予兆
日常的感じ
ライガル村のゴライアスさん家に居候してから1ヶ月ほどが経過した。
「・・・・長く居候してしまっているような気がするな」
「大丈夫ですよ。なんかもう家族みたいな感じですし」
昼下がり、今日は村を適当に散歩していた。アリーシャも一緒である。
木々の伐採などは今日は休みなのだ。それに、作物も栽培してはいるがなぜか畑を荒らす動物が来なくなっているので順調に生育しており、今日ぐらいは見なくても大丈夫だろうという。畑を荒らすような動物とかってこの世界にも普通にいるんだな。
そのため、今日はゴライアス家の休日と言う事らしい。
なので、せっかくだからアリーシャと共に村を散歩していた。
「しかし、この村本当にのどかだよな・・・・」
「この前までは、ゴブリンなどが出てその対処に頭を悩ませていた人が多かったのですけど、ゼノさんが来てからはゴブリンたちもほとんど見なくなって、みんな助かっているのですよ」
どうもそれだけ被害があったようで・・・・狩りまくったからしばらくはゴブリンも数が少ないであろう。
「・・・しかし、今空間収納しているんだけどさ、この大量のゴブリンからとった魔石がかさばるんだよな・・・」
どうも容量制限はないようだが、なんとなく物凄く貯まっているのが分かる。
「ギルドに行けば換金できると聞いたけど・・・・」
歩いて三日かかる距離ってちょっと嫌かも。瞬間移動とかできたら楽そうだが、生憎そんな能力はないからな。・・・・転生する前に神様にこれも頼んでおけばよかったよ。
「それに、ギルドなら冒険者登録できるってきいたしな」
冒険者と言う職業ってなんか面白そうだしな。
「ゼノさんの実力ならば、ギルドですぐに冒険者登録ができると思いますよ」
ギルドが求めるのは強い者。ある程度の実力がないと冒険者にはなれないらしい。
「でもな・・・そこそこ強いってだけで登録できるのか?」
ゴブリンを倒すのは、一般人にとって大変なようである。
だが、必ずしも倒せない相手と言うわけではないようだが・・・・。
「ですが、ゼノさんはゴブリンを狩りまくったので、十分その実力はありますよ」
まあ、有ると言われてもめんどくさいから行きたくはないが・・・・・。
ギルドにて冒険者登録をすると、冒険者に何か証明書みたいなのが配られて自動的にその冒険者の種族などが出るらしい。その機能があれば俺がなんの種族かもわかるだろうしな。
「ま、ギルドに行く機会があれば、ついでに登録でもしていこうかな」
機会があればだしな。・・・そういえば、この世界って魔法とかもあるみたいだけど、どうやるのかも気になる。魔法って一度は使ってみたいと思うじゃん。
「魔法とかも使えるようになってみたいけど・・・」
「魔法は才能がないと使用できないみたいですよ。私は持ってませんし、もしかしたらゼノさんはあるかもしれませんね?」
魔法に関しての本とかはこの村にないからな。あったら読みたい。
「・・・・ん?」
ふと、また何か視線を感じた。
振り返ってみたが、やはり誰もいない。
「どうしたんですか?」
「いや、なんか最近誰かに見られているような感じがして・・・なんか気味が悪いな」
と言うか、他にも何か嫌な予感がするんだよな。
この平穏な暮らしを脅かすようなものが・・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・やはりだんだん気が付いてきているか」
民家の裏手で、一人の影があった。
ゼノのことを観察している元高ランク冒険者の一人である。
「気配にも鋭くなってきているようだし・・・やはり侮れないような感じだ」
だんだんと、ゼノをこうしてみている視線に気が付かれてきているようである。
「実力的には、まだまだ伸びていくだろうし・・・そろそろこちらから仕掛けてみたほうが面白いかもしれん」
数日前、他の4人とも話し合った結果、まずはゼノを冒険者にさせてみようということで一致した。
冒険者になってもらえれば、種族とかそういう物が判別できるからである。
本来は冒険者個人の情報開示はできない。
だが、高ランク冒険者であった彼らならある程度までは見ることが許可されているので、冒険者になってもらった方がゼノがいったいどういう人物であるかを確認できるのだ。
しかし、冒険者になってもらうには、まず自らの意思をその方向に向けたもらうしかない。
と言うわけで、しばらくはこうして交代で観察してみて誘導方法を考えることにしたのであった。
「何とか誘導できればいいのだが・・・・」
「おい、大変だぞ!!」
考え込んでいたところに、他の4人が来た。
「いったいどうしたんだ?監視の交代ならまだ、」
「それどころじゃない!!」
「向こうの森からあるモンスターが確認できた!!」
「あるモンスター?ゴブリンとかがあの森には出ると聞いたが・・・」
「ゴブリンとかそういったレベルのじゃない!!」
「ギルド指定危険種指名手配モンスターだ!!」
その言葉を聞いた途端、監視をしていたそいつは理解した。
ギルド指定危険種指名手配モンスター・・・・各国にあるギルド機関が共同で指定した超危険なモンスターの事である。
各国を暴れまわり、これまで挑んできた冒険者たちを喰らってきたモンスターなのだ。
賞金額はすでに高額になっているのだが、倒せるものが出ず、被害が拡大するだけのまさに厄災ともいうべきモンスターなのだ。
指名手配モンスターなため、写真などが常に掲示されているので全員見覚えがあるのだ。
「な、なんでそんなやつが・・・」
「わからん!!だが、このままではこの村が危険だ!!」
このままほおっておくと、このライガル村が滅ぼされる可能性だってあるのだ。
「急いでギルドに連絡したいが、距離的にどうしても時間がかかる」
「とにもかくにも、誰かが全速力で連絡を、」
「いや待った!!むしろ使えるかもしれん!!」
一人が何かを思いついたようである。
「あのモンスターがこの村を襲うならば、あのゼノとかいうやつが立ち向かうかもしれん!!その時に奴の実力を見れるかもしれんのだぞ!!」
「いや、普通逃げるだろ!!!」
「とにもかくにも、ギルドに連絡しても確実に間に合わぬ!!ここはあの者が動くことを期待するしかない!!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
森の奥にて、そのモンスターは獲物を求めて移動していた。
今まで多くの人々の血肉を喰らい、その味をモンスターは覚えてしまっていた。
喰いたいから喰う。ただそれだけがモンスターの考えだった。
森の中を動いていると、ふと向こうの方から何やら感じた。
これまでにないような、まるで化け物とでもいうべき気配。
だが、そのモンスターにとっては面白くはない。
自分より強いかのような気配・・・・むしろ喰らってやろうとモンスターは移動する。
移動する方向には人の臭いもするし、同時に血肉をまた味わえるだろうと舌なめずりをしながら・・・・。
迫ってくるモンスターとはいったい何なのか?