(5)
「たっくん!!!!!!」
目を覚ますと眼前に飛び込んできたのは、病室の天井だった。
ああ。
ああ僕は、死ねなかったんだ―――。
「たっくん!たっくん!!」
横を見ると、少女が泣きそうな顔で僕を見ていた。
初めて見た表情で、衝撃的だった。
「聞こえてるよ。なに?」
「なに?じゃないでしょ!!!!!
ばかやろーー!!お兄さん死ぬ所だったんだよ!?
私より先に死ぬ所だったんだよ!?」
「うん。残念ながら、死ねなかったみたいだけど。」
「お兄さんのばか!!!!
私より先に死んじゃダメだよ!!」
「どうして?
僕が先に死ねば、君に心臓を作ってやれる。」
「要らない!心臓はお医者さんが作ってくれたのしかいらないもん!!!!」
「そうか。僕は死んでも役立たずなんだね。」
「ちがうの!!!!お兄さんは、お兄さんは生きているから役に立ってるの!死んだら役立たずなの!」
「……うん。」
「お兄さんが……たっくんが死ぬかもしれないって思ったらすごく怖かった。私を置いて遠くに行っちゃうんだって思ったらすごく怖かった。
もう、もうっ、目を、開けないんだっ、ておもっ、思ったら、すごく!すっごく、怖かった、、」
小さな、小さな身体を震わせ、涙声で少女は告げる。
「お願い、おねがいだから、わたしのっ、私の一生のお願いだから、
私より先に逝かないで…。」
僕よりも一回り下の子に。
生まれてから六年しか経っていない、
そんな子にこんなことを言わせてしまった。
罪悪感と情けなさが胸を締める。
「約束するよ。
僕はもう二度と死のうとしないって。」
だからどうか、泣かないで―――。
「……絶対よ?」
そう言って差し出す彼女の小指に僕の小指を絡ませ、約束を交わす。
聖夜は昨日でしたね。ごめんなさい、聖夜は過ぎましたが、年内には完結させます。