8話「腕相撲」
深夜に書いたから少しテンション高めかも…。
「部長、ファイトです!!部費のためにも頑張ってください!!」
「おう!」
おい待てコラ。
何だよ、五回戦目の僕の相手。
めっちゃくちゃ体型しっかりしてるんですけど!?相撲部ですか!?アメフトですか!!?
瞬殺される気しかしませんが…!
「一ノ瀬だっけ?負けねぇぜ。」
うわっ、声も想像以上に太い。
本当、なんか、前に立たれてるだけでも迫力半端ないんですけど。
小学生とか幼稚園児とかここにいたらきっと泣くよ?
「そうですけど…貴方は?」
「俺は、三年の伊藤だ。」
名前は普通でした。
櫻井は、僕達の隣の隣で構えている。
彼の方をチラ見すると目線があった。
『勝てよな。』
口がそう動いていた気がした。
でももしかしたらこう言ってたかもしれない。
『負けろよ。』
もし、後者だったらこの勝負に勝ったら潰す。
櫻井が僕から目線を外し、自分の対戦相手をみる。
僕もそれを合図に伊藤を見る。
その時丁度アナウンスが鳴る。
「それでは、五試合目。腕相撲を行います。」
この相手に腕相撲とか、ある意味運良ければ運腕もげそうだよ。
苦笑いしか出てこない。
「では、よーいスタート!」
アナウンスが体育館中に響く。
伊藤の手に力が入るのがわかる。
「おりやゃゃーー!!!!!」
声、すごく怖いんですけど!?
でも、これ……やばい。
「はい。勝ち。」
「負けたー!」
「部長〜!!」
伊藤先輩、とても弱かった。
何だろう。最初あんなにビビってたのが嘘みたいに今なら笑えるよ。
いや、満面な笑みを向けて試合に挑めたよ。
「すみません。伊藤先輩。」
「ん?なんだ?」
「失礼かもしんないですけど、握力、いくらですか?」
「20前半。」
僕でも30はあるよ?
「もう一つ。部活は何やってるんですか?」
「アニメ、漫画研究部」
「…ありがとうございました。」
「部長〜!部費のアップが!!」
「悪いって。」
…すごくマニアックな部活所属の部長でした。
横で泣いてたり喚いている人達は無視して僕は櫻井の所へ向かった。
あっ、櫻井と対戦相手せってる。
やばい。櫻井が少し押されてる。
「くっ…!」
櫻井の対戦相手は本当にガタイが良くて腕の筋肉が半端なくある。
僕の相手は筋肉はないと言えば無かったかもな…と今になって思う。
とにかく、櫻井の対戦相手は筋肉が半端なくある。
それは確かだ。
「先輩!頑張ってください!!」
「あと過こしっス!!」
櫻井の対戦相手を応援している人達もガタイが良い。
こちらの先輩は絶対運動部だな。
と言うか嫌だよ。もう一度運動部では無くて文化部でした。ってオチ。
正直僕の自信がなくなるだけだから。
色々と独り言を頭の中で呟いているとさっきよりも櫻井が押されている状況が目に入る。
「…負けんなよ!空我!!」
「…っ!」
僕は櫻井に向けて大声を上げていた。
負けんなよ。
ここで負けたらさっきの言葉が何だろうと本当に容赦しないからな。
「うっ…!!」
対戦相手の甲が机にくっつこうとしていた。
「頑張れ!!」
僕が放った声と同時に対戦相手の甲は机についていた。
「やるじゃん。」
僕は笑みを隠せないでいた。