Side アリーシャ
主人公視点じゃないよ。
アリーシャは走っていた。
ゼノがあの化け物に挑んでいってしまったのを何とか止めるために。
ゼノの走るスピードがよほどの物だったのか、なかなか追いつけない。
(でも・・・)
アリーシャは思っていた。
あの日、森の中でゴブリンに襲われそうになったところをゼノに助けられてからずっと。
助けてくれた命の恩人が、村のためにあの化け物に挑んでいった。
強そうだけど、勝てるとは思わない。
だけど、そんな相手にもゼノは挑んでいった。
でも、それで命を落としてほしくない。
村が滅んでも、死んでほしくないのである。
アリーシャはゼノに向けるこの感情が何かはわからなかった。
胸が締め付けられるような、苦しいようなそんな感覚。
そばにいるだけで熱くなるかのようなそんな気持ち。
村の友達に話したら、ちょっと驚かれた。
何なのかと聞いてみたら・・・・・それは「恋心と言うんだよ」と言われた。
恋心・・・ものすごく納得がいった。
あの日から、アリーシャはゼノに恋をしていたのである。
そんな愛しい人が死んでほしくない、なんとか止めたい!!
そんな思いで彼女は走った。
やっと村にたどり着いたとき、もう勝負はついていたようであった。
あの燃え盛るトカゲのような化け物は、腹に大穴が開いて死んでいるようであった。
ゼノが勝ったのだとわかったが、その肝心の彼の姿が見当たらない。
「ゼノ!!どこにいるの!!」
叫ぶが返事が返ってこない。
村の中を、走ってさがすが、何処にも見当たらない。
もしかして、相打ちで死んでしまったのでは・・・
そんな思いが彼女によぎった時であった。
「・・・・あの青年の知り合いかね?」
「え?」
いつの間にか、誰かが後ろにいた。
しわがあるが、いまだに元気そうな老婆である。だが、村の中では見たことがなかった。
「あなたはいったい・・・」
「私は元高ランクの冒険者さ。あの化けもんが現れたと聞いたから急いできたのだが・・・もうすでに倒されておってのぅ。倒したのが一人の銀髪の青年みたいなやつだったから驚きじゃわい」
間違いない、その青年はゼノだ。
「それってゼノよ!!どこにいるの!!」
「落ちつけ、今はそこの小屋の中で寝ておるわい。私の仲間が治療しておる」
いうが早いが、アリーシャは指差された方向にあった小屋に向かって走った。
「ゼノ!」
アリーシャはそのまま小屋の中に入ると、他にも4人ほどの老人がいた。
そして、その床の方には布団に入れられて寝かされているゼノの姿があった。
目をつむっており、安らかな寝息を立てているようである。
「ほう、こやつの知り合いか?」
「はい!!」
老人の中でも、ひときわガタイがいいお爺さんが尋ねてきたので、すぐに彼女は返事した。
「安心せい、こやつはあのモンスターを倒してぶっ倒れただけじゃ。怪我もすでに治療が済んでおる」
「そうですか・・・・・よかった・・」
アリーシャは心の底からほっとした。
「・・・ところで、あなたたちは何者なんですか?」
安心したところで、疑問がわいた。先ほどの老婆の仲間なのは間違いないだろうが・・・・。
「儂らはのぅ、数年前に歳ゆえ解散して引退した冒険者グループ『5賢人』じゃ」
話には聞いたことがあった。
昔、「5賢人」とかいう凄腕の高ランク冒険者グループがいたという話を。
「先ほど、こやつが倒したモンスター・・・・あれはのぅ、ギルド指定危険種指名手配モンスターのうちの一体じゃったのだ」
「ギルド指定危険種指名手配モンスター・・・・!?」
聞くと、冒険者たちでも太刀打ちできないのような物凄く危険なモンスターの総称らしい。
「あれは『暴虐のサラマンダー』。これまで幾人もの冒険者を喰らってきたモンスターなのじゃ」
「それが出たと聞いて、慌ててこの場にやってきたのだが・・・・もう勝負はついて、この男の勝利じゃった」
「ものすごい死闘になっておったがのぅ」
高ランク冒険者だった彼らが言うには、それはそれはものすごい戦いだったらしい。
「でも、治療をしたからゼノの怪我はほとんどないような状態なんですよね?」
服がボロボロにはなっているが、見たところ怪我が完全に直っているように見えた。
「ま・・・治療とは言っても低級ポーションをかけるだけで十分な再生はしておったが」
少し引っかかるような言葉が出た。
「低級ポーションだけで?」
ポーション、それはいわゆる回復するための治療薬である。
低級と言うと、治療できるのはかすり傷程度になるのだが・・・・先ほどの死闘と言う言葉からものすごいけがをしたとわかる。だが、今見るとほとんど怪我がないように見えて、てっきり上級あたりでも使ったのかと思ったのだ。しかも、いま「再生」とか言った。
話を聞くと、最初は火傷とかをしていたらしいが、すぐに治っていったというのだ。
「おそらくだが、こやつは物凄い回復力を持っておる」
「それにじゃ、こやつはギルド指定危険種指名手配モンスターを倒すだけの力を持っておる・・・・」
それがどれだけの異常な事かは、この場の雰囲気からアリーシャは理解した。
「おそらく・・・いや、もうほぼ確定だが、こやつは人間以外の種族じゃ。なんの種族化は今のところ分からん」
「だが、このままにしておくのもまずい」
「どういうことですか?」
種族がはっきりしていないということは、モンスターでもある可能性があるのだ。
「エルフやドワーフ、獣人、鬼人その他亜人系統の種族ならば別にいい。だが、モンスターだと断定されれば、今度はこやつがギルド指定危険種指名手配モンスターに当てはめられるかもしれん」
「そんな・・・・!!」
そもそも、そのモンスターを倒しただけの実力を持っているのが危険すぎるほどである。
「のぅ、娘よ」
いつの間にか、小屋の中に先ほどのおばあさんが入ってきていた。
「お主、こやつのことを愛してしまっているのだろう?」
いきなり面と言われて、アリーシャは顔が真っ赤になった。
「な、なんですかいきなり!!」
「だったら、愛しいこの男をそのままにしておくのは危険じゃ」
そんなことを言われても・・・・
「でしたらどうしろと?」
「この男が起きたら、ギルドに来て冒険者登録をするように言うのじゃ。登録の際に、なんの種族かもはっきりわかる。それなら、モンスターと断定されることもなかろうて」
要は、ゼノに冒険者になれと言っているのだ。
「冒険者登録するように勧めればいいんですね?」
「そうじゃ。私たちもこの男がいったい何者かを知りたい」
「元冒険者の儂らからすれば、この男は冒険者たちの中でも指折りの物に入れるかもしれん」
「そんなものをほおっておくのも惜しいからのぅ」
「モンスターだと断定されてしまえば、それで終わり」
「だが、モンスターではない亜人系統の種族であれば・・・それだけでよい」
5人とも、そういったのであった。
アリーシャはゼノの方を見ると、まだ寝ている。
銀髪の髪が、戦いで少し汚れたのかくすんでいた。
体中の怪我が治っているらしいとは言え、衣服からどれだけ必死だったのかもわかった。
とにもかくにも、今はゼノが目覚めるのを待つのであった・・・・。
ちなみに、わかる人はわかるけどこの5人がゼノを観察していた人らです




