不可解な男
「うーん、強烈だな」
蹴られた腹を押さえながらつぶやく。
綾斗の言う通り、蹴技を主体にしてるのかな?
いいねぇ、あんな綺麗な脚で蹴ってくれるとは。
時雨さんが言ってた奴ら…家族を奪った…そして、人々を殺すのに躊躇わない。
わかった。俺がなんで六道をもらったか。
「お前らを殺すためだ。」
男を吹っ飛ばしたところに近づいていくと、男は俺が蹴ったところを押さえながら気持ちよさそうに笑顔でいる。
きもっちわりぃ、
「あぁ、すまない。続きを忘れるほどの気持ちよさだった。」
そこにはほおを紅潮させた男が立って来ていた。
「さて、君はこれから私とやり合おうとするつもりだが、妖術…六道は使ってくれないのか?」
「さあな、あんたが強敵だったら使ってやるよ。」
こいつ以外にあの爆破(綾斗?)がいないとは限らねえ…
「私としては使って欲しいところ…どうしましょう。あなたは殺すなと言われている。しかしそこまで強そうではない。となると…」
ぶつぶつ1人でずっと話し始める。
油断している。
男に突っ込むように近づいて脇腹を狙い蹴りをお見舞いさせる。
しかし、男はそれを片手で受け止めて、足首を掴む。
「少し待ってくれないか」
そう言った瞬間、俺の身体がに思いきっきりな負荷がかかる。
「っ!」
ドゴン!
気がつけば、さっきまでいた場所と反対の建物に身体がめり込んでいた。
「ギュゥ…」
「すまない。」
思わず出していた【鯱】を壁と俺の間に呼び出してなんとか衝撃を抑え切った。
ただ、
「この様子だと、しばらくは無理か」
【鯱】を戻してさっきまで自分の立っていたところを見る。
「やはりこの程度では…いや、一瞬何か見えたような」
またぶつぶつと…
ただ、さっきのでわかった。
あいつと俺の力の差はありえないほどある。もしくは、そういう妖術か…
「どっちにしろ、妖術を使わずに勝てるどころか退けるも叶わなさそうだな。」
地に足をつけ、男に向き直す。
男は何かに納得したような顔していた。
「よし、決めた。命令優先で君の手足をへし折ろう。」
男がこっちをぎょろっと目を向けて来た。
気持ちを整えろ。
…
いくぞ
「【狼】」
ズルッ
と、音と共に黒く染められたような狼が出てくる。
男はそれを見て驚いた顔をする。
そして、少し上の空になっている。
「何故、何故そんな、何故だ、何故何故何故何故。」
男のその様子はかなりの動揺と葛藤が見れる。
「くっそ、命令…いや、でもせっかくの畜生道…しかし、」
何か悩んでるみたいだし…
「【顎】」
狼はその瞬間、男に向かって囲むように走っていき、牙を向ける。
「くっそ!今悩んでるんだ!邪魔するな」
狼に反撃しようとするところに合わせて脇腹に蹴りを入れる。
「ぐっ…だから!」
男が振り返ろうとする。
それまでに何発も蹴りを入れる。
「ぐっほ!」
さっきまでの脅威がなくなっている。
ほんとになんなんだこいつは…
「【鉤】」
狼はその瞬間、男の肩を抉り取るように切り裂く。
それは確実に傷を当てえれた。
が、男の方には傷人がついていなかった。
「くっそ、こんなに楽しそうなのに…どうすれば…」
男はそれでも変わらなかった。




