成行き的なもので
視点がいきなり主人公から外れる
「きゃぁぁぁぁっつ!!」
私は悲鳴を上げた。
「ゴブルルルル!!」
今、ゴブリンの群れに襲われてしまっている。
「アリーシャ逃げろ!!」
「こ、腰が抜けてしまって・・・」
お父さんが必死に剣を振るうが、ゴブリンたちはお父さんをあざ笑うかのように避けていく。
そして、私めがけて襲い掛かろうとしてきた。
ゴブリンは女を襲い、自分たちの繁殖のために利用するという話を聞いたことがある。
このまま捕まってしまったら辱めが待ち上けている。
腰が抜けてし待って動けない私にゴブリンが来て、服に手をかけて破こうとした瞬間だった。
ヒュンッ!!
「ゴブッ!?」
「え?」
どこからか飛んできた石にあたり、そのゴブリンは吹っ飛ばされた。
「・・・ノーコンじゃなくてよかった」
石の飛んできた方角を見ると、人影があった。
人のようだが、服はボロボロで、まるでさまよっていたかのようにも見える。
目の色は黒く、肌は少し白い感じで細く見え、髪の色は・・・・銀?銀髪なんて見たことがない。
まるで伝説に出てくるような吸血鬼のような色である。
だけど、その顔は整っており、どこかかっこよく見えた。
「だ、誰かは知らんが助けてくれ!!」
お父さんが叫ぶ。
お父さんの剣はすでにゴブリンどもに奪われていて、切られる寸前だった。
「もういっちょ!!」
その銀髪の青年と思わしき人は、足元にあった手ごろな石をゴブリンに投げつけた。
「ゴブギャッ!!」
ゴブリンの手にあたり、剣が地面に落ちる。
「ゴギャッギャッギャ!!」
ゴブリンたちはその青年を敵としてみなしたのか、全員一斉にその青年へとびかかった。
「危ない!!」
今のは全て石を投げて遠距離から攻撃していた。
だが、一斉に襲い掛かられてしまっては・・・・・・。
その青年がゴブリンやられるところを見たくなかった私はとっさに目をつぶった。
「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃ!!」
「ゴブッツ!?」
「ギャベブ!!」
「ギヤッツ!!」
何やらボコスカと音が聞こえて、ゴブリンたちの声が止んだ・・・。
恐る恐る目を開けてみると、青年の周りにはゴブリンたちが倒れていた。
どうやら、今の一瞬の間に全部倒したようである。
「き、君は一体・・・」
お父さんが尋ねる。
だが、青年はそのまま倒れた。
「大丈夫ですか!!」
もしかしたら怪我をしているのかもしれない。
青年に駆け寄って、体を見ようとした時だった。
ぐぎゅうぅぅぅぅるるる・・・・
「へ?」
「お腹空いた・・・・・」
そうつぶやいて、青年は気絶した。
え?もしかしてお腹空いて倒れただけ?
意外過ぎて、少しの間お父さんと私は理解するのに時間がかかった・・・。
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「・・・・ん?」
目が覚めると俺は、どこかの小屋の部屋で寝かされているようだった。
慌てるな、まずはここまでの経緯を思い出せ。
先ほど、悲鳴が聞こえた方向へ行くと、なんかちっこい子鬼のような生き物におっさんとその娘と思われる14歳ぐらいの女の子が襲われていた。
この体は戦えるのか少しわからなかったので、まず石ころを投げて攻撃した。
それなりにコントロールは良かったようで、見事に命中。
女の子の身体を押し倒して服を破こうとしていたやつの頭に見事あたったよ。
次に、おっさんの方に投げる。
あちらはなんか剣のような武器を奪われたようで、切られかけていたのでそちらも狙う。
狙いがずれたようで、頭じゃなくて手の方にあたったけど結果オーライだった。
そしたらそいつらは全員一斉に俺に向かって襲い掛かってきたので、慌てて手足を動かしていたらいつのまにか全滅させていた。
で、空腹の限界で倒れたのだが・・・・。
「お、起きたか」
と、部屋の扉が開き、先ほどのゴブリンにやられかけていたおっさんが入ってきた。その後ろの方からは同じように先ほどの娘がいた。
「ここは・・・」
「ここは私たちの家だ。倒れたので、ここに運んだんだよ」
なるほど、おっさんたちの自宅か。
「あの・・・お腹が空いているようでしたので、よかったらこれを」
と、女の子が渡してきたのは温かそうなスープとパンだった。
「ありがとうございます!!」
食料やっとゲットだよ!!
物凄くお腹がすていたのでおいしかった。
食べ終わり、満腹になった。
「いや本当に、危ないところを助けてくれてありがとう」
おっさんがお礼を言ってきた。
そういや、今気が付いたけど言語翻訳とやらのおかげか会話が成立しているな・・。
「こちらこそ、空腹だったのでたすかりました」
こちらもお礼を言う。転生していきなり餓死ってシャレにはならないからな。
「ところで・・・あなたはいったいどこの人ですか?」
と、女の子の方が興味があるかのようにこちらに質問してきた。
まともに転生者と言っても信じてもらえそうにないしな・・・・
「えと・・・わかりません。自分の名前すらわからないんですよ」
ここは記憶喪失の振りをしておいた方が良いかな?そう判断してそう言った。
「自分の名前すらわからないか・・・・服装もボロボロだったし、何かあってそれで記憶がないのかもしれんな」
どうやら納得してもらえたようである。神様・・・服装ボロボロにしていた理由ってこれを見越していたんじゃないよな?
「とにもかくにも、君は私たちの恩人だ。行く当てがないならしばらくここでゆっくりと過ごしていきたまえ」
どうやらしばらくはここで過ごせそうだな・・・・・。
しかし、なんか妙に変なのどの渇きがあるんだよな・・・・水も飲んだのになんでだ?
腹減って倒れる主人公とはこれいかに