彼氏の妹が怖いんだが
「...私のお兄ちゃんに近付かないで」
そこらでは見られないような美少女が、私を睨み付ける。
どうしてこうなった。
私は頭を抱えたくなった。
私は今大学一年生。アパートで一人暮らしをしている。
私には付き合って一ヶ月の彼氏がいる。その人は、私と同じ大学で同い年。出会いはサークルから。
正直言って、その人はものすっごく美形だ。まるで王子様みたいな。そのくせその容姿を鼻にかけず誰に対しても親切で、明るく面倒見のいい性格。そりゃモテますよ。
何故私がそんな人と付き合っているのか。それは私も正直よく分かっていない。私は特別可愛い訳ではないし。その人から告白された時はドキドキし過ぎて死ぬかと思った。後でその人から私に告白した理由を聞いてみると、「何か話してる時に落ち着く感じがして」と言われた。え、私話してる時何か出てる?アロマみたいな?
そんな彼氏、名前は荻原柊、の家に(彼はアパートの2DKの部屋に住んでるらしい)休日、私は行くことになった。
待ち合わせの場所に私が来ると、彼は言った。
「あのさ、今日急に家に妹が遊びに来たんだ。だけど気にしないでな。あいつにはちゃんと俺の部屋から出てくんなって、言っといたから」
「え?大丈夫なの?妹さんにそんな風に言っちゃって」
「あー、大丈夫。あいつしょっちゅう家に来てるし、今日くらい平気平気」
一抹の不安を抱えつつも、私は彼と共に家に向かった。
彼の家の玄関で、彼女は現れた。
「おかえりっ、お兄ちゃん!」
「ばっ美心望お前部屋にいろっつったろ!」
「えー、私も彼女さんに挨拶したーい!」
心臓が止まるかと思った。
何この美少女、え、お人形さん?
彼に似て、ものすっごい美形なんですが。高校生くらいかな?
そんな美少女が、私ににっこりと微笑み...え?
目、目が笑ってない!?怖い怖い怖い!
「初めまして!私、荻原美心望です!兄がお世話になってます!」
「あ、は、はい、その...」
「よろしく!彩菜さん...でしたよね?」
「美心望、お前もう頼むから部屋行ってろ」
「ぶー!もう、分かったよー!お兄ちゃんのケチー!」
彼の妹、美心望さんは可愛らしく頬を膨らませて、奥の部屋に引っ込んでいった。
「あー、何かごめんな?ったく、あいつは...」
「ううん、大丈夫!妹さん可愛いね」
「あー、まあ...」
彼はどこか複雑そうな顔をした後、「まあ上がってくれ」と言って私を招き入れた。
「お兄ちゃん、私アイス食べたーい!」
「はっ!?ちょっお前何出て来てんだよ!」
「アーイースー!」
「お、お前なぁ...!彩菜に失礼だろお客さんだぞ!」
「彩菜さん、駄目...?」
うわっちょっと何この上目遣い反則でしょうそれは!
「しゅ、柊君、私は大丈夫だから...それに、私もアイス食べたいかな!」
「えっ?あ、ああそっか...」
じゃあちょっと、コンビニ行ってくる...と彼が姿を消したところで、
「...柊君、ねえ...」
美心望さんの様子が一変した。
「え、あの...」
「何であなたがお兄ちゃんに釣り合うと思ったの?馬鹿じゃないの?」
「釣り合うって...」
「どんな手使ったか知らないけど...私のお兄ちゃんに近付かないで。後悔するよ?」
さっきまでとは全く違う冷たい声で、美心望さんは言った。
「後悔って、どんな?私はそんなの...」
「じゃあ教えてあげるけど、お兄ちゃんはねえ...」
「すっごいくずだよ」
「...へっ?」
「あのね、お兄ちゃんは色んな女の子に手を出してはポイしてるの、お兄ちゃんなんかがあなたみたいな性格良さそうな人に釣り合うはずないよ!絶対別れた方がいいって!お兄ちゃんあれだよ?最初だけだよ優しくするの。その後は色々理由付けて別れてるんだよ?最低だよ!体だけが目的だよ、女の子の敵だよ!」
「うっ...嘘...!?」
「本当!私はよくここに来てお兄ちゃんの犠牲者をなるべく減らそうとしてるの、あなたもお兄ちゃんだけは止めた方がいいよ!」
「......」
それが、本当なら...。
確かに、彼のような完璧に見える人が、私を選ぶ理由がなかった。
本当なんだ、本当に、彼は...。
「...分かった」
「本当!?」
「私、彼と別れる...」
「良かった!絶対その方がいいよ!あなたなら、他に好い人が見つかるよ、頑張って!」
美心望さんの力強い言葉に勇気をもらう。
その後、私は、彼と別れ、しばらくして新しい人と付き合うことになった。
今はとても幸せだ。
「美心望、またお前の差し金だろ!」
「えー、何の話?」
「ふざっけんなマジで!俺が彼女出来る度に変なこと吹き込みやがって!この前彩菜に何て言われたと思う?女の子の敵だぞ!?身に覚えがなさすぎて逆に笑ったわ!」
「仕方ないよ、だってお兄ちゃんは私のお兄ちゃんだもん」
「あーもう本っ当...あーー!!お前の策略を止めらんなかった俺がすげえ悔しい!!」
「いい加減、諦めてよ、お兄ちゃん?」
「やだね!俺は絶対にいい人を見つけて幸せになってやんよ!」
「...強情だなあ」
「今度こそ...!美心望じゃなくて俺を信じてくれる人を見つける...!」
「まあ頑張ってねー(...私だけのお兄ちゃんを、誰かに渡すはずがないけど)」




