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7話 初めての仕事

 生徒会室に入ると、会長がソファーに座りながら紅茶を飲んでいた。

 俺と菜月は会長と対峙するように座ると、会長が紅茶を淹れてくれた。

 俺は紅茶に舌鼓をうちながら静かな時を……て、そうじゃない。

「会長」

「なにかしら?」

 会長は静かなティータイムが邪魔されたことが気にくわなかったのか、声に棘がある。

 だが、知ったことじゃない。

 こっちは早く帰りたいんだ。

 ティータイムは俺と菜月が帰った後にしてくれ。

 菜月も同じ考えだろうと思ったら、

「凪沙くん、静かにしなよ。今紅茶飲んでるんだから」

 注意された。

 どうやら、会長と菜月はティータイムは静かなほうがいいみたいだ。

 そう結論づけると、俺もティータイムを楽しむことにした。

 だが、ティーカップの中はとっくにからだった。


 会長がようやく言葉を発したのは、暇すぎてうとうとし始めた時だ。

「部活紹介て知っているかしら?」

「はい」

 俺は頷いた。

 部活紹介は新入生に対して、部活でどんなことをするか各部が説明する行事である。

 一年の時に参加はしていたが記憶に残ってない。

 たぶん、寝てたな。

「その部活紹介が来週の火曜日にありますわ、そこで二人にやって欲しい仕事がありますの」

 会長はそう言うと、数枚の白紙の原稿用紙を俺の前においた。

「部活紹介で生徒会が読み上げる原稿を書いてほしいの」

「原稿ですか……」

 そういえば、しばらく作文なんて書いてなかったな。

 俺に書けるだろうか……。

 たぶん、無理だ。

 だって、書く以前に生徒会についてほとんど知らないもん。

 昨日入ったばかりのやつに、やらせる仕事とは思えないな。

 だから、断ろう。

「無理です」

「あら、なぜ?」

「会長考えてみてください。俺と菜月は昨日生徒会に入ったばかりで、生徒会についてほとんど知りません。そして、原稿を書くには生徒会がどうゆうものなのか、知らないといけません。ゆえに、原稿を書くことは不可能です」

「ええ、知ってるわ。だから書かせるんじゃない」

「それはどうゆうことですか?」

 俺は会長に訊ねた。

 会長は言い聞かせるように俺に言う。

「いい、泉さん。これからあなたは生徒会役員として生徒会を支えていかなきゃならないの。だけど、それをやるには生徒会がどういう活動をしているのか知らないといけない。だから、今回原稿を書くという形で生徒会を知ってもらおうてわけよ」

「なるほど」

 つまり、会長は生徒会の仕事をやらせると同時に俺と菜月に生徒会を知ってもらおうてわけか。

 一石二鳥とはこのことだな。

「で、期間ですが、今週の金曜日までにお願いしますわ。後、わたしもできるだけサポートします。さすがに二人で調べるには時間が足りないと思いますので」

 今日が火曜日だから、金曜日までとなると、大体四日か。

 少ないかどうかわからないが、会長がサポートしてくれるんだから問題はないだろう。

「わかりました、やりましょう」

 俺がそう言うと、会長が微笑む。

「初めての生徒会の仕事ですが、頑張ってくださいね」

「はい、わかりました」

「それと、この件は後で黒川さんにも伝えておいてください」

「えっ、菜月ならここに……」

 隣を見ると、菜月が寝ていた。

 どうりで静かだと思ったよ。

「菜月起きろ」

「んっ……凪沙くん? て、あれ、いつの間にわたし寝てたの?」

「知らん」

 俺に訊ねられても困る。

「会長すみません」

「気にしなくていいわ、それと、仕事のことは泉さんに話してあるから、後で聞いてください」

「……わかりました」

 菜月はしょんぼりした様子で言った。

 家に帰ったら、励ましてやるか。

「今日は二人ともお疲れさま。後は家に帰っていいわよ」

「わかりました」

 俺は帰ろうと鞄に原稿用紙をしまう。

 立ち上ってドアノブに手を伸ばした時、

「あ、それと泉さん」

「?」

 振り返ると、会長は人差し指を口にあて、ウィンクした。

「今日の下着の色は緑ですね?」

 なんでわかったんですか、とは聞かない。

 俺は黙って、生徒会室を出た。


 今日、短パン履いてないんだった。

 すっかり、忘れていた……。



 <海道レン視点>



 今日、ボクは初めて黒川菜月という人物にあった。

 凪沙から色々と聞いていたが、まあ、悪いやつではないだろう。

 ただ、思い込みが激しい人なのかもしれない。

 まさか、凪沙の浮気相手だと思われるとは。

 本当にひどい目にあった。

 だが、このことをきっかけに黒川さんと友達になれるかもしれない。

 そう考えれば、今日あったことも良かったかもしれない。

 もちろん、黒川さんと友達以上の関係は持たないが。

 もし、そんなことになったら、凪沙に悪いからな。

 それにだ……。

 いや、やめとこう。

 そういえば、凪沙と黒川さんが生徒会に入るってメールがあったな。

 二人は大丈夫だろうか。

 あいつは結構人使いが荒いからな。

 おかげで、なんど手伝わされたことやら……。

 同情はするが、それだけだ。

 そんなことを考えてるとマナーモードにしといたケータイが振動した。

 見てみるとメールだった。

 メールを読んで、はぁと一つため息をつく。

 暇潰しに読んでいた本を棚に戻すと、図書室を後にした。



 <泉凪沙視点>



「疲れたー」

 家に帰ってくるなり、俺は自室のベッドにダイブした。

 制服がシワになりそうだが、どうでもいい。

 帰り道、スカートに細心の注意を払った。

 そのおかげか、菜月には一回しか注意されなかった。

 十分な進歩だ。

 だが、疲れた。

 俺がベッドでゴロゴロしていると、コンコンとノックされた。

「凪沙くん、開けていい?」

「いいぞ」

 許可すると菜月が入ってきた。

 振り返り声をかけようとしたが……言葉を失った。

「どうしたの凪沙くん?」

 菜月は怪訝な様子だが、俺はそれどころではない。

 今、俺は菜月に見とれていた。

 制服にエプロン姿で、髪型はいつもと違いヘアゴムで髪を一つにまとめていた。

 ポニーテールだ。

 さらに、髪型を変えたせいか白いうなじが見えた。

 なんか、新鮮だ。

 ツインテールのキャラが髪をおろすと、また違うかわいさがある、みたいな感じだな。

 俺が見つめていると、菜月は頬を赤く染め、目を逸らした。

「凪沙くん、その……あんまりジロジロ見られると恥ずかしい……」

「あっ、ご、ごめん」

 しまった……、つい見とれてしまった。

「それで……その、どうかな?」

 菜月は瞳を潤ませ俺を見てくる。

 はっきり言おう、超かわいい。

 だが、言葉に出すのは恥ずかしいので、

「……かわいいと思うぞ」

 小さくボソリと答えた。

 それを聞いた菜月はうれしそうだ。

「ありがとう、凪沙くん。お礼に着替え手伝ってあげるね」

「結構です」

 全力で菜月を追い出した。


 制服から私服のジャージに着替えてリビング行くと、昼飯が用意されてた。

 材料は今日の帰りによったスーパーで買ったものだ。

 昼飯を食べていると、自然と生徒会の話になった。

「初仕事だね」

 一通り説明すると、菜月はそう言った。

「そうだな」

 初仕事か……。

 不安はあるが菜月がいるから大丈夫だろう。

 それに会長も手伝うて言ってるんだ。

「そういえば、なんで寝てたの?」

「たいした理由じゃないよ。ただ、紅茶飲んであまりにも静かだったからウトウトしてきちゃて……」

「同感だ」

 その気持ちはわかるぞ。

 俺も後数分遅かったら寝てたな。

 それからも、他愛ない話をした。


 昼飯を食べて、食器を洗うのを手伝い終わると、原稿を書くことにした。

 まずは、自室にあるパソコンで学校のホームページをチェックしてみると、生徒会紹介というものがあった。

 そこには、今まで生徒会がやってきた活動がかいてある。

 それらから、めぼしいものがあったらメモをとった。

 一時間後。

 メモをもとに原稿を書き始めた。

 さらに、一時間後。

 書き終わった。

 四日間の作業を二時間で終わらせてしまった。

 もしかして、俺天才じゃね。


 翌日、会長から「ボツね」と言われた……。

 



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