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第00話 プロローグのようなもの

お初にお目にかかります、カニです。

後書き、コメントなどは、活動報告に載せようと思います。


誤字、脱字やアドバイスがありましたら、遠慮なくお願いします。



 第00話 ~プロローグのようなもの~



 

 見渡す限りの広大な草原。

 穏やかに吹く風が、力強く照らす太陽の熱を和らげ、生い茂る草の香りを運び爽やかな気分にさせてくれる。

 見渡せば、遥か遠くから延びている道が続いていて、大体10キロメートルの等間隔に複雑な装飾を施された柱が建てられていた。

 それは、何処かのどかな田園風景を彷彿とさせるものだった。


 「……わぁーー……」


 その景色と森と境目に多様な植物に覆われた建物がある。

 それは一階の一部と二階の一部屋しか残っていない廃屋だった。憶測でしかないが、分厚い壁に無駄を省いた機能的な造りから、砦だと思われる。恐らく、たぶん、きっと。そんな形容詞が付かなければ分からないほど、原型を留めていない程の廃れ具合だ。

 その二階に呆然と佇む小さな姿があった。


 その姿は、美しい少女のようである。

 白磁の滑らかな肌は蜂蜜を薄く塗ったような艶を持ち、風に任せて游ぐ長い黒髪は、染められた絹糸を連想させる。


 「……いい眺めだなぁー……」


 服装はシンプルな黒のタートルネックに白いレースのカーディガンを羽織って、モスグリーンのカーゴパンツを穿いている。その姿は、近場に出かける格好とも見えた。

 しかし、どう考えてもここに一人で出歩くような年齢ではない。その見た目は、間違いなく幼い少女にしか見えなかった。


 「……で、何処なんだココアーーッ!?」


 先程から呑気な小言を呟いているが、内心は酷く混乱していた。私は何処? 此処は誰? 等と、どうしようもない考えが溢れてくる。助けを求めようにも周囲には誰もいなく、人が住んでいる気配も感じない。何処に向かえば人がいるのか見当もつかなかった。


 孤立無援。


 そんな言葉が脳裏を駆け抜けると力尽きたように膝から崩れ落ちた。無理。何この罰ゲーム。あり得ない。と弱々しい呟きが漏れるも、それに答えてくれる者もいない。どうしようもない寂しさばかりが募る。

 少女は、あまりの理不尽さに翡翠の瞳に浮かぶ涙を堪えながら、これからを生き抜くために頭を抱えて唸り始めた。



 そんな少女の傍らに数枚の手紙が落ちていた。

 それは、少女に災いをもたらした原因であり、今現在の不幸の元であり、これから起こる事変の始まりであった。

 一枚目の手紙の内容は以下の通りである。



  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 親愛なる城ヶ(しろがね) (つばさ)様へ


 拝啓、秋風がたち始め、過ごしやすい季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 さて、この度貴方様を遠くの世界に……ああ、なんだか面倒だね。堅苦しくてやってられないよ。


 やあ、元気かい? 新しい人生を楽しんでいるだろうか? 一応、貴方の好みや希望に沿ってみたんだ。中々の出来だろう。恐らく八割の人々が、振り返るだろうね。うん、良い仕事をしたよ。


 まずは、貴方に最大の感謝を。

 こちらの事情に巻き込んですまない。貴方のお陰で大いに助かりました。

 しかし、そのせいで貴方が、あんな事になってしまうとは思わなかったんだ。英雄である貴方にお礼もしないのは、我々の沽券に関わるのでね。勝手ながらに貴方の望みを叶えてみたんだ。貴方は中々に謙虚だよね。あっという間に用意できちゃったから、色々と特典を増やしてみた。後で別紙を確認するといいよ。正直、やり過ぎた気がするけど……


 サービスとして会話できるようにしてあるけど、文字の読み書きは自力でヨロシク! 生き残るために必要そうなモノはある程度用意してあるから、頑張って習得してね♪ 一通り覚えれば、そうそう死なないと思うから。

 それじゃあ、元気でね。けぇーぐ。



              ついさっきまで貴方の側に居た神より


  ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 手紙の内容は、どうしようもないものであった。




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