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第142話 帰還者

「たまんねえ……!」


 オーゼスの本拠地に存在する質素なショットバー、“Fly-byフライバイ”。

 そのカウンター席に突っ伏しながら、スラッシュは幾度となく喜悦の声を上げ、今この瞬間の幸福を噛みしめる。

 ジュークボックスから流れ出る往年のジャズ・ミュージック。

 薄暗い照明の光を受け、魅惑的に煌めくオンザロックのバーボン。

 むせ返るほどに充満した酒気と、テーブルに用いられているカリン材の香り。

 五感が捉える情報の何もかもが、ドラッグもかくやと言わんばかりの途方もない多幸感をスラッシュにもたらす。


「元々、居心地のいい場所だとは思っていたがよ……。地獄のお試しコースを体験してきたおかげで、余計にここの素晴らしさがわかったぜ。そう、ここは天国で、俺様は自由なんだ」

「……もう十回以上は聞いたよ」

「何度言ったって言い足りねえんだよ。そのくらい……、あそこはロクでもねえ所だった」


 スラッシュは緩慢に首を傾け、隣で力なく笑うB4の手元に向けて、そう言ってのける。

 今のスラッシュにとって、頭を持ち上げることは中々の難題だった。

 なにせ、スラッシュがB4を誘って酒をあおり始めてから、既に二時間近くが経過している。

 久しぶりの飲酒である上に、度数の高いものばかりを選んだせいか、早い段階で泥酔状態にあった。

 このくらいで意識が酩酊するとは落ちたものだと、スラッシュは若干のもの悲しさを覚える。


「テメエも一回、ブチ込まれてみりゃあわかるぜ。マジで狂う、マジで狂うからよ。俺様のメンタルも本当に、いよいよのところまでキてた。あと一週間もあんなところに押し込められてたら、完全にイカレちまってただろうな」


 その台詞も、既に何度か発しているような気がしたが、そんなことはどうでもよかった。

 先に述べた理由の通り、実に四ヶ月近い監禁生活の愚痴は、十数回吐き出したくらいで収まりがつくようなものではない。

 二十四時間あらゆる場所での監視。

 当初は一日中、条件が緩和されてからも日に数時間の身体拘束。

 ほぼ皆無に等しい娯楽。

 比喩ではなく本当に、スラッシュは心のダムが決壊する寸前までストレスを詰め込まれたのだ。

 しかし、それももう過去の話。

 今はこうして、無事に南極のオーゼス基地へと帰還し、快楽に溺れるだけの生活に舞い戻ることができている。

 欲求の赴くままに貪るべきものを貪れば、すっかりすり減ってしまった魂も、じきに癒えていくだろう。


「これも全て、ゼドラ君のおかげだね。……しかしまあ、毎度のことながら、彼の工作員としての能力には驚かされるばかりだよ。混乱に乗じたとはいえ、単身ラニアケアに乗り込んで一度も発見されることなく仕事を完遂するだなんて、他の誰にもできっこない」

「驚くだけか? B4……」


 肩肘をついてどうにか上半身を起こし、やや薄まったバーボンをちびちびと飲みながら、スラッシュは答える。

 ラニアケアを後にする大型潜水艇、フラクトウスの中で、ゼドラ本人の口から語られたことだが――――

 ゼドラがスラッシュと霧島を救出し、オーゼスへと連れ戻したのは、組織の創設者である“あの男”の指示によるものではなかった。

 もっとも、説明を受けるまでもなく、途中まで同乗していたもう一人の男との会話の模様から、おおよそを察することは可能だったが。


「野郎は、あの邪魔くせえ部外者連中……エウドクソスの犬だったんだぜ」


 コードθシータ“サルガス”。

 それが、あの寡黙で几帳面な男の真名。

 ゼドラ・フォーレングスは、オーゼスの内部事情を探るために送り込まれた諜報員でしかなかった。

 彼らが運用するメテオメイルの、異様に高い完成度にしても。

 幾つかの侵攻において、その迎撃にあたったヴァルクスの準備が不自然なほど万端だったのも。

 全てはゼドラが、入手した情報を片っ端からエウドクソスに流していたためである。

 ゼドラの背信行為が、連合との戦いの勝敗に直接影響した事例は、今のところは皆無だ。

 だが細かな影響ということであれば、数知れない。

 十輪寺などは、エウドクソス構成員の一人と直接交戦し、撃墜されるという憂き目にも遭っている。

 その余計な一戦がなければ、もう少し安定した精神状態でセイファートとの決戦に臨めたことだろう。

 一方で、彼らの活動によってオーゼス側が得をしたのは、後にも先にも今回の一件くらいものだ。

 そう考えれば、素直に感謝の意を送る気になどなれないどころか、むしろ忌々しさの方が先に立つ。


「だけど彼は……君達がそのことを報告したにも関わらず、ここに滞在することを許されている。“あの御方”としては、彼がゼドラ・フォーレングスとしての働きをしっかりこなしてくれれば、それで構わないんだろう」

「損なんていう概念をお持ちでないからな、“あの人”は……。だがよ、その純真さに漬けこんで一方的にってのは、やっぱり虫酸が走るぜ。テメエも、他人事じゃあねえんだぞ」


 組織が明らかな不利益を被っている状況ですらも受身の姿勢を崩さないB4。

 そして、ゼドラの素性を知りながら一切罰を課すことのない“あの男”。

 二人の呑気極まる姿勢に対して、スラッシュは口を尖らせる。

 オーゼスは、世界に対し一方的に喧嘩を売っているのだから、どう処理されても仕方のない立場にある。

 当然、エウドクソスの活動方針がどのようなものであろうと、文句を言える権利などない。

 だが、盗んだデータを利用して影の支配者を気取られている現在の状況は、スラッシュにとって我慢し難いものがあった。


「“あの御方”がエウドクソスのことを意に介していないのは、彼らがどう動いたとして、オーゼスの根幹を揺るがすには至らないと思っているからじゃないかな」

「B4……」

「少なくとも僕は、この集まりが、それだけ確固たるものであるという信頼を抱いている。脱落していった皆のことにしても、だった気がする」

「そもそも、影響なんかなかったっていうのかよ……」


 極めて珍しいB4の断定口調に、スラッシュはただ相槌を打つことしかできなかった。

 繰り返しになるが――――エウドクソスは、戦局をコントロールすべく多種多様な妨害工作を働くことはあっても、オーゼスと連合との戦闘中に茶々を入れてきたことは一度もない。

 エウドクソスの暗躍を抜きにしても、結局アダイン、サミュエル、十輪寺の三名は負けていたというB4のような捉え方も、できなくはないのだ。

 “ゲーム”が破綻しかかっているなどいう主張も、単に彼らが弱かっただけだと言われれば、それまでだった。

 強者はいかなる困難に見舞われようと押し通るのみ。

 他人の介入でねじ曲げられてしまうような意思と能力は、所詮その程度なのだ。


「やっぱり、長い拘禁が堪えているようだね」

「あ……?」


 しばらくしてB4の口から発せられた、脈絡のない分析に、スラッシュは間の抜けた返事をしてしまう。

 いや、脈絡はあった。

 酔っていたでは済まされない、スラッシュ・マグナルスが吐くべきではない致命的失言。

 そのことに気づいたときにはもう手遅れで、B4はカウンターの奥に並んだ酒瓶の数々を眺めたまま、冷淡に呟く。


「以前の君なら、エウドクソスの存在を鬱陶しく思うことはあっても、“あの御方”や僕を気にかけることはなかったはずだ」

「無抵抗で済まそうとする危なっかしさに呆れてるってだけだ。まあ確かに、テメエらの性格を考えりゃあ、何を言ったって無駄だな」


 そう早口でまくしたてるスラッシュの心中は、テーブルに頭を打ち付けたい衝動で一杯だった。

 ただただ、B4の指摘通りだった。

 梁冀跋扈の化身が集いしオーゼスの一員でありながら、同胞を案じ、その副産物として苛立ちを覚えるとは何事か。

 横の繋がりは本来皆無。

 “あの男”のことにしても、自分に何を提供してくれるか、その一点だけで繋がっている関係ではないのか。


「……すっかりヌルくなっちまったな。まさかここまでとはな」

「そろそろお開きにするかい? それとも、締めに何か軽く……」

「そういう意味じゃねえ」


 言って、スラッシュは、もうほとんど味のしなくなったバーボンを一気に飲み干す。

 数瞬前までグラスの中にあったものは、まさに今の自分自身。

 連合の捕虜となり、風岩瞬や北沢轟達と触れ合っていく中で、本来あるべき姿を見失った軟弱者の姿だ。

 数時間前、“あの男”から授かった檄は何だったのか。

 “あの男”を前に切ってみせた啖呵は何だったのか。

 そのときの記憶を蘇らせ、スラッシュは自らを罰する。


 オーゼスの本拠として利用されている、この恐ろしく広大な施設の、最深部にして最奥部。

 そこに存在するたった一つの大部屋は、組織を束ねる“あの男”の専用空間となっている。

 半日以上の後悔を終え、無事帰還を果たしたばかりのスラッシュと霧島は、誰に促されるまでもなく彼の元を訪れた。

 今後どう動くにしても、兎にも角にも、彼の判断を仰ぐ必要があったからだ。

 二人は、“あの男”より与えられし遊び道具メテオメイルを失った、純然たる敗者。

 更に言うなら、脱落者にして部外者。

 厳密には、帰還という言葉を用いることすら不適当な立場にある。

 今しばらく戦いを長引かせたいというエウドクソスの企みに乗る形で、ここに戻ってきたはいいが、“あの男”に“ゲーム”への再参加を認めてもらえるという保証はない。

 わざわざ彼らが動いたのだから、そうなるという何かしらの算段はあるのだろうが、しかし彼らが“あの男”の性格を熟知しているとも思えなかった。


「……どうも、お久しぶりです」


 部屋の中央で座する男に、霧島が若干の後ろめたさを帯びた笑みを浮かべる。

 スラッシュは、相変わらずの眩しすぎる照明に目が慣れず、その足元だけを見遣った。

 そして、二人で交互に、再びこの地を訪れることになった経緯の仔細を報告する。

 とはいっても、内容の大半は、ゼドラの正体及びエウドクソスの目的に関する説明であったが。

 その話題に関して、男はただ一言「そうか」と返すのみでスラッシュはやや面食らったものの、対応の甘さについて指摘することはしなかった。

 正確には、できなかった。

 自分達の処遇という本題に、できるだけ男の機嫌が良い状態で入りたかったからだ。

 しかし、肝心のそれを霧島が切り出しても、男は首を傾げるばかりでいまいち要領を得ていない様子だった。

 そう――――そもそもの部分から、二人と男との間で、“ゲーム”のルールに関する認識が根本的に食い違っていたのだ。


「いや、だから、俺様達はあのクソガキ共に負けちまったわけで、それでこれからどうなるのかっていう……」

『負けたのか?』


 いかなる類の感情とも無縁の、何気なく放たれた男の問いかけ。

 しかしその言葉は、予想外の鋭さを伴って、スラッシュの心に深々と突き刺さる。

 隣に立つ霧島も、おそらくはそうだったことだろう。


『お前達は、負けてなどいない』


 言葉を失う二人に対し、男は静かに、だが力強く、諭すように告げる。

 男の言わんとすることを、そこでようやくスラッシュは理解し、同時に深く恥じ入った。

 戦績を意識してはならない。

 敗北を喫したからといって、それを大人しく認めてしまうような精神の在り方は、オーゼスの一員として相応しくない。

 そんなは、常人にとって有益であっても、自分達にとっては不純物。

 逆に本来持ち得ていた強固な意思を鈍らせ、魂を弱らせるのみ。

 男は、そう忠告しているのだ。

 アダイン、グレゴール、サミュエル、エラルド、十輪寺、そしてジェルミ。

 彼らは、戦いの決着がつかないままに帰還を果たしたとき、果たして何を吠えていたか。

 そう――――男と同じく、敗北したという現実自体の否定である。

 例え愚かさでも、臨界を極めれば、それはそれで強靭な骨子として機能する。

 オーゼスに集いし男達は、まさにその理屈、“逆の究極”を体現する“負の強者”。

 “正の強者”となる夢を完全に諦めてしまったからこそ成立する存在。

 その意味で、一勝一敗を前提とする二人の考えは、いささか危ういのだ。

 例え決着を望むとしても、十輪寺のように、ただ目障りな仇敵を排除するだけの行動でなければならないのだ。


「つまり俺様達は、最初から脱落なんかしてねえ。ただ機体をブッ壊されちまっただけで、復帰も何も、依然変わらずオーゼスの一員ってことかよ」


 スラッシュの現状確認に、男は小さく首肯してみせる。

 そして、床の上に散乱した大量の紙資料の中から目当ての数枚を迷いなく拾い纏めると、それらを半分に分けて二人に差し出した。

 記載されているのは、ほとんど書き殴りに等しい文字と図表の集合体であり、内容そのものを読み解くことはほとんど不可能である。

 唯一確かなのは、それらがメテオメイルのデザイン案であるということだけだ。

 男は濁流のごとく溢れ出る発想のままに、適合するパイロットが不在であろうと、アイデアだけは随時したためている。

 スラッシュのかつての乗機であるスピキュールも、数あるデザイン案のストックの中から、相性を考慮した上で男が選出したものだった。

 惜しみなく原本を渡してくるのは、詳細な設計図が男の記憶に確固として存在していることの証明であると同時に、出来上がった機体の所有権を完全に移譲する旨の意思表示でもある。

 二人は男から、手放しの信頼をも受け取ったのだ。


「ストレムグレン……」

「……ベテルギウス」


 各資料の右上に記された、目を凝らせばどうにかそう見えなくもない文字列を、スラッシュと霧島は口々に読み上げる。

 どちらも、男が直々にデザインした機体であるためか、やはりその形状は、整備性や運用コストなどまるで考慮していない独自色溢れるものだ。

 ただし、全く見慣れない姿形であるかと言われれば、そうでもない。

 おおよその輪郭や、武装の一部など、以前に二人が操っていたスピキュールとプロキオンに類似する部分が幾つか見受けられた。

 同カテゴリーの別機体か、あるいは二機の設計思想を受け継ぐ後継機か。

 ともあれ、ここに描かれているものが、自分達の新たな力となるらしい。

 二人がひとしきり資料に目を通すと、男は改めて目を合わせてくる。

 自らが選んだそれらの機体に不満はないかという意思確認である。

 返事をすることすら馬鹿馬鹿しい問いに、スラッシュは苦笑を浮かべる。

 スピキュールは搭乗して数日の内に、自らの手足の一部のような錯覚に陥るほど、恐るべき速さで馴染んだ機体である。

 男が、スラッシュ以上にスラッシュの本質を見抜き、数十数百のストックの中から相応しい機体を充てがう心眼を持っていることは確かだった。

 ゆえに、相性面で疑念を抱く余地などなく、全面的に受け入れるのみであった。

 それでいてスピキュールと同一特性ということなら、もはや期待しかない。

 そして、一方の霧島も、スラッシュほどではないにしろ、異存がないことを示す表情に切り替わるのは早かった。

 以前の愛機の完成度が完成度だっただけに、やや挑戦的な機構を盛り込んだベテルギウスに対して思うところはあるようだが、更に先を目指すために必要な過程であると覚悟を決めたらしい。


『それを使い、そして……勝ち続けろ』


 男が二人に向けて発したのは、命令ではなく“願い”。

 同志の誓いを交わしながら、ただ一人メテオメイルを操る適性に欠けた者の、切なる希求。

 望むがままに万物を創造できる天才的頭脳を持ちながら、けしてその使い手となることはできない者の、悲しき役目。

 男は、仲間達の得た喜びを間接的に享受することでしか、満たされることがない存在なのだ。

 だから勝てと願うのは、形の上では、一方的な押しつけである。

 しかしこれを、ただの独善、身勝手と断じることが誰にできようか。

 一体どんな綺麗事が、彼を救えるというのだろうか。

 新たな力を得て、再び“ゲーム”の参加者として万全の状態となったスラッシュは、万感の思いと共に改めて決意を口にした。


「了解だ、ボス。このストレムグレンで今度こそ、北の果てまで外道を敷いてやる。どいつが相手だろうが知ったこっちゃあねえ、邪魔する奴は全員地獄行きだ」


 だが、そのやり取りをスラッシュ・マグナルスの復活の狼煙とするには、些か火力が不十分であった。



「そうだ……俺様は、奴の期待にさえも、応えちゃあいけねえんだ。奴が勝手に喜ぶしかねえんだ」


 その程度の理屈すらも失念してしまった自分の間抜けさに、スラッシュはほとほと呆れる。

 オーゼスの一員として臨む戦いは、誰かのためであってはならない。

 部外者は当然として、自分達に願いを託した男でさえも、勝利を求める理由の中から排除する必要があるのだ。

 不変にして不動の絶対個であり続けること――――それだけが、それこそが、自分が自分でいられる条件なのだから。


「やっと、テメエが何者なのかを思い出すことができたぜ。ほんっとに、どれだけ時間をかけりゃあ気が済むんだ、俺様は」

「思い出せないよりは、いいさ。僕のようにね」

「テメエは何も考えてねえだけだろうが」

「ははは、そうかもね……」


 言って、B4は恥ずかしげに頭を掻く。

 だがオーゼスの一員は、その状態――――自分の行いを何ら省みない視野の狭さの持ち主であることが理想なのだ。

 その点スラッシュは、外の世界に放り出された悪影響が、未だに残っている。

 自分と対になる沢山のものを目にしてしまった。

 となれば、これからスラッシュがやることは決まっている。

 覚めてしまった意識は、まどろみの中に追い戻さねばならない。


「さっきの問いの答えだ、B4。これっぽっちの酒でお開きだなんて、とんでもねえ。今日は俺様の帰還祝いだ。まだまだ飲むに決まってんだろうが……!」

「……祝いということは、僕もまだまだ帰れないということかな」

「当然だ! つうか面子が足りねえ。おいB4、今から霧島と井原崎とゼドラ、全員叩き起こしてここに連れてこい! こんなめでてえことに付き合わねえ道理があるかってんだ!」


 そう怒鳴り散らかし、B4をバーの外へ遣わしたスラッシュは、追加でオーダーしたウォッカの瓶をマスターから引ったくるようにしてそのまま喉に流し込む。

 どこまでも深く溺れて、たった一つの願望以外を全てを見失う。

 その境地に至れたときようやく、スラッシュ・マグナルスの完全復活は成る。

 まだ何も終わってなどいない。

 己のためだけに戦える男は、ここに存在する。

 スラッシュは、急激に全身を支配していく高濃度アルコール――――かつての自分に身を委ね、ただひたすら深淵を目指して沈んでいった。

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