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Vtuber になったらシリーズ

Vtuberやってたら両親もVtuberだと判明した件について

作者: じりゅー
掲載日:2026/03/15

 

『今日は楽しかった! ありがとーアズちゃん!』


「またコラボしようねアンちゃん!」


『うん! せーの…』


『「おつアンアズ~!」』


 :おつアンアズ~!

 :楽しかった!

 :お疲れ様でした~


 画面に映る水色がかった青髪の子と、銀髪碧眼のかわいらしい子が揺れる。

 青髪の子は僕のアバターだ。

 僕はVtuber、“アズール・フレッシャ”。

 本当の名前は蒼矢(そうや)。Vtuberの名前は本名をポルトガル語に翻訳したものをそのまま使っている。

 男にしては声が高く、意識すれば女の子らしい声が出せるので性別不詳Vtuberとして日々配信をしている。アバターは女の子寄りの顔をしていて胸はない。

 今日は白い髪の子――”アンナ・テーナ”さんというVtuberとのオンラインコラボ配信だった。

 内容はパーティーゲーム。実力はどっこいどっこいなので、これまでのコラボ配信の中でもそこそこ盛り上がった方だと思う。

 コメントも視聴者数も僕の中では上々。満足して配信を閉じようとしたところで――


「おーい、飯だぞー」


 ――親フラ!?

 急いでクリックして振り返る。


「お父さん!? 今行くから待ってて!」


「そうか…

『待ってるからな。』」


 なんかかっこつけて戻っていったお父さんにちょっと引いてからパソコンに向き直る。


「……あれ?」


 まだコメントが流れている。しかも、見たことない早さで。

 とりあえずコメントを遡って読んでみる。


 :今の声って槍車フロウじゃね?

 :待ってるからな!?

 :これフロウの配信だったのか()


 ……槍車、フロウ?


『ねえアズちゃん! 今のって…今の『待ってるからな』って!

 オンリーカラーの一期生の槍車(やりぐるま)フロウさん!? いつも配信の終わりに言ってる『次の配信で会おう、待ってるからな』だよね!?』


 ………


「マジで?」


 あらぬ場所にあるカーソルと、終わっていなかった配信と通話。

 配信の切り忘れ、父親が有名人。信じられない二つの事態に、僕の脳みそは取り残されてしまった。






 パシャパシャパシャ…


 画面には白背景でテーブルの上にマイクが三つ並んでいる様子が映っている。

 BGM代わりにカメラのシャッター音が絶え間なく流れており、今にも謝罪会見でも始まりそうだ。近いものではあるけど。

 そこに僕、アズール・フレッシャと槍車フロウの立ち絵を表示させる。


「こんばんは、オンリーカラー一期生所属、槍車フロウです。」


 赤く少し逆立った髪が特徴の男性だ。外見は何度か見ていたので把握していたが、配信で見たことが無かったので動いているのが少し新鮮に感じる。


「個人Vtuberをしております、アズール・フレッシャです。」


 普段の挨拶をする空気ではないので粛々と自己紹介をする。

 フロウさんが続けて言う。


「関係者及びオンリーカラー運営の方とも協議した結果、私とアズールさんの関係を公表することとなりました。早速ですが公表に入りたいと思います。」


 :

 :

 :

 :

 :


 コメント欄がざわつき、一気に流れていく。目で追えないほどの早さだ。


「親子です。私が父、アズールさんがむす…子供ということになります。血のつながりもあります。」


 :

 :

 :

 :

 :


 僕が性別不詳でやってることを思い出してか、一瞬言い淀んだ。

 コメントの勢いは収まらない。


「今槍車フロウさんが言ったことは事実です。

 私、アズール・フレッシャと槍車フロウさんはお互いにVtuber活動を行っていたことを知らぬまま共に暮らしていました。」


 :

 :

 :

 :

 :


 僕が肯定し、お父さんが話すのを待つ。


「ここでもう一つ、公表することがあります。」


 用意していたもう一つの立ち絵を表示する。

 今まで一言も発していなかったけど、ここには僕とお父さん以外にもう一人いる。


「こんばんは、オンリーカラー一期生所属愛原ルピナスです。」


 ピンク色の髪に上向きの紫色の花が生えている女性が映し出される。

 彼女は槍車フロウさんの同期で、彼と同じく大人気Vtuberだ。


「早速ですがどうして私がここにいるのか、という皆さんの疑問にお答えします。

 私は槍車フロウの妻で、アズール・フレッシャの母です。」


 :

 :

 :

 :

 :


 相変わらずコメント欄は読めないが、なんとなく悲観的なコメントが多いように思える。

 無理もない。所謂ガチ恋勢には深刻な打撃だろうし、そうでない人でもショックを受ける人は多いだろう。


「結婚した時期はデビュー前からです。

 アズールさんも私達がVtuberになると決まる前から生まれていた子です。」


「当時の会社の方針でアイドルというよりエンターテイナーとして適正がある社員を選んだ結果、私達夫婦が選ばれ、今日まで活動を続けておりました。

 隠していたというわけではなかったのですが、このようにデビューから長い年月が経ってからの報告となってしまい申し訳ありませんでした。」


「申し訳ありませんでした。」


 両親が目を閉じ、頭を下げる。僕もそれにならった。


「今後も私達3人は活動を続けてまいりますので、よろしければこれからも応援よろしくお願いします。

 今回の配信は以上です。後日質問や意見をマッシュで募集し、3人で返答していく配信を行いますので後ほど概要欄に追加するURLから応募をお願いします。ここまでご覧いただきありがとうございました。」


「「ありがとうございました。」」


 再び3人で頭を下げ、配信を閉じる。

 一度緊張の糸が切れて大きく息を吐きだす。けど、まだ安心できない。

 家族関係公表の反応が怖い。炎上してVtuberを続けられなくなる危険性がある。

 とはいえ今できることは何もない。

 せめて次の家族コラボが穏やかに出来るように祈るだけだ。






 反応は様々だった。


『元々とはいえ子持ちだったのかよ…ショックだ』


『俺のルピナスが…』


『既婚者であることを隠していたのは信じられない』


 嘆く人、悲しむ人、批判する人。


『デビュー前からならしゃーなくね?』


『結婚してても好きだ! 推し続けるぜ!』


『推しが幸せならオッケーです!』


 擁護する人、喜ぶ人、祝福する人。


『表での絡み少ないのに妙に親しいと思ってたから納得したわ』


『ずっと温めていたルピフロ夫婦説が立証されちまったなぁ!』


 実は勘づいていた人。

 炎上していた投稿もあったけど、思いのほか好意的な意見もあった。2人がどれだけ愛されているかがわかる。

 更に。


『アズちゃんの血統つよすぎんか?』


『アズちゃんすごい両親持ってる系の主人公なんよ』


『最近までアズール知らなかったんだけど男? 女?』


 僕に対する投稿もあった。

 ルピナスさんとフロウさんが結婚していたことが話題の大半を占めていたけど、大本が僕とフロウさんの関係がバレたことだからそこそこ僕の話も広がっている。

 チャンネル登録者数も数倍伸びた。今までの頑張りは何だったのかと思ったけど特大のスキャンダルが原因なので納得できなくもない。


(そう)くんはアズールでアズちゃんって呼ばれてるのよね、私も配信ではアズちゃんって呼んでいい?」


 今日は予定していた親子3人でのマッシュ返し配信だ。マッシュは視聴者からの質問を募集するのによく用いられるサイトで、僕も何度か利用させてもらっている。

 今はその配信直前の時間で全員僕の部屋に集まり、軽い打ち合わせをしながら配信開始時間を待っている。


「良いよお母さん。じゃあ僕はルピナスさんにしておくよ。」


「家族なのにさん付けは寂しいわ。もうバレちゃってるしお母さんでも良いんじゃない?」


「それだと後々初見の人が分からなくなるだろう。俺もお母さんもひとまず呼び捨てで良い。」


「大先輩相手に呼び捨てはちょっと…」


「それは配信で説明すればいい。本人に言われたら皆だって何も言えないだろう。」


「そうかもしれないけど、僕の心理的抵抗が…」


「それは蒼くんがなんとかして。」


「そんな殺生な。」


「時間だ蒼矢、始めてくれ。」


 お父さんに言われて時間を見ると開始時間になっていた。

 配信を開始し、オープニングを流す。


「ちょっと緊張してきたわね。」


「俺も3Dライブ以上に緊張してるよ。」


 そっか、2人とも3Dライブやってるんだ。もっと大きな仕事も。

 これまであんまり実感が無かったけど、ようやくちょっとだけ実感できた気がする。2人がベテランのVtuberだってことが。


「始めるよ。」


 オープニングを切り、ミュートを解除する。

 画面に映ったのはあらかじめ用意していた背景とそ3人の立ち絵だ。


「始まりました!」


「アズちゃん、敬語禁止ね。」


「え!?」


「そうだぞ親子なんだから。よそよそしい。」


「いや、今のリスナーさんに言ったんだけどね?」


 :始まった!

 :アズちゃん呼び!?


「アズちゃんって呼んでいいって言ってくれたから今後はそう呼ぶわ。

 私もフロウもアズちゃんには呼び捨てで良いって言ってるから。もし敬称を付けたらアズちゃんの性別をばらすわ。」


「え!? 聞いてないよ!?」


 :了承済みか

 :大先輩相手に呼び捨てを強要されるアズちゃん

 :頼むアズちゃん2人をさん付けで呼んでみてくれ


「わ、わかった。絶対呼び捨てにするから。」


「分かればよろしい!

 じゃあ皆自己紹介! まずは私から!

 皆の笑顔に一輪の花! 愛原ルピナスです!」


「また会ったな! 待っていたぞ! 槍車フロウだ!」


「こんアズール! アズール・フレッシャです!」


「3人合わせて!」


「「え?」」


 そんなの打ち合わせに無かったんだけど!?


「や、槍車一家?」


「夫婦別姓じゃない。」


「僕も苗字違うんだけど。」


「なにその結託!? お父さんを除け者にしないで!?」


 :草

 :パパかわいそうw

 :合わせてあげてw


「家族漫才はさておき、早速マッシュを読んでいくよ。」


「即断即決、行動は素早くが我が家訓だからな。」


「そんな家訓聞いたことないけど?」


「ね~」


「あれ、俺そういう役回りなの? 一家の大黒柱なのに?」


「大黒柱もなにも共働きじゃない。」


「そうだけど! ええい早く読むぞ!」


 《デビュー前からアズールさんが生まれていたとのことですが、大変だったことはありますか?》


「うーん、これは育児の時間を取ることかしらね。配信にもリソースを割かなきゃいけなかったから。」


「配信頻度は毎日じゃなかったしある程度の融通は効いたが、それでも収録とかの仕事はあったしライブのダンスレッスンもあったからな…どうしても俺とルピナスだけで回すことはできなかった。」


 :え? じゃあどうしたの?

 :けど育てとるやん


「近所の人やスタッフの家族に預けた。」


「そうだったわね。ある程度しっかりしてからはアズちゃん1人で過ごしたり、友達の家でお世話になったりしてたわ。

 親として寂しい思いをさせてたのは申し訳ないと思っているわ。」


 :そっか…

 :アズちゃんは大丈夫だった?


「確かに寂しかった日もあったけど、基本的に2人のどっちかは家にいてくれたからそういう日は少なかったかな。

 2人ともいない日だって夜更かしし放題だったし。その頃からゲームやってて、それが今に繋がってるんだから世の中わからないね。」


 :そうなんや

 :この子結構たくましいか?

 :アズちゃんゲーム上手いもんね


「前向きに言ってもらえると助かる。次。」


「あ、待って。そういえばアズちゃんスタッフの子からプロポーズされてなかった?」


 :ガタッ

 :そいつは男か? 女か?

 :男なら処す。女ならアズールを処す


「まだ結婚とかあんまりよくわかってない時の事だからね!? ノーカンだよノーカン! 次!」


 《アズちゃんの性別を教えてください、気になって夜しか眠れません》


「夜寝れてるならヨシ! 次!」


「これ私かフロウに対しての質問じゃない?」


「もし言ったら僕は2人を大先輩として扱うよ!」


「それは良くないわね。次。」


 《今後3人でのコラボはありますか?》


「需要があればね。」


「いつも家で顔を合わせてるから日程の打ち合わせはしやすそうだな。」


「親とコラボする子の気持ちを答えよ。次。」


 :アズちゃん気まずそうw

 :両親同伴配信草

 :これ親側も気まずいのでは?


 《フロウさんとルピナスさんはアズちゃんがVtuberであることは知っていましたか?》


「前の配信でも言ったが俺は知らなかったな。エゴサで引っかかって初めて気付いた。ルピナスは?」


「私は知っていたけど言わなかったわ。」


「あー、配信事故の直後にあった家族会議の時に言ってたね。いつから?」


「デビューして1か月くらい? 私は個人勢企業勢問わず色々なVtuberを見ていたから、たまたま流れてきた動画の声で分かったわ。

 こっそり部屋を調べて機材があることを確認したし、部屋にこもってる時間と配信してる時間、配信してない時間と配信できないはずの時間の照らし合わせをして確証を取ったわ。」


「なんでそこまでしてたのに何も言わなかったの?」


「理由は知らないけど、私達に隠してやってたんでしょう? だったら気付かないフリをしてあげるのも親心かと思ったの。大切な子供には伸び伸びと育ってほしかったし、好きにやってほしかったから。」


 :ママァ…

 :泣いた

 :ええ親や


「俺だったら絶対問い詰めてるぞ。」


 :パパw

 :いい話だったのにw

 :そういうとこやぞ


「悪いなこんな父親で! 次!」


 《フロウさんとルピナスさんはアズールさんをVtuberにしようと思ったことはありますか?

 また、Vtuberとしての英才教育のようなことはしていたのですか?》


「俺達の子というだけあって素質はあるんじゃないかとは思ったんだが、Vtuberにしようとは思わなかったな。」


「私達は私達で色々な苦労があったから、同じ苦労を子供にさせることに抵抗はあったわ。いつまでもVtuberが人気コンテンツとも限らないし。」


 :そうかもなぁ…

 :結局自分で始めてたんだけどね

 :蛙の子は蛙


「ネットリテラシーだけは叩き込んだがな。」


「それはあって損するものじゃないわ。例えVtuberじゃなかったとしてもそのうちネットには触れていただろうし。」


 :まあそれは大事やな

 :一般人でも基本ネットとはかなり深い付き合いになるからな


「おかげでこれまで目立った炎上は無かったね、今回の騒動以外は。次!」


 《アズールは両親がVtuberって気付かなかったの? なんで?》


「あー、それは俺達が情報管理を徹底したからだな。」


「私達はそれぞれ私室と仕事部屋を分けて、アズちゃんには絶対に仕事部屋に入らないように言っておいたから。」


「実はこっそり入ろうとしたことはあったけど、鍵がかかってて諦めたんだよね…」


 :徹底してるな

 :さすがプロ我が子にまで情報漏洩を防ぐとは

 :配信してるときの音とかでバレない?


「俺達の家は全部屋防音室みたいなものだからな。もしアズールが大泣きしても貫通しないようになっている。」


「なんで僕が大泣きするのさ!?」


「俺達のデビュー当初は子供だったからな。わざわざこのために家を建て替えた。」


「そこまでしてたの!?」


「建て替えたのはデビューしてからかなり後だったけれどね。その前は会社で配信したりアズちゃんが家にいない状態にして配信してたりしたわ。それで限界を感じて防音環境が整った家に建て替えたって訳。」


 :ああそれでスタッフや近所の人に任せてたのか

 :俺達の推しは想像以上に色々な人に支えられてたらしい

 :皆に感謝


「本当に皆に感謝ね。次の質問にするわ。」


 《家事とかどうしてるの?》


「今は持ち回りだな。」


「当番制というには少し歪だけどね。」


「どうしても俺とルピナスは忙しい時期とかあるからな、アズールに任せることもよくある。」


「幼いころから家事は習ってたからそこまで苦労はしなかったかな。昔はほとんどやってもらってたか他の家にいたけど。」


 :よく回せるな

 :じゃあ2人はアズちゃんの手料理を食べたことあるの?


「ある。普通に料理うまいぞ。」


「アズちゃんは家事の才能もあるから、そのうち料理配信とかしても良いんじゃない? 機材は私達のを使えばいいわ。」


「映り込みが怖いから遠慮しておくよ。SNSで出来た料理を撮ってアップするくらいならいいいけど。」


 :それはそれで見たい

 :料理配信やってほしい

 :機材提供できる両親強すぎるw


「これ以上に無いくらい強力だよ…次。」


 《アズちゃんは親のコネでオンリーカラーの方とコラボできそうですが、コラボしたい人はいますか?》


「親のコネって。」


「そりゃできなくもないけどな。」


「実際アズちゃんはコラボしたい人、いるの?」


「うーん、僕に特定の推しはいないからね…オンリーカラーの全員を知ってるわけじゃないし、ちょっと前の2人みたいに声も知らない人もいるよ。

 相手側の迷惑にもなりそうだからわざわざコネを使ってまで無理にコラボしようとは思えないかな。僕が声をかけられたらコラボするかもしれないけど。」


「それはやめとけ。」


「え? なんで?」


「アズちゃんは私達の子よ? 興味ある人の方が多いんじゃないかしら。

 もちろんオンリーカラーじゃない人からもね。コラボ相手はちゃんと選んだ方が良いわ。」


「そうなのかなぁ…」


 :だろうなぁ…

 :2人に世話になってる人もいるしね

 :このビッグウェーブに乗りたいってだけでコラボしたい人もいそう


「そうだぞ。今アズールは台風の目みたいなものだ。

 自分で言うのもどうかと思うが大物Vtuber同士の子供、注目を浴びないわけがないだろう。」


「確かに…わかったよ、慎重になる。」


「賢い子は好きよ。特に我が子はもっと好きよ。」


「俺も大好きだからな。」


「2人とも急に何言ってるの! 次!」


 :親子てぇてぇ

 :俺もこんな家に生まれたい

 :俺だって推し2人の子供として生まれたかった!


 《一家皆Vtuberだって知ってどんな気持ちだった?》


「皆じゃないかもしれないだろう? アズールに兄弟姉妹がいるかもしれない。」


「そういうことじゃないの。」


「そうだよフロウ。」


「この流れ天丼になってきたな。

 俺は驚いた。ルピナスはともかくアズールがVtuberだったことがな。

 お前もこの道に来てしまったかとか、血は争えないなとかそんなことを思ったよ。」


「私だってアズちゃんがVtuberだって気付いた時は驚いたわ。けどさっきも言った通りやりたいことをさせてあげたいと思ったわ。その先にどんなことがあったってそれはアズちゃんの人生だし、きっとアズちゃんの糧になるから。もちろん、何かあったら助けるつもりだったけどね。」


 :ママァ…

 :パパとママの差よw


「俺だってアズールに何かあったら全力で守るつもりだ! だが何かあったらと思うと心配で…」


 :パパも親やな

 :さっき問い詰めるって言ってたのは心配の裏返しか


「で、アズちゃんはどうなの?」


「実感が沸かなかった、かな。自分の両親が実は有名人でしたって急に言われてもよくわからなかったっていうか。」


 :それもそうだよな

 :しかもVやろ? 想像もできんわ

 :声も知らない名前だけ知ってるみたいな人だとね


「けど、この配信の前にちょっとだけ分かったんだ。フロウもルピナスもすごい人なんだって。

 僕が経験してないことを、僕がもっとすごくならないとできないことをしてきた人なんだって。

 だから今は誇らしい気分、かな。」


「アズール…」


「アズちゃん…」


「…なんか恥ずかしくなったから次!」


 《アズールはルピナスのリアル耳かきASMRしてもらったことあるの? うらやま》


「もうやってる前提だね。」


「耳かきはしてあげたけど、別にささやいたりはしてないわ。」


「俺はやってもらったぞ。」


 :パパ!?

 :そっちかいw

 :パパ裏山


「裏山で処そうとしてるのか羨ましいだけなのかわからんな…次。」


 《問題の親フラの場面を見てきたのですが、アズールさんのパパしかバレてないのにママも公表したのってなんでなの?》


「余計な憶測を無くすためね。父親は分かったけど母親は誰? って考える人が出てくると思ったの。それが一般人なのか、オンリーカラーや他の事務所のメンバーなのか? そういった憶測だけが独り歩きして大きな問題になることを防ぐためよ。」


「今ルピナスが言ったのは運営との協議の時、説得するために言ったことだったな。家族会議では全く別の事も言っていたが。」


「私だけ仲間外れになんてさせないわ!」


 :仲間外れw

 :父親がバレた以上母親もそのうちバレるかもしれないからな

 :真面目な理由だと思ったのにw


「両方本心よ。次、最後ね。」


 《推しが子供を産んでいたと知った時の俺の気持ちを述べよ》


「国語の問題みたいな文だね。」


「まあ、この手の質問が多いから無視しづらくてな…この際炎上覚悟でバッサリ言いたいことを言ってしまおうかと思ったんだ。」


「それで採用したのね。けど、炎上覚悟っていうのは見過ごせないわ。」


「でもハッキリ言っておく必要があると思った。だから例えルピナスとアズールが止めても言うぞ。」


「覚悟は伝わったから僕は聞くよ。」


「それなら私一人がワガママ言っても仕方ないわね。存分に言ってちょうだい。」


「ああ。

 俺だって推しがファンにとって大切なことは分かってる。ルピナスが俺と結婚していて、アズールという子供がいることにショックを受けたファンが多いこともな。

 ファンにとって推しは(スター)だ。(スター)はファンを照らしてくれるが、手を伸ばしても決して届かない。

 けどな、そんな(スター)だって人なんだ。

 (スター)の周りにも人がいる。家族や友人、支えてくれる人もいるし知り合いだっている。

 そんな(スター)達だって人並の幸せを手にする資格がある。何故なら(スター)である前に人であり、生き物だから。

 俺はファンだからそれを阻んでいいとは思わない。ただ、悲しむなとも、ショックを受けるなとも言わない。裏切られたと思われても仕方ないとも思う。それでも受け入れてほしい。

 …以上だ。ルピナスと結婚してた俺が言うのもどうかとも思うけどな。

 ああ、別にガチ恋勢を否定するつもりはないぞ。そういった人を含めた色々なファンから支えられているのも事実だからな。

 人それぞれに推しがいて、人それぞれの推し方がある。それを非難する権利は誰にもないさ。誰かに迷惑をかけてないならな。」


「そう言われても辛いという人がいるのは分かるわ。だけど、見てみたいと思わない?

 これから私達の子供のアズちゃんが、どんなことをして、どんなVtuberになっていくのかって。」


 :気になる!

 :2人の子供だって知った時から気になってた

 :これから見るぞ!


「…ありがとう、皆。

 じゃあそろそろ締めよう! おつ槍車一家!」


「え、それ使うのか? さっきボロクソに言ってたのに?」


「うふふ、おつ槍車一家!」


「お、おつ槍車いっ」


 :切れたw

 :パパの扱いよw

 :おつ槍車一家!


 配信を閉じる。

 僕の両親がVtuberだとわかって、公表されて。

 これからどうなるかはわからないけど。

 それでもきっと、なんだか楽しくなる予感がしていた。

じりゅーです。久々の短編となります。

最近(?)流行りのVtuberもののアイディアが降りてきたので書いてみました。両親がVtuberだったという展開は私は見たことが無いので2番煎じじゃないです(暴論)

さて今作ですがまさかの短編三部作を予定しています。シリーズにしておくのでもし続きが気になったらお読みください。そうでなければ一話切りでもオーケー、貴方の自由です。

次回は最初にちょろっと出てきたアンナちゃんのお話です。その次の話についてもちょっとヒントをお出ししました。

ではまたどこかで。おつじりゅー!

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