(2)
クリスマスまで、少しだけお付き合いくださいませ。
「あれ?お兄さん?どうしたの?」
「………あー。いや、君のお母さんはどこかな?」
「君じゃないわ。ちーちゃんよ!」
「ああごめん。それで、親は?」
「ふふん。私は去年からここに住んでいるのよ。
お母さんはたまに来てくれるけど、ちーちゃんはもうお姉さんだから一人で平気なの!」
胸を張ってそう答えた少女。
よく意味はわからなかったが、よく見ると彼女は入院用の服を着ていて、靴ではなくスリッパを履いていた。
「……君は病気なのかい?」
「ええそうよ!んっと、心臓?が少し弱いんだって!
でもでもね、新しい心臓を作ってるんだって!私の!
うふふっ。お顔を新しくするヒーローみたいよね。」
無邪気にそう笑う。
少し無神経だったかなと思ったけれど、楽しそうに笑う彼女を見ると何でもないことなのかもしれないとも思った。
「……そうだね。」
「あー!!さっきから私ばかり質問に答えてる!!!
お兄さんも答えてよー!」
小さい子特有の甲高い声に耳がやられる。
少しボリュームを落として欲しいところだ…。
「バレた。えっと、お兄さんの名前は……そうだね。君が考えてよ。」
「えっ?!私が考えていいの!?」
キラキラした顔で僕を見る。
名前を教えたくないからそう言ったのに…。
少し罪悪感を覚える。
「どーぞ。」
「えっと、えっとね、、
たっくん!たっくんがいいわ!ね!!」
閃いたといった感じの勢いでそう言う。
「え。どうしてたっくんなの?」
「あはは!知らないの?
“ち”の前は“た”なのよ!」
ふふん、と胸を貼る彼女はとても可愛らしかった。
「あっ、そう。」
「えへへ。
あのっ、あのね!私とお友達になってください!!!」
必死な表情で差し出された手は少し震えていた。
「……いいよ。どうぞよろしく。」
そう言って僕は彼女の手を握る。
―――――これが僕と彼女の出逢いでした。