12 もしかして:チート
肉串を完食し腹ごしらえを終えた俺は現在、周りと比べて一回り大きい建物の前にいる。
ここがイケメン君の目的地?
窓の奥には年齢から種族まで多種多様な人でごった返していた。酒場とかかな?
中を窓から覗いているとイケメン君が俺の手を引き、建物に入って行こうとする。
もしも奴隷商会とかだったらマズイよな〜。
念のため全知を使用しておくか。
<冒険者組合本部>____________________________________________
冒険者に依頼等を斡旋する組合
素材の買取や装備の販売も行っている
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ん?冒険者組合…?
冒険者…?
…も、もしかして冒険者ギルドってやつか!?
異世界文化キターー!
夢にまで見た(見ていない)冒険者ギルドに興奮しながら入ると、大勢の冒険者が依頼を取り合っていたり昼間なのに酒を飲んで暴れてたりしていた。
う〜ん。The、冒険者って感じがするな〜。
こういうのを見ると異世界に来たんだな〜、と感慨深くなる。
辺りを見回しながら、俺はイケメン君に連れられて受付の方に歩いていく。
するとギルド内が静まり返りながらモーゼの海割りのように道がひらける。
その後徐々にヒソヒソ声が聞こえてきた。
なんだァーコイツら?俺のことをバカにしてやがんのかァ?
だが、そういう感じではないらしい。
陰口って感じではなく、色めきだった視線と隠すつもりのない殺意だった。
そしてそいつらの視線の先にはイケメン君がいた。
イケメン君はその視線を浴びて気まずそうな表情をしていた。
…やっぱりイケメンって許せないよな。
後で嫌がらせしよう。
そんなことを考えているうちに受付までたどり着いた。
受付には、そりゃもう絶世の美女が受付嬢として立って…
…いない。
そこに立っていたのは、坊主頭でガチムチのおっさんだった。
しかし、俺はがっかりはしていない。何故なら、ギルドの受付は美人かおっさんと相場は決まっているものだからだ!
さわやかイケメンとほぼヤクザのおっさんが会話している姿は非日常感が凄かった。
しばらくするとおっさんがイケメン君を引き連れて裏へ行こうとする。
え?俺置いてくの?
おっさんは俺に本を渡すとイケメン君を連れてどこかへ行ってしまった。
あいつら本当に俺のこと置いていきやがった…。
心なしか周りのザワザワが一層大きくなった気がする。
き、気まずい…
…おっさんが渡してきた本でも読んで気を紛らわせよう。
その本は結構重めの辞書一歩手前ぐらいの本で、題名は『フールエイプでも分かるナムレグ語』というらしい。
…なんかバカにされてる気がする。
【フールエイプ】____________________________________________
地球でいうゴリラのような見た目の魔物
高い筋力を持つ代わりに瀕死になって始めて攻撃されていることに気付く程知能が低い
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バカにされてんじゃん…
全知さんに分からせられながら俺はページをめくっていく。
そこには単語表らしきものが書いてあり、もちろん何を書いてあるかは分からない。
何だったっけ、ナムレグ語?だっけ
へー、果物とかも乗ってるのか。
このクリスタルメロンとか絶対地球人が考えただろ。
…え?
俺、なんで読めるようになってんだ…?
「『全知』ってのはね」
「人の都合なんて考えないし」
「分からないことなんて無いし」
「やること全部がめちゃくちゃでなきゃいけないの」




