普通に過ごして
ちょっとした日常風景と解説
ライガル村に滞在して数週間ほど。
「ゼノ」と言う名前にも慣れ、この世界についてだいぶわかってきた。
まず、時間とかそういったものは地球とほとんど同じであり、作物とかも似たような前を持った名前が多い。
しかし、通貨が円とかではなく金貨や銀貨、銅貨だということが違う。
モンスターとかも、ゲームとかに出るようなものから、聞いたことがないようなものまであるようだ。
・・・・神様から能力とかもらうときに、この世界についての知識とかわかるようにしてほしかったかも。
と言うか、「言語翻訳」は日常的にできるし、読み書きできるからやり方はわかる。
「空間収納」が本当にやりにくかったというか、なんというか。
こっそり練習してみて、なんとなくイメージが重要みたいだと分かったらあっという間にできたけどな。
森に行って、木々を切り倒した後にそのままパッと消えるかのように木が消えたのを見て、ゴライアスさん腰抜かしたが。
もともとこういう事ができる魔道具とかいう物はあるらしいが、せいぜいビン数個ぐらいしか入らないような者しかないらしい。
それが、そんな魔道具もなしでできてしまうのはとんでもないことのようである。
まあ、別に気にしないけど。生きているものは入らないようだというのはわかったので、川とかで釣った魚も入れられなかったからな。川の水とかを入れられたところを見ると、水の持ち運びとかはできそうだけどな。入れた物はイメージすればそれだけ取り出せるみたいだし、混ざることはないようである。
あと一つの能力は、神様に適当に決めてもらったせいか全くわからないので保留にしているけどな。
ま、困らんし別にいいか。
そんなこんなで、俺は転生先で気楽に居候しながらも村での生活を楽しんでいた。
そんなある日である。
「よっと、これで全部か」
「相変わらずゼノのそれスゴイな」
森の木を切り倒し、伐採したそれらを空間収納に入れるところをみてゴライアスさんはもう慣れたかのように笑っていた。
現在、俺たちは村のはずれ、ゴライアスさんの家から歩いて20分ほどにある森の中に来ていた。
「まあ、このぐらいしかできませんからね」
木を伐採した後は、あらかじめ育てておいた苗を植える。
苗の方は生きているという判定か収納できないので持ってくるしかなかったけど、こうやって苗を植えて育つのを待ってやることで、刈りすぎるのを防ぐらしい。
この世界の木々の成長力はあっという間に育つほどのようだからな。
「それじゃあ、また村にまで歩いていくか」
「モンスターも最近出てこなくなったしな」
この村に来てから数日間ほど、この周辺にいたモンスターを俺が狩りまくったからな。
案外剣を振れば結構楽に倒せたんだよな。ただ、相変わらず謎の喉の渇きがあるけど。
村へと戻るために、歩いていた時だった。
「・・・・あれ?」
「どうしたんだゼノ?」
「いや、なーんか誰かに見られているような感じが」
ふと、目線を感じたような気がしたが・・・・気のせいか?
とりあえず、何もいなかったようだし村への帰路についていた。
「しかし・・・なんかこの生活にも慣れたな」
「ゼノが働いてくれるから、こっちも助かっているよ」
まあ、本当は運ぶ木材が手軽になるからな。
かと言って、伐採しすぎないようにはしているけどな。
「・・・お」
歩いていると、前方からやってくるものがあった。
「ここ最近見かけなかったゴブリンだな」
「ゴブブブウッツ!!」
20体ほどか。
言語翻訳があるからモンスターの言葉もわかるかと思ったが・・・どうやら意味を持たない言葉だと適用されないみたいだしな。
「ゴライアスさんは下がっていてください」
「わかった‼︎」
ここ最近見なかったけど、久しぶりに見たので俺は遠慮なくゴブリンの群れをせん滅する。
剣を振るい、蹴り、殴り・・・・あっという間に勝負がついた。
道端には、ゴブリンの群れが倒れていたのであった。
「それじゃ、こいつらも」
完全に死んでしまっているならば、空間収納が可能らしい。死んだゴブリンたちも一匹一匹収納していった。
最初の時は地面に埋めたりしたが、そのうちにモンスターの体内には魔石とかいう物が埋まっているらしいということを知った。
そして、こういった魔石は意外にも魔道具とかの燃料とかになって売れるのだとか。ギルドとか、そういたっところで換金可能だそうだ。
そのため、一応こうして回収しておき、後で切り開いて魔石を取り出すのだ。
ギルドに行く機会があれば、その時に換金できるように。
「これで全部っと」
「・・・しかし、相当ゼノは強いんだよな」
回収し終えた後、ゴライアスさんがしみじみと感慨深そうに言った。
「まあ、剣とか振るっているだけですし、結構簡単に倒せる奴らだと思うのですけど」
「そこまで言えるのが本当にすごいよ」
ゼノの感覚では簡単に倒せるような相手である。
しかし、普通の人にはかなり大変な相手なのだ。
転生してまだ数週間ほどのゼノにはその感覚がまだよくわかっていなかった・・・・。
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ゼノたちが家に戻って夕食を食べている頃、森の中にて人影があった。
「・・・この目で見て見たが、相当強い」
「だが、自分ではこれが普通だと思っているような感じがする」
ゼノが先ほど感じた視線。実はこの人たちがゼノを観察していた時のものであった。
5人ほどの集団で、全員正体を隠すかのようにローブを深く来ていた。実はこの5人、もうすでに冒険者を引退してはいるが、かなりの高ランクの冒険者だった。
「最近、冒険者たちからこのあたりのモンスターの数が減ったとかいう話を聞いて、違和感を覚えてきてみたが・・・なんだあの男は」
この集団が集まった理由は、とあるギルドの酒場で聞こえた話である。
『最近さー、ライガル村周辺のモンスターが減っているんだよな』
『はあっ?モンスターが?』
『誰かが狩りつくしているんじゃないのか?』
冒険者たちの収入は、ギルドの依頼達成報酬以外にも、モンスターからとれる魔石などの素材を売ることにもある。
モンスターが減るのは近隣住民からすればいいことなのだが、収入減が減ることになる冒険者たちからしてみれば少し問題となるのである。
まあ、収入が低い低ランク冒険者がであるが。
この5人は、その話を聞いて直感的に違和感を感じ取った者たちであった。
・・・モンスターの数が減るのにはいくつか理由があるが、そのうちの一つに本能的な身の危険を感じて去ることもある。
生まれたてのモンスターはわからないが、有る程度生きたモンスターになると本能的にとらえるという話があるのだ。
「調べてみると、ゴブリンなどの弱いモンスターはそこまで感じ取れないようだが、このあたりに生息が確認されていたモンスターのいくつかがいなくなっている」
「それで何かモンスターが恐れるようなものがいるのではないかと思ったが・・・・予想が当たったな」
彼らは、村の人たちに最近変わったことがないかと聞き込みをした。
すると、最近村に入ってきた人物がいるという。
直観的にそいつだと判断し、しばらくな間観察していたが・・・。
「・・・なんだあの化け物は」
高ランクの冒険者だった彼らだからわかる。あの銀髪の青年は只者ではないと。
大きな木もあっという間にその場から消したかと思うと、別の場所に出すという空間収納とかいう能力。
今まで魔道具にも似たようなものがないわけでもなかったが、それなしで規模がでかいのだ。
さらに、今日観察していたゴブリンとの戦闘だったが、動きは素人に近いものの、鋭く切り裂けたりと、相当な能力を持っていることが分かった。
名前はゼノと名乗っているらしいが、その名前は絵本でも聞く吸血鬼の名前。
その吸血鬼も銀髪で、まるでその人物が現実に飛び出してきたかのような錯覚を覚えた。
「調べたところ、名前は今居候している家の娘からもらったらしい。本人は自分の本当の名前すら忘れてしまっている記憶喪失らしいと」
「だが、銀髪の青年は今のところ何処にも確認されていない。ある日突然来たかのような感じだ」
「しかし・・・性格とかはいたって普通の人間と変わらん」
「見た目は人間だが、人間に近い容姿の種族もいるし・・・・」
「しかし、どれにも当てはまらない」
彼らからしてみれば、ゼノはまるでつかみようがない存在だった。
「・・・・しかし、モンスターが恐怖を覚えるような存在と言うのはわかる。一般人ならわからないが、ある程度強さが分かる人からしてみればとんでもないような化け物だと自ずからわかるだろう」
その言葉に、全員が同意した。
一応手を出しさえしなければ平穏無事であろう。
だが・・・・・・
「このままにしておくというのももったいないかもしれん」
「それに、いずれこの存在に気が付くやつらが出るだろう」
今は自分たちだけしか気が付いていないようだが、いずれ気が付いてくる輩も出てくるはずだ。
「・・・彼自身によくわかってもらう必要性があるな」
「しかしどうやって?」
「・・・・・・さあ」
とりあえず、ゼノの存在についてどうすべきかと彼らは一晩中森の中で話し合うのであった・・・・。
ゼノ自身、自分おことについてはいまいちわかっていないようである。
・・・いつになったらタイトル回収できるかな?