起爆
楓は烏を肩に乗せ、男の動きを注視する。
片手で爆発を起こす能力と、あの機動力の中でどうやって倒すか。
「そのカラスは何ができるんだ?」
男は突然聞いてくる。
「さあな、自分で喰らってかんがえたら?」
こういう時っていい皮肉が言えるもんだと思ったけど、思ったより難しいな
「ま、喰らうほどなものじゃなかったと思っとくよ。」
そう言って、固めた拳を前に出し、それを広げた。
それと同時に肩に乗せていた烏の翼が弾ける。
「なっ!」
動揺しながらも烏を一度解除する、
爆弾を仕掛けられた?いや、烏自体にはそんなものはついてなかった。
「あれ?消しちゃうんだ?もったいなー」
男は白々しく言ってくる。
…あいつの妖術の影響だよな?
「じゃ、やるか」
そう言って今度は走って向かってくる。
それはさっきの突然の加速よりは遅く確実に避けれる。
ただ、手の動きが読みづらいせいで下手に反撃に出れない。
くっそ、
男がそのまま脚を掴んで爆撃を決めようとする。
間に合わねえ
「【鯱 凪!!】」
「ぎゅろぉぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
男に掴まれそうになる直前、黒くでかい、鯱のような生き物を呼び出す。
鯱は夥しい声をあげる。
男はそれを聞いて一瞬不快そうな顔をしたが、すぐに攻撃に移してくる。
が、その手はは思いがけず楓に届かない。
「…これも君の妖術?」
「どうだかな」
鯱出した手前、下手にこれ以上手の内は見せたくない。
「何にも答てくんないんだね。」
男は不満そうに言っている。
自分は答えねえくせに
なんとか鯱を当てたいけど…
男と狙いに気付いたのか、鯱自体に警戒を置いている。
そして、オレ自体を狙いながら鯱をみている。
楓自身、男の攻撃を避けることで精一杯で反撃や鯱を使うことができない。
猛攻は続き、少し脚を踏み外した。
その一瞬を見逃さなかった男は地面に手を当て爆ぜさせる。
砂埃が舞い、男の姿が見えなくなる。
あ、やばい。
目の前に広がる掌。
爆発の記憶が巡る。
終わった。
それしか頭に残らない。
後悔していたら、突如目の前にあったが吹っ飛ばされる。
「くっそ、何があった。」
この声…
「雪宮さん!」
タバコを吹かしながら目の前に立つ雪宮。
男は突然吹き飛ばされながらも、体勢を立て直している。
そして、雪宮さんが目に入ったのか、少し苦虫を噛み潰したような顔をする。
「よう、誰だてめえ。」
いつものおどけた口調と違い、一言一言に圧がある。
男はそれにさっきと同じような声で返す。
「あんたらが求めてるやつらっていでたら?」
男はにやって笑う。
タバコを吸って、ため息混じりに煙を吐きながら、
「じゃ、今てめえとやり合うか。」
男は首を振って答える。
「流石にあんたに喧嘩は売れないからなー。」
そう言って逃げようとする。
雪宮さんはそれを見逃して、オレの方に駆け寄ってきた。
「大丈夫だったか?」
「はい、なんとか。」
それから、雪宮さんに何があったのか話した。
狙われていたこと。男の能力。うどん屋のこと。
それを聞いて雪宮さんは一言。
「また今度話すことがある。」