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殺人鬼の猫は産まれなかった

作者: 冬木 朔
掲載日:2026/09/25

2人は互いの幸せを願う

不器用なりに

『だからね、咲(さき)さん。人間は生きてるんだよ』

『そうね、朔(さく)。人間は生きている』


「この世界はハッピーエンドのはずだ」

朔、という名前の僕は階段を上がる。

卒業式をサボり、屋上へとつながる階段を上りながら。

「だって、僕はこの1年、咲に幸せを教えてあげたから」

ゲームの世界に転生し…。


そして、朔は扉の前に立つ。

誰もいないことを願いながら、それを開ける。


しかし。

そこに『産まれたばかりの殺人鬼』がいた。

服を真っ赤に染め、1人、そこに少女は立っていた。




「…何がいけなかったのかなぁ」

ため息を朔は吐く。

「これじゃ、ゲームと一緒じゃないか!」

『殺人鬼の猫』という、ゲーム。

主人公は街の人たちと仲良くする『朔』という少年。

ヒロインは自称心のない『咲』という少女。


高校の卒業式、朔はふと(このように)屋上へ行く。

すると咲が立っていて(このように)、真っ赤に染まっていて(このように)。


卒業式に殺人鬼が産まれる、というバッドエンド。それしかルートがないという最悪のゲーム。


「なぜ来たの?」

冷たく咲が聞く。

「なんで殺したんだ、咲さん。この1年、楽しい日々だったじゃないか。一緒に花火大会に行ったり、文化祭で屋台をまわったり」

「朔が幸せになれないから」

「…僕?」

コク、と咲はうなずく。

「はじめは、皆の幸せを願っていた。

だけど、朔と遊んでいたら朔に幸せになってほしくなった」

「じゃあ、なんで殺したんだ?」

「朔の悪口を言う人は殺さないといけない。朔が耳にする前に。だって、悪口は傷つくでしょう?

今日、お母さんに言われた。優しい人と一緒にいて疲れたでしょって。それって悪口だよね? だから殺した。傷つかないように」


倫理観…倫理観どうなってんだ、咲さんは。

幸せを願ってくれるだけでいいのに…。

なんてこった。

咲と仲良くするだけじゃダメだったんだ。問題は倫理観だったんだ。


不味いな。

このままじゃゲームと同じだ、殺人鬼が産まれる。

何か、いい手。バッドエンド回避。




「じゃあ、僕を殺して」

咲さんに笑顔で言う。

恐怖を隠し、心から望むように。

「なんで? 私は朔に幸せになってほしい」

「馬鹿だなあ、咲さんは。

傷つかないで生きるなんて無理なんだ。人は傷ついて生きるものなんだよ。

だからさ、僕が傷つかないで幸せになる方法は1つしかないんだ。

ここで、僕の好きな咲さんに殺される」


朔はそう言うと手をひろげる。

殺されるという恐怖を隠し、あくまでも笑顔で。


「本当に幸せになれるの?」

「うん、幸せになれる。

だからさ、捕まっちゃうだろうけど、幸せに生きてよ。僕はそれを願っているんだ」

「…わかった」


ああ。

これは、主人公的にはバッドエンドだな。

だけど、世界や、咲さんにとっては、バッドエンドじゃない、バッドエンドだけじゃない。

殺人鬼は産まれなかった。

ゲームを僕は壊した。


そして、僕は、微笑む咲さんに…。

最後までお付き合いありがとうございました!


俺ツエーでもなく、

ざまあ系でもない、

すぐに埋もれて誰にも読まれなくなるでしょう、

なので今これを見ている貴方に感謝!

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