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「雪だよ、ちーちゃん。」
カーテンを開け、窓の外が見えるようにする。
「綺麗だね。ほら、見てご覧よ。」
彼女を振り返り、声をかける。
「外は寒そうだね。」
目を開けない彼女に語りかける。
「……ちーちゃん。」
彼女は一日の大半を寝て過ごすようになっていた。
今日も僕は彼女が目を覚ます時を待ち続ける。
一日中目を覚まさないこともあった。
目を覚ましても1時間ほどで寝てしまうことなんかしょっちゅうだ。
それでも、彼女の強い要望で、僕は彼女の元へと足を運ぶ。
「……ん?
たっくん?」
「なに。居るよ。」
「えへへ。今日も来てくれてありがとう。」
弱々しい声と表情が、彼女の余命が短いということを物語る。
「どういたしまして。」
「ねぇ。約束、覚えてる?」
「もちろん。」
「もう、死のうと思ってない…?」
「うん。」
「そっかぁ。良かった。」
これはいつもの会話だ。
彼女はこれを聞くと安心するらしい。
最初は毎日聞かれるのが嫌だったけど、こんな些細な会話一つで彼女の心が軽くなるならいいかと思う様になった。
けれどこの日はまだ、続きがあった。
「あのね、私ね、」