(7)
「あのね、お兄さん。
私本当は死にたくないの。
死ぬのが怖いの。
なんで私は死ぬの?
なんで死ななきゃいけないの?
なんで死ぬの?
どうして?私まだちょっとしか生きてないのよ?
お兄さんの半分も生きていないのよ?
どうして……?」
淡々と話す彼女はこちらを見ようとはしない。
「―――あのね、知ってる?
クリスマスにはサンタさんが来るのよ?
それでね、良い子のところにプレゼントを届けに来てくれるの。
寝てる時にこっそり枕元にプレゼントを置いてくれるんだって。
ふふっ。私の元には一回も来てくれたことないの。
お兄さんは?サンタさん来てくれたことある?」
首だけを僅かに動かし、ぼんやりと僕を見つめる。
「僕は―――」
「あはは。聞くまでもないよね!
だってお兄さん良い子だもんね!」
「いや。来てくれなかったよ。1度も。
どうやら僕も良い子ではないらしい。」
「えぇー?本当にぃ??」
「ほんとだよ。」
尚も疑うように見つめる彼女の視線から逃れたくて
僕は視線を窓の外へと向ける。
「ほら、ちーちゃん。今年もまたクリスマスが来るよ。
ちーちゃんが良い子だって分かるようにカーテンを開けておこうか。」
「ううん。いい。
サンタさんはすごいんだよ?だから、こんな事しなくても私のことはちゃぁんと見えてるの。
………ちゃんと見えてるのに、来てくれないのはきっと私が悪い子だからよ。
私が悪い子だから、きっと私は病気で死んじゃうの。
私は悪い子なの。」
哀しそうに彼女はそう言った。
「そんなことは無い。
君が悪い子なら世界中に良い子なんてほんのひと握りだ。
君は僕が知る中で一番いい子だよ。
だから、大丈夫。今年こそサンタさんは来るよ。」
「―――本当に?本当にサンタさん来てくれるの?」
「僕が保証する。サンタさんは絶対来る。」
「そっかぁ。お兄さんの保証付きなら安心だね。」
そう言ってようやく彼女は顔をほころばせた。
「うん。だから今日はもうお休み?
いつもよりたくさんお話したから疲れたでしょ?」
「うん。お兄さん、ありがとう。」
彼女の頭を優しく撫で、彼女が眠るのを見届ける。
とても安らかな寝顔だった。
―――――――――彼女に何をプレゼントしよう。
僕の頭はその事でいっぱいだった。