16 VSミュラー2
現在、俺は一方的にミュラーに攻め続けている。
いや、攻めさせられている。と言ったほうが正しい。
攻撃をことごとく避けられ、かといってカウンターをしてくるわけではない。
…遊ばれてんのか?
俺の持ち味の高い攻撃力も当たらなければ意味がない。
正直手詰まりだ。この方法では勝てない。
別の手を考えよう。
何かこの状況を打破するスキルはないか?
「拳帝」「全知」「状態異常無効」…
そうだ!「拳帝」は全ての武闘系統の技を使える!
大量の技を使って相手を翻弄すればいいじゃん!
よし!早速使おう!
すると俺の頭の中にアナウンスのようなものが流れる。
《記憶された技が存在しません》
???
う…嘘だろ…。
確かにそんな技とか知らないけども…。
どうやら「拳帝」は覚えた技の威力と精度を底上げし、100%を超えて放つことが可能になるスキルらしい。
つまり、その技がどんなものなのかを理解していなければならないと言う事だ。
当然異世界に来たばかりの俺がそんなモノなんて知っているわけもなく。
あれ…?
詰んでね?
「攻めが甘くなってきたんじゃねェか?そろそろ限界かぁ?」
くっそ!こいつウゼェ!
「じゃあそろそろ俺の方から行かせてもらおうかなァ!!」
ミュラーが拳を握り向かって来る。
どうする!?俺に防御力は無い!
ガードは不可能、なら避ける?いや間に合わない!
そのとき、
『『なにやってんの〜☆スキルを組み合わせればいいんじゃーん♡』』
と、いう女の子の声が脳に直接響いた。
その声は…周りの喧騒をかき消し、時間をも停滞させる。
な、何が起こってんだ?
俺も含めこの場にいる全員が制止して動けなくなっているが、思考は止まっていない。
あと、あの妙に頭に残る声。
あの神様に似た感じだったぞ。
『『すっご~い♡よくわかるねぇ~☆』』
…でも喋り方は全然違うな。あと考えてることが分かるのはデフォなのね。
俺はその神?に話しかける。
あ、あのーなんでこんなところにいるんでしょうか?
その質問に、謎の声は答える。
『『なんとなく。転が喚んだ子がどんな子かな〜って思って見に来た☆』』
な、なるほど。
もう一つ質問なのですが、この状況は?
『『あ〜っ!そうだった、アドバイスだよ!あなたのスキルを組み合わせればもっとすごいコトが出来るんだよ♡』』
状況については無視されたが、アドバイスか…。
組み合わせる、組み合わせ…
そう考えていると、1つスキルの組み合わせを思いついた。
『『おっ☆いいじゃ〜ん♡』』
その声は俺のやろうとしていることに満足そうだ。
『『じゃ、そろそろ進めるよ~ん♡またねぇ~♡』』
どうやら、この場から去るようだ。
あっ、あの!アドバイスありがとうございました!
『『うむ☆くるしうないぞょ〜♧』』
かくして止まった世界は元に戻り、拳が目の前に近づいてくる。
ミュラーが放ったその一撃は俺の事を吹っ飛ばす。
だが、
俺は倒れない。
ミュラーが驚いたようにこちらを見ている。
当然の事だろう。周りの観客ならともかく、本人なのだから。
驚いたミュラーの視線の先には、
腕を体の前でクロスさせた俺が立っている。
痛てて、意外と耐えれるもんだな。
俺は手首をぶらぶらさせながらミュラーに向かって言い放つ。
「みゅらーはそのなりでたいしたことないんだね」