ぬの?

 どうして?私まだちょっとしか生きてないのよ?

 お兄さんの半分も生きていないのよ?

 どうして……?」


 淡々と話す彼女はこちらを見ようとはしない。


「―――あのね、知ってる?

 クリスマスにはサンタさんが来るのよ?

 それでね、良い子のところにプレゼントを届けに来てくれるの。

 寝てる時にこっそり枕元にプレゼントを置いてくれるんだって。

 ふふっ。私の元には一回も来てくれたことないの。

 お兄さんは?サンタさん来てくれたことある?」


 首だけを僅かに動かし、ぼんやりと僕を見つめる。


「僕は―――」


「あはは。聞くまでもないよね!

 だってお兄さん良い子だもんね!」


「いや。来てくれなかったよ。1度も。

 どうやら僕も良い子ではないらしい。」


「えぇー?本当にぃ??」


「ほんとだよ。」


 尚も疑うように見つめる彼女の視線から逃れたくて

 僕は視線を窓の外へと向ける。


「ほら、ちーちゃん。今年もまたクリスマスが来るよ。

 ちーちゃんが良い子だって分かるようにカーテンを開けておこうか。」


「ううん。いい。

 サンタさんはすごいんだよ?だから、こんな事しなくても私のことはちゃぁんと見えてるの。

 ………ちゃんと見えてるのに、来てくれないのはきっと私が悪い子だからよ。

 私が悪い子だから、きっと私は病気で死んじゃうの。

 私は悪い子なの。」


 哀しそうに彼女はそう言った。


「そんなことは無い。

 君が悪い子なら世界中に良い子なんてほんのひと握りだ。

 君は僕が知る中で一番いい子だよ。

 だから、大丈夫。今年こそサンタさんは来るよ。」


「―――本当に?本当にサンタさん来てくれるの?」


「僕が保証する。サンタさんは絶対来る。」


「そっかぁ。お兄さんの保証付きなら安心だね。」


 そう言ってようやく彼女は顔をほころばせた。


「うん。だから今日はもうお休み?

 いつもよりたくさんお話したから疲れたでしょ?」


「うん。お兄さん、ありがとう。」


 彼女の頭を優しく撫で、彼女が眠るのを見届ける。

 とても安らかな寝顔だった。


 ―――――――――彼女に何をプレゼントしよう。


 僕の頭はその事でいっぱいだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ