どうやら乙ゲーの世界観してるけど、乙ゲーとは全く別物のジャンルの世界に転生したようです。
私、ルーナ。ぴちぴちの16歳(詐欺)。元日本人JKで、今の職業は乙ゲーの主人公です。
乙ゲーといっても、ぜんっぜん、攻略してイチャイチャ~なんて生温いモノじゃないんですけれど。しっかりとしたファンタジー楽しんでますが何か?
私、腐女子ではなかったけれどオタクではありました。類は友を呼ぶ、というのか…周りには腐女子が多かったため、乙ゲーなるものを勧められることは結構ありました。友情関係を壊さないためにも、そして少しだけ、少しだけ(←ここ重要)興味があったのでおススメと言われた乙ゲーはやってみていました。
ですが、私が転生した世界は、乙ゲーという名の詐欺世界だと思います!確かに、前世でプレイしたことのある『恋しよっ!~勇者育成学園で、勇者のひよっこたちと~』なるゲームであることは間違いないのでしょう。だって、私が通っているのは勇者育成学園だから。
舞台は、乙ゲーのようですが…、よっしゃめざせ逆ハー!とか浅ましくもウハウハしていた私に天罰でも下ったのでしょうか?きっとそうなんでしょうね。
これは、乙ゲーではありません。もう一度言います。これは、乙ゲーではありません。
だって、『恋しよっ!~勇者育成学園で、勇者のひよっこたちと~』での魔王は、すでに討伐されていて攻略対象にもなっていたんですよ?製作会社、何考えて勇者育成学園とかいう舞台作ったんだ!?って、なってたんですよ?
でも、でもでも!私が転生してしまったココでは、あるはずだった勇者誕生が無く。魔王討伐されてません!!
どうやら世間さまから何のための勇者学園なんだ!とバッシングされているようで、今度の新入生が卒業するまでに魔王を討伐しますとか約束しちゃったらしい。それどんな無理ゲ。だから、入学してから私たち高等部1年から3年には過度の期待(というよりももはや圧力)がかけられていて、恋愛とかやってる場合じゃありません。少しでもイチャイチャしようとか思うと、教師ににこやかな笑みで訓練を言いつけられます。目が笑っていない。怖い。教師、殺す気か!?
攻略対象に教師がいるんですけど、そんな隙見せてくれない。なぜ?なぜなぜなぜ!?
ツンデレ君とかショタとか不良とか、先輩後輩、教師もあわせて7人+隠しキャラが2人の9人を攻略できるはず、だったのですが…無理ですね。みなさん、眼を血走らせて魔物を討伐していらっしゃる。恋愛とか、できる気配もない。
ここは、乙ゲーなんですか!?違うんでしょうね。神様のいじわる。
世界だけ見れば乙ゲーなのに…ぬか喜びさせやがって。
とか恨みつらみ言ってもしかたないので、頑張ってぼっち(笑)で強さをあげていると。主人公補正でしょうかね?なんだか、そこそこ強くなれたようで、第1653次魔王討伐のパーティメンバーに選ばれました。わぁい!
喜んでいいのかは謎だけど、努力が認められてうれしい!ということにしておきましょう。乙ゲーなのに主人公補正…ププッ。これって普通よくある転生チートモノで使われる単語だと思ってました。
ってか、1653回目とかどんだけ魔王強いんだよ。諦めろよ。なんで人間界征服しきれてないんだよ。
…わぁお、突っ込みどころ満載(キラッ)
まぁ、それはそれとしておいておくとして。
魔王討伐、逝ってきます。
あ、ちなみにパーティメンバーは、攻略対象者さん2人と私です。
くわしく紹介すると。
・レートルド・オスケリア
剣士。歴代最強と名高い。ゲームでは、一番無難な攻略キャラだった。幼馴染だし?金髪碧眼の王子さまっポイ人。ココだと、私に対してすごく堅苦しいって言うか…もう少し女慣れしたら?って感じの人になっちゃってる。勇者になる訓練のし過ぎで。まぁ、それはそれで萌えるけど。
・アベリスタ・セレモネ
魔術師。こちらも歴代最強だとか。お貴族様なので俺様要素あり。それはゲームでもココでも変わらない。銀髪紫眼の美青年さま。私、このキャラ好きだったの。過去形ですが。やっぱり彼も無難な攻略キャラで、バッドエンドになりにくい人でした。ココでは、周りに付きまとう生徒たちへ常に冷たい視線を向けている。ああ、この人超越しちゃってるな、なんて感じる人。攻略するのは大変だと思われる。
でもね、ちょっと期待してるんだよ?めくるめくハークレインが私を待ち受けているのではないかと…(遠い目)。
「セレフィア!そっち行ったぞ!」
アベリスタから指示が飛ぶ。もうそろそろ魔物を退治するのにも慣れてきたころですね。もう…乙ゲーなのになんで。何を間違えたっての神様!?私ナニカ悪いことしましたか!?
「はいっ!《天誅》!!」
雷が雲一つないのに空から魔物へ降り注ぐ。
「アベリスタ、後ろ!」
スライムが後ろからアベリスタを食おうとしていたのに気付いたレートルドが忠告の声をあげた。
「言われなくても。《一掃せよ》」
私たちを囲んでいた魔物が一気に消滅した。流石魔術師。えげつない攻撃すんなー(棒)。
…なんて、懲りずに期待していた私がバカだったのかな…?なんにもなく、うっかりポロリとかもなく、本当になんにもなく。魔王城へついてしまった。
あ、バトル面では色々とあったんだよ?魔物の群れに襲われて3人で背中を合わせて戦って絆を強めてみたり(恋愛面には発展せず)…魔族4公爵とかいう奴に殺されかけてアベリスタが新たな魔法を使えるようになったり(やっぱり恋愛面には発展せず)…私に新スキル《空気を読める女》が発生したり(恋愛面に発展するどころか遠ざかった)…本当に色々とあったよ。でもさ、なによ、《空気を読める女》って。どんな嫌がらせだよ。別に読みたくて読んでるわけじゃないし?読まざるを得ないだけだし?
「行くぞ、アベリスタにセレフィア。魔王討伐して先生を喜ばせよう」
「そうだな」
「そうだね、レートルド」
先生を喜ばせる、というよりも学園をつぶさないために?
魔王討伐できなかった時を考えるのが辛い。どうしよう…生き残れるかな。
教師の訓練に…。魔王との戦いではなくて(←ここ重要すごく重要)。
まぁ、うなだれるのは其処までにしておいて。
さ魔王討伐レッツらごー!
とちゅぬ…噛んだ。突入!!
「セレフィア」
「言われなくても!《聖フィールド》展開!」
聖フィールド。その名の通り、聖なるフィールドを張ること。弱い魔物ならこれだけで消滅する。けど…魔王には効果ないっポイ。だけど、魔王が放ってる邪気が打ち消されるから動きやすくなったしー?プっ、プラマイゼロだしー?
「《森羅万象!すべての事象は我に司られる》」
アベリスタが声高く叫ぶ。
彼の魔力が渦を巻いて凝縮していく。圧縮された魔力は魔王めがけて放たれる。
森羅万象系統の魔法。これをアベリスタは習得した。
え、魔王の口上?そんなの聞かないよ。聞いてる余裕なんてないよ?
先手必勝に決まってるじゃないですか、アハハハハ。
「《剣士、何処までも誇り高くあれ》」
レートルドへ保護魔法をかけておく。
私は後方支援。モノ投げつけたり治療したりETC。こんなことしてるからスキル《空気の読める女》が…し、仕方ないじゃないですか!
たまには殴りかかって…
「セレフィア、そこで大人しくしといてくれ」
むん、とヤル気を出したところで制止するようにレートルドに声をかけられた。
「…ふぁい」
従うしかないよね、剣士様だもの。邪魔できないですし
あれ、主人公補正ってどこに行ったのかなー?馬鹿にしたから飛んでっちゃったのかなー?おっかしーなー?
鬼気迫っているのはみんな同じ。魔王はどこか余裕ぶってって…癪に障るなオイ。
特大魔法ぶちかましてやれ。主人公補正よ!出番だ!!
「《天高くいずる最高神。汝の巫女の呼びかけに応じ、その力を示したまえ。愚かなる者どもに、裁きの時を!ブラスト・ムーン・ディスカバリー!》」
…ひどいネーミング。なんだよ、突風・月・発見って!センスないにもほどがあるだろ神様―!?
だから使いたくないのに…ううう。効果としては、稲妻が降ってくるんだけど…ああ、手で払われた。しかも、稲妻…一体呪文のどこに含まれていたんだい?教えてくれないか。
ほら、魔王も失笑してるし!
「セレフィア、落ち着け。…《森羅万象!氷焔乱舞》」
呪文適当すぎるだろ。森羅万象付けときゃいいとか思ってんじゃないのアベリスタさん?
しかもあんたに言われたくねー!言われたくねーよ!
「くそうくそうくそう!《我は巫女なり。全ての現象を操り、己の敵を抹消したり!消滅せよ、魔王!!》」
即興魔法でどうだ!お、おお?魔王が凍りついたぞ、精神的に。こりゃもうけた。
あ、魔力切れたわ…。神様と通信しようとすんの、魔力食うな…。やっべ、ポーションポーション。
「ナイス、セレフィア。覚悟っ!訓練を逃れるためにもっ!!」
…やっぱ鬼気迫ってるわ。ヤバい、眼から汁が…。
レートルドが魔王めがけて剣を振りかぶった。
凍りついた魔王は避けきれず一刀両断に。
ざまぁ!ざまぁみそづけ!
余裕ぶってるからだ!
これで…これでっ
「地獄の訓練から逃れるっ!!」
「やっと…」
乙ゲーできるぞ!喜べ私っ!
「長かった旅も終わりか…レートルド、セレフィア。お前たちとのパーティで良かった」
あれ、死亡フラグ?
ちょ、アベリスタそれ、しぼうwwwフラグww
止めろ、こんな時に立てていいフラグじゃない。
よし、こうなったら魔王が『フハハハ、第2の俺参上☆』とか言い出す前にくたばらせよう。
「《天神の怒り》」
激しい雷が魔王(亡骸?)に降り注いで灰にした。
「…容赦ないな」
「だって、復活したら嫌じゃない?」
「それもそうだ」
同意された。いや、いいんだけどさ。
「転移陣作ってよ、アベリスタ」
「作り終わったぞ」
魔王城の床に、紫色の陣が現れた。
これに魔力を注いで、呪文を唱えれば学園につながる転移扉になる。
あっという間に帰れるってわけ。
勇者育成学園に戻ると、先生がたが目に涙を浮かべて飛びついてきた。
うん、これなんてぼーいずらぶ?
だ れ と く だ よ !?
失礼、あまりの衝撃についつい。
あ、私に抱き着いてきたのは白魔法の先生で、女性だから、じーえるでどぞー(←自暴自棄)。
さ、ラブコメにはいろーぜさっさと。もうファンタジーはいいよ、ほんとにさ。
乙ゲーをそろそろやらせてください(切実)。
とりあえず、魔王討伐終了したんでこのまま流れでパーティ開こうぜ!って話になったらしく。明後日、パーティするらしい。もちろん、勇者メンバーとして私とレートルドとアベリスタは主演。ここで、グッと好感度を上げて…。頑張っちゃうぞー!お姉さん、本気だしちゃうからねー!?惚れちゃって結構だよ!着飾っちゃうんだからねっ。
青いドレスきて、ネックレスとか付けちゃって、金髪(そう、私金髪なんです。染めてないんですからね?)をアップで結わき、準備万端!後は、レートルドとアベリスタにエスコートしてもらって会場に入っていけばいいの。
2人とも男子は制服が盛装だから、制服着てるけど滲み出る貴公子オーラが…じゅるり。いけないいけない見てたら涎が。
「そろそろ時間だな」
「入るか」
「そうね!」
両脇をイケメンに挟まれての登場…。これなんて逆ハーレム!?キャーキャー!
そう、これだよこれ!こういうのを待っていたんだ!乙ゲー、入った感じじゃないですか!?
大きな歓声と拍手に包まれて、主演が座る席へ向かう。
「楽しかったな、3人での旅」
唐突にレートルドが語り出した。どうしたのいきなり!?なんか悟っちゃった!?
「そうか?まぁ、悪くはなかったが」
「私も楽しかったわ。2人の意外な一面が知れたもの」
と、まぁ話に乗っかってやろうじゃないか(上から目線)。
「だから、その…だな。セレフィア、この後一緒に踊ってはくれないだろうか?」
照れたように笑う美形。…ゴチッス。アザッス。もちろん、踊るにきまってるじゃないですか!断る奴なんかいません!
「かまわないですけど?」
「そうか。良かった。断られるんじゃないかと心配していたんだ」
来たー!!ktkr!これは来たっ!フラグフラグフラグフラグ!お、おおおおと乙ゲー!
レートルドルートか。ま、仕方ないけどさ。もうちっと選択しあるとよかったな。夢見るとどん底に落ちそうだからやめよ。
そんなちょっと浮かれた中に。
王宮からの使者がとびこんできて。
「大変です!!大魔王が復活したそうです!!」
一気にざわめきが消える。浮かれた空気が霧散してしまった。
シンとした会場に、誰かが言った「マジかよ」という言葉が低く響いた。
そしてまた、ざわめき。
「勇者様方に、退治していただきたい!!世界の危機ですっ!!」
それを、黙らせるように使者は、大声を出す。悲鳴のような、声だった。
耳を疑う。
マジかよ勘弁しろよ、オイ。
口走ってはなかったようで一安心。キャラ壊れちゃうしね。
「しかた、ないな」
「そうだな。…致し方ない」
「…うう」
涙涙。2人ともすごく嫌そうな顔してるよ。勇者育成学園入ったからには仕方のない末路だったのにさ。…選択肢、間違えたかな。間違えたんだろうな。
そして振出へと戻るのだった。
…乙ゲーを、やらせてください。
ファンタジーは、当分いりません。
誰か、私に、恋愛をさせてください。